防災ガイド、あんどうりすさんの講演は、
口コミによって好評が広がり、
各地から依頼が絶えません。
人気のポイントは、アウトドアの知識を活かした
「ふだんの生活がそのまま防災になる」防災術です。
今回はりすさんから、
シミュレーション動画やARアプリの活用、
携帯トイレの比較実演などを通して、
災害時のリアルを教えていただきました。
災害前後も、自分たちの「生活」を守るために
とるべき行動が、ぐっと具体的になりますよ。
お話をうかがったのは、ほぼ日の佐藤です。
あんどうりす（あんどうりす）
阪神大震災被災体験とアウトドアの知識を生かし、
2003年より全国で講演活動を展開。
当時めずらしかった「毎日のカバンを防災仕様に」
というアイデアを提案。
なかでも、子育てグッズと防災グッズを
イコールにしてしまう、
アウトドア流の実践的な内容が好評。
「楽しくてすぐに実践したくなる」
「毎日の生活を充実させるヒントがたくさんある」
との口コミで全国に広まり、
毎年の講演回数は100回以上。
アウトドア防災ガイドとして、
新建新聞社 リスク対策.com名誉顧問
女性防災ネットワーク東京 呼びかけ人、
FM西東京 防災番組 パーソナリティなどとして
活躍中。
兵庫県立大大学院 減災復興政策研究科 博士課程。
内閣府、地方自治体、東京消防庁など
公的機関での防災イベントでの講演や、
乳幼児の親むけ講座や保育園、幼稚園、学校での
先生対象の講座を実施。
乳幼児を持つ親だけでなく、
小学校、中学校、高校での講演や
地域の自治体、医師会、弁護士会、助産師会、
女性消防団、企業研修などでも講演している。
好きなアウトドアアクティビティは、
沢登り、フリークライミング、カヌー、お散歩。
著作・雑誌連載：
家族の笑顔を守る暮らしの知恵
「りすの四季だより」新建新聞社 リスク対策.com
『自然災害最新サバイバルBOOK』
枻出版社 共著（2011年5月28日発売）
『震災を生き延びる１００の知恵』第７章
山と渓谷社
ヤマトプロテックYマガジン 連載中
- 佐藤
- 場所を移動して、
ほぼ日本社の３階にやってきました。
りすさんに、オフィスを
「防災」の観点からパトロールしていただいて、
災害に備えて気をつけたほうがいいポイントを
教えてもらおうと思います。
- あんどう
- じっくり見せていただきます！（笑）
まずは、家具が固定されているかを
見ていきましょうか。
こちらの冷蔵庫は固定されていますか？
- 佐藤
- これは‥‥固定していません。
- あんどう
- 震度６強以上の揺れが来たら、
大きく移動したり、
揺れ動きながら転倒する可能性がありますね。
業務用の冷蔵庫は、重たいから倒れないイメージが
あるかもしれませんが、
規模の大きい地震だと、倒れてきます。
- 一同
- ひえぇ‥‥。
- あんどう
- さらに、なかの食材が
全部出てしまうかもしれません。
災害時の貴重な食料を守るためにも、
冷蔵庫まわりは固定をおすすめします。
冷蔵庫の扉が開くのを留める
防災グッズが便利ですよ。 - 電子レンジなどの家電を
横から留められるシールもあります。
地震のとき、けっこう、電子レンジはよく飛びます。
強く当たると、
胸部圧迫などで亡くなってしまう場合もあるので、
くれぐれも気をつけてください。
- あんどう
- それから、キッチンの上の棚ですね。
こちらの棚は扉が固定されていないので、
地震が来るとパタパタ開いてしまいます。
なかの食器が全部落ちてきて、
大変なことになりかねません。
ぜひとも、
揺れが起こったときに自動でロックがかかる留め具
「耐震ラッチ」をつけておいてください。 - あとは、天井も気になりますね。
- 佐藤
- 天井ですか。
- あんどう
- 吊るタイプの照明は、
揺れによって落下する可能性があります。
蛍光灯やLEDライトが、
落ちても割れにくいものかどうかを、
確認しておくと安心です。
エアコンも絶対に落ちないとは言えないので、
地震があったら、なるべく離れてください。
- あんどう
- ちなみに、
そちらに掛かっている額は、ガラス製でしょうか。
- 佐藤
- これは、プラスチックです。
- あんどう
- でしたら、少し安心ですね！
額はけっこう落ちやすいので、
ガラス製のものはできるだけ避けてください。 - 次に、コピー機。
下にキャスターがついているので、
ロックを掛けていたとしても、
地震で床が揺れたら動いてしまう危険があるんです。
- あんどう
- 普段は壁や柱などに留めておいて、
動かすときだけ外せる装置があるので、
キャスター付きの家具にも
つけておいていただきたいです。
キャスターは、
ほんとうに人の命を奪ってしまう場合があります。
とくに、重量のあるコピー機などが
猛スピードで走り回ったら、かなり危険です。
マンションで共振により揺れやすくなる
「長周期地震動」が起こった場合、
キャスターや照明器具が大きく動きますので、
おうちのものを確認してみてください。 - 観葉植物も、鉢が固定されていないと
倒れてくることがあります。
でも、ただ受け皿の上に乗っている鉢だと、
固定する方法がなかなかありません。
その場合は、
植物が入っている鉢と受け皿ごと、
もうひとまわり大きな鉢に入れて、
大きな鉢のほうを床に固定するのがおすすめです。
ゲルマットを敷くなどの措置で固定できますよ。
このオフィスの床は絨毯なので、
ゲルマットは効果が薄いですが、
絨毯の上で固定するための強力なテープもあるので、
使ってみてください。
- 佐藤
- 机やソファも飛ぶというお話がありましたが、
この部屋の机と椅子はどうでしょうか。
- あんどう
- こちらの机は固定しにくいタイプだと思います。
なので、地震が来たら「机は飛ぶのが前提」
と思っておいて、
固定されたイスの後ろにすぐ逃げていただくのが
よいかもしれません。
とはいえ、素材ごとに
いろんな固定アイテムがあるので、
工夫すればテーブルも留められなくはないです。
- 下尾
- いま、この階で地震が起こったら、
りすさんはどこに逃げますか？
- あんどう
- 天井がパネル張りのところだと、
真ん中から崩れて落下することが多いので、
基本的には端のほうに逃げます。
でも、このオフィスは天井がパネルで覆われていない
剥き出しの状態なので、
真ん中を避けなくてもよいですね。
それよりは、吊られている照明などを避けて、
できるだけ上になにもないところに逃げるか、
テーブルの下にもぐる。
強い揺れが来たらテーブルも動いてしまいますが、
自分の体重でなんとか支えます。
- あんどう
- ‥‥これで、オフィスはだいたい見られましたね。
最後に、突然ですが、
みなさんに抜き打ちでお聞きします。
いま、ホイッスルを持っていますか？
- 下尾
- 私、持っています！
- あんどう
- すばらしい。いますぐ吹けますか？
- 下尾
- はい。ピッ！！（ホイッスルを吹く）
- あんどう
- ありがとうございます。
こんなふうに、とっさに吹けるところに
ホイッスルを持っておくと、
いざというときに命を守れます。
とくに、「なかに球が入っていないホイッスル」を
推奨しています。
球が入っているものは、水に濡れると
音が出なくなってしまうんです。
それからもうひとつ大事なのは、
防災ポーチにしまわないこと。
すぐに取り出せないと意味がないので、
「防災アイテムだから」といって
防災ポーチに入れてしまわないよう、
気をつけてください。
スマホに取り付けておくなど、
常にそばに置いておくことが重要です。
- 佐藤
- りすさん、ありがとうございました。
指摘していただいたポイントを中心に、
オフィス内も自分自身も、
地震に備えていこうと思います！
- あんどう
- 簡単なところから、ぜひ対策を進めてください。
災害用トイレのように、
いろんな防災グッズを試すのも、
けっこうたのしいですよ。
「毎日の暮らしがそのまま防災になる」
を合言葉に、
普段の生活に防災を取り入れてみてくださいね。
（終わります。引き続き、ほぼ日の防災コンテンツをおたのしみください）
2025-06-20-FRI