暮らしの中の小休止のように、
夢中になって没入できる編みものの時間。
ぎゅっと集中して、気がつけば
手の中にうつくしい作品のかけらが
生まれていることを発見すると、
満たされた気持ちになります。
編む理由も、編みたいものも、
編む場所も、人それぞれ。
編むことに夢中になった人たちの、
愛おしい時間とその暮らしぶりをお届けします。

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後編 心を穏やかにするための時間。 新津保梓さん

 
編みものをはじめたのは、小学生のころ。
「長野県で生まれ育ち、
編みものをしている子が
周りにたくさんいました。
母親も、不器用ながらも
セーターをいくつか編んでくれて、
編みもの道具や毛糸が身近にあり
始めやすかった、というのもあります。
編みものと縫いものが好きで、
お休みの日はそればかり。
気に入るものがあまりないので、
“じぶんで作りたい”と
思うことが多いんです。
好きな毛糸と好きなデザインで
作れることが楽しいです。」

 
実際に手を動かしながら、
独学で学びを深めてきた梓さん。
子育てがひと段落して、
お休みの日はもちろん、
仕事が終わった平日の時間も
編みものをする日もあるのだとか。
「リモートワークなので、
10分休憩のリフレッシュに
編むこともあります。
わたしにとって編みものは、
“メディテーション”のよう。
編みもの自体を楽しむというより、
心を穏やかに、
無になるために必要な時間という
感覚が近いです。
言ってしまえば、トランス状態(笑)。
なので、編み込み模様みたいな
頭をつかうものよりも、
リズム感があって、
手が慣れてしまえば
次々と編めてしまうような
作品が好みです。」
 
編むペースは、帽子なら1日。
三角ショールは1週間と、
アスリートのような集中力。
「寝かせると気持ちが冷めてしまうので」
と話されますが、
作品を完成させるための熱意は
見習いたくなるほどです。
大物のkinokoは、
年末年始で編み終えたそう。

 
「年末年始のような大型連休は、
ガッツリ時間をとれるので
ふだんやったことのない大物にも
チャレンジしやすい時期です。
柄の編み方を覚えてしまえば
コツコツ編むのが好きなので、
kinokoはとても楽しかったです。
ひたすら編んでいました。
これは、ヴィンテージの毛糸。
太番手ですが軽くて、
着るととってもあたたかいんです。
わたしは手がきついので、
思ったよりも小さくなってしまって。
これも娘にプレゼントですね。」

 
シックな毛糸に合うボタンも、
とてもきれい。
古着屋「ジャンヌ・バレ」で
買ったそうです。

 
「パーツを集めるのが好きなんです。
ヴィンテージの毛糸やパーツを
集めるのが趣味なので、
古着屋さんやリサイクルショップをまわって、
いいものを見つけると買い溜めておきます。」
おうちには、衣装ケース5箱分ほどの
毛糸がたっぷりと!
編むものを決める際も、
毛糸に合うものを選んで
作品を編み始めます。
道具は竹針。
2つほど並行して編むために、
いくつも針を持っているそう。
お気に入りは3号針と4号針、
大きな袋にざっくり入れています。

 
そんな、梓さんの編みものライフに
欠かせないおともが、
お茶とお菓子とYouTube。
日常と切り離して
別の世界へ飛んでいくような、
そんなスイッチを押してくれるおともと共に、
黙々と集中して編みます。
「人様にお見せできるような
スタイルではなく、
リビングの地べたに座って、
一心不乱に編んでいます。」
そして、もう一つ欠かせないものがSNS。
国内外のニッターをウォッチしたり、
自分の作品をアップしたり、
SNSを通じてニッターさんとつながり
交流することもあるのだそう。
孤独に編み続ける日々に、
モチベーションとなる存在です。
「SNSをみていると、
いろんなデザインや柄があることを知りました。
まだ編んだことはないのですが、
独特なモチーフが集まっている
パターンブックがおもしろくて、
最近購入しました。
おしゃれとはかけ離れているのですが、
そういうクスッと笑えるものも好きなので、
いつか編んでみたいです。」
 
リビングに思いっきり
編みもの道具や毛糸を広げて、
一心不乱に編む日々。
それは、至福の時間だと話してくれました。
好みの毛糸とデザインを片手に、
じぶんの手から好きなものが生まれていく。
そういう時間を集中して楽しむ梓さんの姿に、
「編みものって楽しい」という
気持ちをあらためて思いました。

(ありがとうございました。)

写真・新津保建秀

2023-11-30-THU

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