
群馬県赤城山にできた「ほぼの駅 AKAGI」では
この場所の名物になったらいいなと、
「豚とキャベツ」をテーマに考案した
メニューをいろいろとお出ししています。
レシピ開発は糸井も大好きなお店、
六本木「やまぐち」の山口和明さんと美鈴さん。
試行錯誤のもとに生まれた豚汁やハンバーグ、
キャベツのサラダはどんな味わい?
みんなで食べた試食会の様子と、
山口さんご夫妻のインタビューから、
それぞれのメニューをご紹介します。
ま、全員が、「おいしいおいしい」と
食べているだけではありますが‥‥。
「ほぼの駅 AKAGI」とは?
群馬県赤城山の山頂エリア、鳥居峠に
2025年11月にできたばかりの
「ほぼ日」の新しい施設です。
かつて赤城山にあったケーブルカーの
駅舎だった建物を、「ほぼ日」が受け継いで
運営している場所だから「ほぼの駅」。
ここならではのおいしいものとしては
「豚とキャベツ」をテーマにしたメニューや、
ソフトクリーム、マフィン、
コーヒーなどをご用意しています。
ぜひいちど、お越しになってみてください。
(詳しくはこちら)
六本木「やまぐち」について
山口和明さんと美鈴さんが
おふたりでされている、
紹介制のちいさな日本料理のお店。
シンプルで上質、かつ滋味深いお料理を、
ゆっくり楽しむことができる場所。
吟味された食材やお酒はもちろん、
ちょっとした遊び心を感じさせる
美しい器や設えなども、過ごす時間を
より嬉しいものにしてくれます。
website
- ──
- では、「ほぼの駅 AKAGI」で出す
それぞれのメニューについて、
詳しく解説いただいてもいいでしょうか。
- 山口
- はい。まずは豚汁ですね。
最初に糸井さんからあったのは
「ぼくらが家でお客さんとか友達とかを
迎えるときにラフにつくる感じで」
ってオーダーだったんです。
- ──
- へえーっ。つまり山口さんたちが、
家で友達とかに振る舞うような感じ。
- 山口
- そうなんです。
だけど、我が家の冷蔵庫に、
常に豚汁の材料があるかっていうと、
あんまりないんです(笑)。 - ただ、よくお店でまかないは食べてて、
そのとき、常備してる野菜の炊き合わせとか、
余った材料のごった煮とかをアレンジして、
食べたりしてるんです。 - だからそのイメージで、
豚汁をつくってみたというか。
- ──
- ‥‥と、いいますと。
- 山口
- お店の冷蔵庫の中によく入ってて、
ぼくらがまかないで食べているものを使って
豚汁を作るイメージ。 - 豚汁ってわりとラフにつくるじゃないですか。
だから
「いろんな具材に1個ずつ、こまかく火を入れて、
丁寧に味をつけたものを炊き合わせた豚汁って、
そんな手間がかかるもの、さすがに誰もやらないよね」
となって、
「じゃあ一回やってみようか」って作ってみたら、
「あ、これじゃない?」となって(笑)。
- ──
- ということは、ざっくり言うと
「材料のひとつひとつに、
相当手がかかっている豚汁」というか。
- 山口
- そうです。見た目はけっこう
普通の豚汁と同じだと思うんですけど。
- ──
- へえーっ。
- 美鈴
- 実は(笑)。
- 山口
- それと合わせて、現地調査というか、
群馬に実際に行ったときに土地の方の好みだったり、
普段からどういったものを
よく食べているかとかをリサーチして、
最終的な材料や味わいを決めていった感じです。
つまりは「甘じょっぱ系」であるとか。
- ──
- なるほど。さり気ないけれど、すごい準備が。
- 山口
- っていうのが豚汁です。
- ──
- 豚汁は「ジャパン」と「イタリア的」と
2つありますけど、
それはどう生まれたんですか?
- 山口
- そこは糸井さん的に、けっこう最初から
「やっぱイタリアンの豚汁も欲しいよね」
というお話があって、それを形にしていきました。 - で、出すならやっぱり、
この土地らしいものがいいだろうなと。
群馬で愛されるイタリアンって、
シンプルだけどほっくりっていうのかな、
そういうニュアンスがあるんですよ。
だから地元の人たちに愛されるイタリアン豚汁って、
そういう味わいかなと、意識して。
- ──
- はぁー。そんなところまで。
- では、ハンバーグはどうですか?
- 山口
- こちらははもうリクエストとして、
「豚100%で作ってほしい」と。
- ──
- つまりは「トンバーグ」。
- 山口
- はい、だけど豚ひき肉100%で、
キャベツとかが入るじゃないですか。
最初作って食べてみたら、
「‥‥あ、餃子じゃん? これ」
ってなって(笑)。 - 餃子の中身をハンバーグにしてるから、
味わいがもう、餃子なんです。
- ──
- わはははは(笑)。
うわー、そうか。
- 山口
- そこから、よりハンバーグに近づけるために、
いろんなお野菜をじっくり炒め合わせたものを
豚肉と合わせて、ちょっと寝かせることにしたり。
地元の「近藤スワインポーク」さんっていう
お肉屋さんから仕入れた
網脂(アミアブラ)を巻いて、ジューシーにしたり。
「あ、これならおいしいし、
豚肉100%のハンバーグと言っていいんじゃないか」
ってところまでたどり着いたんです。
- ──
- まわりに網脂を巻くなんて、普通はしない?
- 山口
- やらないですね。めんどくさいから。
だけど、それをあえてやるところに
ちょっとロマンがあるなっていう(笑)。
やっぱり「普通にやっても面白くないよね」と。
- 美鈴
- あと、ソースについても、
甘じょっぱいトンテキのソースを
使っているんです。 - ほぼ日のみなさんと赤城山に行ったときに、
「あのソースでハンバーグ食べたら
おいしいんじゃない?」みたいな話になって、
「あ、たしかに」って。
- ──
- へえぇー。じゃあ、
この「むっちりトンバーグ」って、
トンテキのソースで食べる
豚肉100%のハンバーグ?
- 山口
- そうです。
なので食べたとき、豚の肉々しさと同時に、
ちょっとつくねに近い感じもあるんです。
だからごはんにも合う。
- ──
- そういえば糸井さん、試食会のときに、
これでごはんを食べてました(笑)。
- 山口
- 建物も、ちょっとクラシックな
洋風っぽい感じの駅舎なので、
日本の洋食みたいな味わいのメニューは
絶対合うだろうなと思って。 - ちょっと年配の人たちが、
「懐かしいね」「おいしいね」って言いながら
食べている姿を想像しながら。
でも、若い人たちにも、
「このハンバーグおいしいよね」
って言ってもらえるようなものを目指して
味わいを決めていきました。
- ──
- 最後に、キャベツのサラダはどうでしょうか。
- 山口
- これが、いちばん頭を悩ませまして‥‥(笑)。、
しばらくずっと毎日、
キャベツのことばかり考えてました。 - 糸井さんからは、途中で
「生のキャベツそのまんまでよくない?」
なんて声もあって。
- ──
- 居酒屋さんの突き出しで
出てくる感じというか。
- 山口
- そう。でもやっぱり生のキャベツだけだと、
ちょっと飽きちゃうというか、限界があるので。 - あとは地元の人たちにとって
「これ、家でも食えるなぁ」みたいな感じに
ならないほうがいいなと思ったんです。 - それで本当にいろいろと考えて、考えて、考えて、
複雑にしていった結果、
糸井さんにも「これは違うね」と言われ。
- 美鈴
- たしかに(笑)。
- 山口
- 印象的だったのが途中、
糸井さんからキャベツサラダについて、
「パン粉だけでいいかも」
みたいなお話があって。 - 「キャベツにパン粉とソースかけて食べたら、
『あ、これ、コロッケじゃん』
みたいな感じになるようなサラダが欲しいね」
というお話で。 - それ、おもしろいですけど
‥‥むっちゃ難しくありません?
- ──
- すごいリクエスト(笑)。
- 山口
- でも、なんかそこからはじまって。
- そのあといろいろやったんですけど、
最終的に、一周まわって
すごくシンプルなものになりました(笑)。
片面だけ焼いたキャベツに、ミニサイズのコロッケ3個。
一緒に食べても、別々に食べてもいい、という。
- ──
- コロッケも工夫があるんですか?
試食会のとき、すっごいおいしかったんですけど。
- 山口
- あれはですね、カニクリームコロッケの要領で、
ジャガイモを牛乳で煮て、
ちょっとグラタンっぽい感じにしてるんです。
ちびっ子も大人もどっちも好きな感じの
味わいにしてます。
実はけっこう手をかけているコロッケです。
- ──
- ああー! たしかに。
カニクリームコロッケ感が。
- 山口
- 実はこれ、ほぼ日手帳大ミーティングのときの
「大人の給食」でもやったんです。
「食べる方向で味が変わるコロッケ」ということで、
- 美鈴
- 糸井さんのコロッケのレシピと
カニクリームコロッケ的なものを
半分ずつ組み合わせて1個にしたんです。
- ──
- まさに大人の給食。
- 山口
- そのクリームコロッケの部分を、
キャベツサラダの食感のうま味の要素的な感じで
添えようとしていたら、
「このコロッケおいしいね」と、
そのまま添えることになりました(笑)。
- ──
- じゃあ、キャベツサラダを頼んだら、
その手のかかったミニコロッケも食べられちゃう?
- 山口
- はい。小さいのを3個ほど。
- ──
- わぁ、いいですね。
これもまた、あの景色を見ながら食べるの、
おいしいだろうなあ‥‥。
- 美鈴
- だと思います(笑)。
- ──
- じゃあ最後に「ほぼの駅 AKAGI」に
来られるお客さんたちに、
なにか伝えるとしたら、なんでしょう?
- 山口
- そうですね。
もう今回は糸井さんの頭の中の
「豚とキャベツ」を具現化させてもらった
メニューなので、
ぜひ食べてたのしんでいただきたいですね。
みなさんの反応がすごい楽しみでもあります。
- ──
- 美鈴さん的には、今回のプロジェクトは
いかがでしたか?
- 美鈴
- はい、お店はいつもとても小さな空間で
2人でやっているので、
まったく違う日々を過ごしているんですけど、
今回、ほぼ日のみなさんと一緒に
本当にたくさんやりとりしながら
お仕事をさせていただけたのが、
新鮮で、とても楽しかったです。 - しかも、さらにそれが
「ほぼの駅 AKAGI」という
新しい場所につながっていくという。
メニューを考えるって大変ではあるんですけど、
日々、発見とか、やりがいとか、楽しみとかが
すごい感じられて、ずっとワクワクしてました。 - 結果的に、ほぼ日さんらしいメニューに
固まったと思うので、お客さまたちにも
すごく喜んでいただけるんじゃないかと。
ぜひ食べてみていただけたら。
- ──
- ありがとうございます。
そしていよいよもうすぐオープンですね!
ひきつづき、よろしくおねがいいたします。
- 山口
- そうですね。
とにかく楽しみです。
- 美鈴
- もう楽しみでしかないです。
よろしくおねがいいたします。
ほぼ日おいしいもの担当
の
AKAGIでこれもチェックして!(6)
あったかドリンクいろいろ
「ほぼの駅 AKAGI」αオ―プンの数日前、
みんなで準備に出かけたところ、
鳥居峠があまりにも寒すぎて‥‥ということで、
急遽、ホットドリンクの種類を増やしました。
糸井重里がレシピを考案したほぼ日のロングセラー
「手かげんしないしょうがシロップ」を使った
しょうが湯(あたたまります)に、
「ほぼ日のにほん茶 ぽっかり」のあたり茶です。
「ぽっかり」は鹿児島のはるみどりのお茶で、
香り高くすっきりとした味わい。
茶葉をすって製造した粉末茶を、
縁起をかついで「あたり茶」と呼んでいるものです。
冬の頂上エリアの寒さを、これで乗り切ってください。
‥‥そんな感じで試食会を終えまして、
2025年11月1日より
「ほぼの駅 AKAGI」がαオープン!
豚汁、トンバーグ、キャベツサラダなどは
施設の11時半~14時の「ランチタイム」に
お出ししています
(評判も上々! みんなで喜んでいます)。- メニューはこれから、さらに増やしたりなど
より改良をすすめていく予定ですが、
お越しの際には、ぜひいろいろと
食べてみていただけたら嬉しいです。
赤城山で、お待ちしています。
(おしまいです)
2025-11-25-TUE


