あけましておめでとうございます。
とつぜんですが今年、ほぼ日は雑草に学びます。
農学博士(雑草生態学)の稲垣栄洋先生の
「ほぼ日の學校」でのお話や著書をきっかけに、
急速に雑草に興味が湧いてきた
糸井重里と、ほぼ日のメンバーたち。
さらにいろいろなお話を聞けたらと、
先日みんなで、先生が普段から研究をすすめる
静岡大学の藤枝フィールドに行ってきました。
そのとき教えてもらった、たのしくて、
元気のもらえる生物のお話の数々を、
新春第1弾の読みものとしてご紹介します。
雑草のように、戦略的にクレバーに、
やさしく、つよく、おもしろく。
さぁ、新年のほぼ日、はじまります。

>稲垣栄洋さんプロフィール

稲垣栄洋 プロフィール画像

稲垣栄洋(いながき・ひでひろ)

1968年、静岡県静岡市生まれ。
静岡大学大学院教授。農学博士。
専門は雑草生態学。
自称、みちくさ研究家。

岡山大学大学院農学研究科修了後、
農林水産省、
静岡県農林技術研究所などを経て
現在、静岡大学大学院教授。
『身近な雑草の愉快な生きかた』
『都会の雑草、発見と楽しみ方』
『身近な野菜のなるほど観察録』
『身近な虫たちの華麗な生きかた』
『生き物の死にざま』
『生き物が大人になるまで』
『手を眺めると、生命の不思議が見えてくる』
『敗者の生命史38億年』
など、その著書は50冊以上。

「ほぼ日の學校」稲垣栄洋先生の授業はこちら。

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Introduction) 雑草に興味が湧いてきた。

 
2024年秋、農学博士の稲垣栄洋先生が、
「ほぼ日の學校」のスタジオに来て、
雑草をテーマに話をしてくださいました。
インタビュアーは先生のいろんな本を読んで
感銘を受けた、ほぼ日乗組員のフジモリ。
雑草に興味のあるほぼ日の乗組員たちと
糸井重里とで、いろんな話を聞かせてもらいました。

 ▲こちらからごらんいただけます。  ▲こちらからごらんいただけます。

 
率直に言って、先生の語る生き物のお話が
本当におもしろいのです。
このときも、
「雑草は弱いけれど、共通する強さがある」
「基本的に生き物は『弱者の戦略』」
「生きていればそれだけで正解」など、
自分の生き方にも照らし合わせて
考えていけそうなお話を、たくさんしてくださいました。
またこのとき、稲垣先生の授業に
特に発見の多い様子だったのが、糸井重里。
この日をきっかけに、雑草のおもしろさに
あらためて気付かされ、先生の本を
一気に読みはじめたそうです。
そんなこともあって、糸井から
「2025年のほぼ日の新春対談は、
稲垣先生にさらに雑草について聞いてみたい」
というアイデアが生まれ、
先生も喜んで引き受けてくださって、
対談が実現するはこびとなりました。
せっかくなので今度は、先生が普段から
研究をすすめている、静岡県焼津市にある
大学の施設にお邪魔することに。
ということで、秋の終わり、
糸井重里と、ほぼ日の雑草好きメンバーみんなで、
行ってきました、静岡大学の藤枝フィールド!
こちらは大学が管理する農園、農場、田んぼ、
畑、研究施設などがまとまっている場所。
雑草もたくさん生えている!

空が広くて、自然がいっぱいで気持ちいい!
ほぼ日乗組員たちのテンションも、なんだかものすごく高めです。 空が広くて、自然がいっぱいで気持ちいい! ほぼ日乗組員たちのテンションも、なんだかものすごく高めです。

 
この日のスケジュールは、まずフィールドに出て、
歩きながら、生えている雑草や植物をについて
話を聞かせてもらったあと、
室内に移動して、稲垣先生と糸井での対談。
外でも室内でも、興味深い話がどんどん飛び出して、
本当におもしろかったです。

学習室にて。後ろの額は「耕不尽(耕やせども尽きず)」。学問は、どこまで探究しても尽きることがない、という意味だそうです。 学習室にて。後ろの額は「耕不尽(耕やせども尽きず)」。学問は、どこまで探究しても尽きることがない、という意味だそうです。

 
そんなわけで、2025年のほぼ日は、
稲垣先生からこのときいろいろ教えていただいた、
雑草と生き物たちの話からスタートします。
ご案内くださったフィールドや研究室も、
「おもしろーーい!」「へぇーー!」の連続。
みんなで歩きながら、なにか見つけるたびに
先生が解説してくれるという、楽しいばかりの時間。

 
「雑草の話を始めると、ぼくらほんと、
20メートル1時間という感じになるので、
時間配分が難しいんですけど」と笑う先生。

 
施設の脇の通り道に、たんぽぽが。
「休眠中のたんぽぽですね。
踏まれやすいところなので、横にのびてます。
『ここは踏まれる場所だな』とわかると、
茎を伸ばさずに最初から横へひろがるんです」

 
「こんな狭い空間でも、
よく踏まれるところ、少し踏まれるところ。
あまり踏まれないところ、草刈りされるところで、
雑草の種類が違いますよね。
雑草はみんな、自分の得意なところに生えてきます」
なにげない空間も、雑草への視線があると、
一気に違って見えてきます。

 
フィールドには温室もありました。
マンゴー、パイナップル、ドラゴンフルーツ、
パッションフルーツなど、南国の植物を育てているとか。
「もう食べちゃったんで、ぜんぜんないんですけど(笑)」
ほか、キウイの畑などもありました。

 
こちらはフィールドで育てている、
感動するおいしさのみかん。
「今日はみなさんに食べてもらえるようになってます」と
ハサミを貸してくださって、ちいさなみかん狩り。
「これはうまい! 今年食べた中でぶっちぎりです」と糸井。
興津早生(おきつわせ)という品種だそうです。

 
みかんを育てているナルセさんに
びっくりするおいしさの理由を聞いてみると、
「これは、基本をきっちりやってる感じです。
いまは兼業での農業って、できるだけ手間ひまを
省く方向ですけど、それをしてないんです」
とのこと。
「作物は人に気に入られるのが一番大事なんですね。
気に入られないと淘汰されるので、
自然を生き抜くのとちょっと違う」と稲垣先生。

 
先生がホトケノザを見つけました。
ホトケノザの花は蜂に来てほしいので、
頭のいい蜂だけが蜜を吸える
仕組みになっているんだそう。
上からは入れず、ヘリポートのような
とまるための場所があって、
そこから中に入って蜜を吸うという構造。

 
フィールドにはお茶畑もありました。
お茶の花が咲いている時期で、みんなでちょっと
花の蜜を吸ってみたりもしました(ほんのりお茶の味)。
「お茶の木は森と同じ構造で、
葉っぱがあるのは上のほうだけなんです。
下から写真を撮ると森みたいに見えます」
と先生。たしかに!

 
こちらは、カタバミ。葉っぱがきれいなハート型。
オクラみたいな実は、熟すとパチパチと弾けとびます。
「抜いても抜いても生えてくるので、
『家が絶えない』という思いを込めて
日本だと家紋によく使われていたりします」

 
これはチカラシバ。茎がすごく丈夫なので、
草相撲のときはこれを探すといいそうです。
根も地面にしっかりと生えていて、
抜こうとしても、けっこう力が要ります。
「昔の日本人のセンスがすごいですよね。
実際に触ったり抜いたりしてないと、
チカラシバとは名付けられないので」

 
草刈りロボット。どういうものだと良いのか、
大学で開発や研究をされているそうです。
とはいえ雑草は、刈り方に合わせて育ち方を
変えるので、なかなか簡単ではないとか。
上に伸びてきたり、平べったくなったり。

 
フィールドから戻ってきたら、
全員の服に大量にひっつきむしが。
「持って帰ったら、会社の屋上でも育つかな」
とみんなで丁寧に種を取りながら、
「‥‥あ、これ、植物の思うつぼだ!」
と笑う乗組員たち。

 
研究室もいくつか案内くださいました。
こちらはエノコログサ、ねこじゃらしの
発芽実験をしているところ。
蒔いただけではなかなか発芽しない
エノコログサの種がどういう仕組みなのか、
電子顕微鏡で見たりしながら、調べているそうです。
「表面がお風呂の床みたいな構造になってて‥‥」
と、学生の稲子さん。聞いてるだけでおもしろい。

 
研究センターの前で、みんなで記念撮影。
実は、先日の先生のお話をきっかけに、
ほぼ日では「雑草部」が発足。
さっそくおそろいのジャンパーを
作ってしまったのですが(まずは形から)、
先生も部に入ってくださるとのことで、
なんと、一緒に着てくださいました。嬉しい!
これから雑草のこと、どんどん学ぶぞ~。
 
‥‥と、いうわけで、たのしい気分、
伝わりましたでしょうか。
2025年の新春対談は、このときに
稲垣栄洋先生にたっぷり教えてもらった
雑草や生き物のお話を、存分におとどけします。
きっとどんな方にも発見がたくさんあると思います。
明日からの本編を、どうぞおたのしみに。

(つづきます)

2025-01-01-WED

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