会社をつくるということは。お金と、投資と、どう生きるか、の話。

みなさんもご周知のとおり、
今年の3月16日に「株式会社 ほぼ日」は
東証ジャスダックに上場いたしました。
そんなお祝いムードも
すっかり落ち着いた9月某日、
みずほ証券の今泉泰彦会長
東京証券取引所の岩永守幸常務
おふたりをオフィスにお招きして、
糸井重里とおしゃべりしていただきました。
はじめは「株の買い方」や「投資の心得」など、
現実的なことを話すつもりだったのですが、
いざ3人で集まってみると、
話のテーマは思った以上に深い方向へ‥‥。
お金のこと、経済のこと、
いまだから話せる上場のことなど、
思わず「へぇー」や「なるほどー」という
エピソードがたくさんとびだしましたよ。
全6回、どうぞ気楽におたのしみください。

01

ほぼ日が上場した理由。

2017-10-26-THU

糸井
きょうはお集まりいただき
ありがとうございます。
なんだかあちら側にスーツの方々が、
たくさんいらっしゃってますね。
今泉
ははははは。
わたしの不規則発言のチェックにね(笑)。
糸井
ああ、そうですか(笑)。
まあ、きょうは気楽な感じでやりましょうか。
岩永
そうですね、よろしくお願いします。
糸井
ほんとうのことをいうと、
証券会社や東証の方とのお話を、
株式上場のプロセスのなかで、
コンテンツにしたかったんですよね。
自分が知らないことを
読者みんなと共有しながら、
いっしょに前に進みたかったというか。
というのも、
「証券会社ってなに?」
「東証ってなんなの?」
という人ってまだまだ多いと思うんです。
今泉
まあ、そうですよね。
岩永
なるほど、そこからなんですね。
糸井
そもそも東京証券取引所‥‥、
つまり「東証」のことを
公の機関と思ってる人って、
けっこういるんじゃないでしょうか。
岩永
ああ、それはありますね。
東証は民間企業ですし、
うちも上場会社ですから(笑)。
糸井
そうですよね(笑)。
それにしても、
なんでみんなから国の一部、
のように思われるんでしょうか。
岩永
まあ、上場審査という、
とてもエラそうなことを
やっているからでしょうね。
糸井
ああ、審査という部分が。
岩永
はい。それに東証には
上場廃止の権限もありますので、
上場会社さんからすると、
まさにお役人さんと話をするような、
そんな感覚なのかもしれません。
糸井
ぼくはいろんな取材でも答えてますが、
ほぼ日が上場した理由のひとつは、
その「審査される」ということを、
月謝を払ってでもやってみたかった、
というのがあるんです。
岩永
へぇー、そうでしたか。
糸井
たとえば、お葬式という場所では
黒い服を着るのがあたりまえなわけで、
そこでカジュアルな服を着るようでは、
やっぱりダメだと思ったんです。
会社や組織運営でも、
同じようなことってあると思っていて、
「自分たちの組織はちゃんとしているのか」
という試験を受けてみたかったんです。
岩永
いやぁ、そうでしたか。
ちょうどいまのお話に関連した
資料をもってきていまして‥‥。
(資料を取りだして)
これは2013年から2015年の間で、
東証に上場した社長さんへの
アンケートをグラフにしたもので、
「上場前に期待していたこと」
「上場後に実感していること」
というふたつの質問をしたんです。
糸井
上が上場前で、下が上場後ですね。
岩永
このアンケートをみると、
上場前と上場後の両方で、
上場のメリットに
「知名度や信用度の向上」を
あげた社長さんが多いことがわかります。
糸井
はい、ダントツに多いですね。
岩永
ところが、
その他の回答に注目してみると、
上場前はあまり意識してなかったけど、
上場後に「社内管理体制の強化」を
実感された社長さんがとても多かったんです。
この上から2番めのところです。
糸井
ああ、ほんとですね。
「社内管理体制の強化」は、
上場後のほうがグラフが長い。
岩永
この結果って、
さっき糸井さんがおっしゃった
「ちゃんとした組織にしたい」
と同じことだと思うんです。
糸井
まさにそうですね。
ぼくらの上場の理由のひとつは、
はじめからそれだったんです。
正直にいうと、知名度というか
「有名になりたい」ということなら、
もう済ませちゃってるところもあるので。
岩永
特にほぼ日さんの場合は。
糸井
ただ、ほぼ日はよく知っていても、
ぼくが会社を一生懸命やってることは、
じつはあんまり知られていないんです。
「糸井さんは週に何回、会社にいるんですか?」
ってよくきかれますからね。
岩永
毎日じゃないと思われてる(笑)。
糸井
事実は毎日どころか、
もはや24時間労働なんですよ。
お風呂に入ってるときでさえ、
もうずっと会社のことを
かんがえてるわけですから。
つまり、そういうことを
ちゃんと知っていてくれないと、
これからのほぼ日としては、
ちょっと困るわけです。
岩永
そういう意味では、
ほぼ日さんはもう上場会社ですので、
会社運営や組織体制はちゃんとしてるだろうと、
そう思われているはずです。
糸井
なので、もし上場という機会がなかったら、
そういった誤解をとく方法って、
なかったような気がしますね。
今泉
われわれみずほ証券も、
ほぼ日さんの主幹事会社として、
たくさんの議論を重ねてきました。
そのなかで糸井さんは、
上場のプロセスを
「組織のエクササイズ」と
おっしゃっていたんです。
岩永
エクササイズ、ですか?
糸井
上場のプロセスというのは、
スクワットのような
ジムでのトレーニングに
似てると思ったんです。
ゲーム形式のトレーニングじゃなく、
筋力をつけたり、心肺機能をととのえたり、
そんな感覚だったんです。
今泉
そういうトレーニングって、
あんまりワクワクするものではないので、
社長、乗組員のみなさんにとっては、
なかなかたいへんだったと思います。
糸井
ほぼ日の場合は、
具体的に動き出すまでの時間も、
かなり長かったですからね。
今泉
糸井さんは、
ほぼ日を上場させることについて、
じっくりと時間をかけて、
かなり深くまで自問自答されていました。
糸井
損得をつみあげるだけなら、
数字やロジックだけで
いくらでもできるんですよ。
でも、最後の最後は、
やっぱり感情が動いてくれないと、
前に進められなかったんでしょうね。
岩永
そんなにもかんがえられたんですね。
今泉
ほぼ日さんの行動指針に
「やさしく、つよく、おもしろく。」
というものがあります。
これは「順番が大切」というのが、
われわれも非常に印象的でした。
糸井
はい、順番はとても大切です。
今泉
はじめの「やさしく」は、
会社が社会に受け入れられるための
前提の部分になります。
その上に「つよく」があるわけですが、
糸井さんは自問自答するなかで、
「ほぼ日がつよくあるための手段」として、
上場を選ばれたように思いました。
糸井
はい。
今泉
おそらく「上場なんかしたら、
ほぼ日のよさがなくなってしまう、
おもしろさがなくなってしまう」
というご意見もあったと思います。
それでも糸井さんは、
最後の「おもしろく」の部分、
おもしろい「場づくり」という意味でも、
上場というプロセスが、
ほぼ日の成長には不可欠だと、
そうかんがえられたと理解しています。
糸井
いやぁ、なんと深いご理解を!
今泉
(笑)
糸井
ありがとうございます。
今泉
長い時間、そばでみていたものですから。
糸井
うれしいです。
ただ、今泉さんは
そうおっしゃってくれましたが、
どうも世間一般的には、
そうはみられていないようなんです。
今泉
いろんなご意見があると思います。
糸井
なかには、ぼくのはなしを
過剰に理解しようとする人もいて
「これは資本主義市場への挑戦ですね」とか(笑)。
その一方で
「じゃあ、利益はどうでもいいんですか」
という人たちもいたりします。
ぼくらからすると、
どっちの意見もちがうんです。
岩永
うーん、ちがいますね。
糸井
ぼくは法人という人格には
個性があると思っているので、
「人だったらそういうことを
したくなるじゃないですか」
といういい方をするんです。
でも「じゃないですか」みたいな話は、
やっぱり受け止めてもらえないんです。
ぼくはそこがとても困りましたね。
(つづきます)

今泉泰彦

みずほ証券株式会社 取締役会長。
1956年生まれ。
1980年、東京大学経済学部卒業後、入社。
株式会社みずほフィナンシャルグループ副社長執行役員、
株式会社みずほ銀行取締役副頭取などを歴任後、
2014年に「みずほ証券株式会社」の
取締役副社長兼副社長執行役員 法人営業統括副社長、
2016年に取締役会長に就任。
現在に至る。

岩永守幸

株式会社東京証券取引所 取締役 常務執行役員。
1961年生まれ。
1984年、慶應義塾大学卒業後、東京証券取引所入社。
90年米国ロチェスター大学でMBA所得。
東証と大証の経営統合後に発足したJPXにおいて、
CFOとしてグループ財務戦略の策定や
組織運営におけるコスト適正化を推進。
現在は、マーケット部門の責任者として
市場運営を総括すると共に、
投資者層拡大の責任者も務めている。