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おもしろ魂。
三宅恵介さん土屋敏男さんと、テレビを語る。

10. ひそかにメモをしている姿。


さんまさんに、相談相手はいるのだろうか?
さんまさんの、あの体力はどこから来るの?
さんまさんの、発想の源は、何なんだろう?

そんなふうに、次から次へと、
想像したくなるところも、
明石家さんまさんのすごさなのでしょう。
3人で語る「さんま論」は、更に続きます。

三宅恵介さんプロフィール
土屋敏男さんプロフィール

糸井 さんまさんは、また、
欲をかきすぎないんですよね。

クチでは「なんでも仕事したい」と
絶えず言うけれど、
「その番組やらせろ」と、
いつでも立候補してるくせに、
「おねがいします」と言ったら、
やらないでしょうね。
三宅 ええ。
ぼくは「ほんとにやりますね?」と、
かならず聞きますから。

やってくださるなら、
ほんとに準備しますよ、と……。
土屋 さんまさんには、
いわゆるマネージャーという存在が、
あんまり、見えないじゃないですか。

当然、吉本興業の誰かの言うことを
聞くわけではないし、
かといって、
吉本から離れるわけでもないし……。
三宅 相談相手があるとすれば、
(笑福亭)松之助師匠ですよね。
糸井 え?
三宅 よく手紙をいただくらしいんです。
番組を見てどうだっていう……。
糸井 松之助さんっていう人は、
ちょっとドラマとかに出てくると、
いい味を出しているんですよねぇ。
土屋 へぇー。
三宅 さんまさんは、
師匠の芸風に惚れこんで
弟子入りをしていますから、
師匠は立てていらっしゃいますよね。

その師匠がおっしゃることは、
それを参考にしたりとか……。
糸井 いい話だなぁ。精神的な相談相手。
三宅 もちろん、
「どうしましょうか?」
とは相談なさらないけれども、
芸人さんには、どこかで
「弟子だったかどうか」
という境目はあるんですよね……。


さんまさんも、たけしさんも、
師匠がいらっしゃるけれども、
タモリさんは、そこは違うわけですよね。

いまの吉本の若手も、
学校に入ってくるから、
精神的な部分の「師匠」という
支えみたいなものがないわけです。

さんまさんは、
落語をやっていないけれども、
落語界の師匠に教わったことを、
大切に持っているかたなんです。

ひとりでいるとき、
さんまさんは、思いついたことを、
大きなノートにメモをしていますよね。
あの人、そういうことをしている姿は、
人に見られたくないでしょうけれども。
糸井 よく、
メモの真似をしてますけど、実際に……?
三宅 はい。
そこも、さんまさんのことを、
ぼくが尊敬するところです。
糸井 さんまさんのすごさを支えるのって、
やっぱり、体力じゃないですか。

あの体力って、なんなんでしょうか?
三宅 「そういう人なんだ」
と思っておかないと、
ついていけないです……。
糸井 ノリノリじゃない状態のときでも、
ノリノリに持っていきますよね。
三宅 すごいですよ。
糸井 そのストレスは、
ものすごいはずなのに……。
三宅 さんまさんが
『27時間テレビ』に出た土曜日は、朝から
『さんま先生が行く』のロケだったんです。

たぶん、朝のロケには、
寝ないでくるわけで、すでに
徹夜でロケをやってらっしゃるんだけど、
そのあと一度、
少しだけ家に帰られて、夜の一二時ぐらいに
『27時間テレビ』に入って……。

それで「から騒ぎ」まで終わったあと、
日曜の朝の六時ぐらいからは、
『さんま先生』の打ち上げがわりに、
スタッフみんなで
熱海にゴルフに行っているんです……。

あの数日、さんまさんは、
まるまる四〇時間寝ないで仕事をしたあとに、
ゴルフをやっていまして。

さらに日曜の夕方は、新幹線で大阪に行って……
翌日、寛平さんと、ゴルフをなさっていたんです。

とにかく、さんまさんは寝ないんですけど、
たぶん、どこかでは
絶対に寝ていらっしゃるはずなんです。

ふだん、入り時間は遅いから、
昼過ぎまで寝ていらっしゃるんですけど、
それでも、人には絶対に見せないところで
「自分、やってるぞ」
という風に出しているとは思います。

ロケでは、ほんとうに、絶対に寝ないですから。
「よだれを垂らすところを見られたくない」
という意識があって、
かならず起きていらっしゃいます。

ずいぶん長くご一緒していますが、
ぼくは、ロケバスで、たった一度しか、
さんまさんの寝顔を見たことがないですから。
糸井 今の話を聞いて、
だから、木村拓哉くんと話が合うんだ、
と思いました。

前の日が徹夜でも、
スタジオでは、待ち時間に、
ちょっと寝られるじゃないですか。

だけど木村拓哉くんは
「寝ちゃうと目が腫れるから」
と言って、寝ないんです。

「まぶたが腫れると、
 戻すのが大変だから、
 寝ないほうがいいです」

そういうところは、似ていますねぇ……。
さんまさんが、久々に
「こいつはすごい」と認めたのって、
たぶん木村拓哉くんですよ。

ウマが合うのは、よくわかるなぁ。
どっちも、意地で
人生を生きているような人間どうしだから。
三宅 ほんとにそうですよね。
だから、よく電話してますもん。
糸井 意地の張りかたは、
ロックスターとおなじですよね。

来日したときにホテルのドアを壊すとか、
テレビを窓から投げるとか、
ああいうのって、どうも、
わざとやっているらしいんです。
「伝説」という足跡を残すというか。

さんまさんにも、
そういうところがあるとは思うんですけど、
それにしても、テレビに出演するという
すごいストレスのなかで、
あんなふうに暴れまわるって、
ものすごいなぁと思いまして……。

眠そうな顔をしていても元気を見せていたり。
それでよく病気にならないよなぁ。
三宅 やっぱり、
さっきお話に出たタモリさんとおんなじで、
さんまさんにとって、テレビは、
やっぱり遊び場というか、逆にストレスを
発散している場所だと思うんです。

異常体質であることはまちがいないですけど、
やっぱり、いろいろな芸人さんのことを
見ていますと、五〇歳過ぎると、
身体的にはガタッとくるだろうなぁ、
とは思っています。
土屋 さんまさんって、
体にいいこととか、されてるんですか?
三宅 やっぱり思うのは、
「しゃべっている」というのが、
すごいいいんじゃないかなぁ
と思うんです。
腹筋使うし、あれがいちばん、汗かくし……。
糸井 おしゃべり健康法(笑)。
土屋 ほんとに、そうなんでしょうねぇ。
  (次回に、つづきます)


今日のひとこと:

「さんまさんも、たけしさんも、
 師匠がいらっしゃる。
 いまの吉本の若手は、
 学校に入ってくるから、
 精神的な部分の、師匠という
 支えみたいなものがないわけです。
 さんまさんは、
 落語をやっていないけれども、
 落語界の師匠に教わったことを、
 大切に持っているかたなんです。

 それから、ひとりでいるとき、
 さんまさんは、思いついたことを、
 大きなノートにメモをしていますよね。
 あの人、そういうことをしている姿は、
 人に見られたくないでしょうけれども。
 そこも、さんまさんのことを、
 ぼくが尊敬するところです」
               (三宅恵介)

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 テレビや、企画づくりについて思うことなどは、
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 お送りくださると、さいわいです。
 どのメールも、すべてじっくり拝読しますし、
 つい、おおぜいと分けあいたくなるような
 メールの感想などは、「おもしろ魂」連載中に
 ここで、ご紹介させていただくかもしれません。


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2004-09-14-TUE

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