SHIMIZU_MICHIKO
清水ミチコの試供品無料進呈
(秘密厳守)
1999年5月の日記

第60回

5月1日・土曜日
図書館へ行く。
私の小さい頃も、外で仕事をしてた母(日本旅行)と、
自転車で二人して行くのが楽しみだった。
水曜休みだったので、水曜日になると。
そのあとなぜか餃子を作って食べるのも水曜日だった。
人がここに来るという理由は、本や読書が好きだから、
というだけじゃないかもしれない。
本ヒーリングみたいな。
何かやさしーく語りかけてくれるものが確かにありそう。
「たくさんの本」を見ると、トイレに行きたくなるのも、
きっとふだんテンパってた胃や腸や膀胱が、
安心してゆるむせいではないか。
ゆるみながら詩の本を3冊借りた。

5月2日・日曜日
「ロマンス」収録。
「演技」ってのは想像以上にむずかしい。
ストーリーにそんなに大切な役でもないのだけど、
そんな時こそよけいに、うまくやってみたい、
認められたい、やっぱお笑いの人はどっか違うね、
などと言われたい。
「うまい演技」と言われてる人を真似すればいいのでは。
そういう人はたいてい
「押さえて・淡々と・普通に」やってるわけだから、
と思って本番やってみるが、実際に出てみると、
「テンション低い」とか、
「実感してないんじゃないですか?」と、
鋭い事を言われる。
「あ、なんでわかった?」なんて言いたくなる。
本当に、顔や声の微妙な動きを感知するものなのだ、
とわかった。
決められてるセリフなので、
実感というもの、すごい沸きにくい。
あっちは次にこう言う、とわかっちゃってるんだもん。
奥の深いものなんですね。
たとえば「えっ?!」と驚くってな演技の時、
単にびっくりしてみりゃよさそうなもんなのに、
カメラが回ったとたんに自分の中で、
(知ってるクセに)とか(リハでやった、よお言うわ)
など、雑念であふれかえるのだ。
役者さんは、瞬間自分をだませているのか。
ま、足ひっぱてなきゃいいですけど。
メイク中

5月3日・月曜日

休み。コドモとスカッシュ。
というか単なる駐車場での壁打ち。
コドモのスニーカー買いに出る。
いろんな種類があるというのに、
「今のとサイズだけ違うのがいい」なんて言う。
まーた同じデザインのヤツかい、と言おうとした矢先、
「この色とデザインが気に入ってるから」
と先に言われる。出た。

夫婦で「シティ・オブ・エンジェル」見る。
「実は、天使はいつも図書館に集まっている」
っていうシーン、妙に気に入った。
感じるものがちょっと一緒だったような。
まさか、いるとは思ってませんが。
しかし、オープニングで、子供が高熱出した時の
とっさのお母さんの処理法、国柄が違いすぎてた。
神経ゾー、とした。
お風呂に冷水をはって入れてるのだ。
ゾー。

5月4日・火曜日
宝島の連載「顔マネ塾」用に撮影。
写真より文章の方が立っちゃったかな。
そのあと、前から欲しかったテーブルを
青山に買いに行った。
ライトグリーンの、それはきれいな色のヤツ。
帰りに街頭でティッシュをもらった。
以前、南米に移住した知り合いが、
「日本というところは、歩けば歩くほど
タダでティッシュペーパーがもらえるのか。
これだけでも驚きなのに、さらに驚くべき事に、
それを断る人が多いというのは本当なのか」
と真剣に聞かれたそうだ。
そういえば、なんであれってもらうのを
ついこばみたくなるんだろう。
さりげなくよけてしまう。
けっこう助かるのに。
ところで今度の7月に、
綾戸智絵さん含む多数のミュージシャンらと、
大きな会場で御一緒することになった。
凄いメンバーですよ。
詳しいことはまたあらためて書きますね。

1999-05-18-TUE

第61回

5月5日・水曜日
目医者さんへ。
カッコいいおばあさんのお医者さんで、早口。
私は人にはせかすくせに、人にせかされるのが
大の苦手なので、ここでは
一生懸命キビキビと動作をする。しないとせかされる。
「目によくないのでは」と、笑えるほど汚い職場で、
あっと言う間に結果を出す。コロンボ医師。
「さん粒腫」なのだそうだ。
恐いなあ。
自分でも調べることにした。
飲み薬と目薬をもらう。
帰りに八百屋さんで「しょうぶ」を見つけ、菖蒲湯にした。
これっていいですよね。
なんか、薬膳みたいなお風呂にもなるし、香りもいいし。
私はこれに限らず「お風呂にナニかを入れる」のが
好きなのだが、夫は何も入れないのがいい、
白湯(さゆ)で入りたい、俺の後で好きに入れてくれ、
と言う。
それもわかるので、言われるたびに高らかに笑ってしまう。
人は同感した時に笑うのだそうだ。

5月6日・木曜日
ラジオ2つ。
その帰りにマネージャー・ヤノッチと、
代々木上原の「紅白屋」のラーメン。
なるほどの味。
こないだ、ラーメン王・石神さんと対談してから、
「自分はいかにまずしいラーメン人生であったか」
とわかり、
「いつも車の中に置いてあり、
時間がある時に役立ってた『そばの本』(文春)」を、
石神さんからいただいたラーメンマップにかえてみた。
ラーメンの写真ってのは、蕎麦よりだんぜんそそる。
活気が違う。食欲が増す。
そのうち都内全店制覇、制覇、と豚骨の口臭で誘った。
 
5月7日・金曜日
表参道でロケ。
私は「晴れ女」と呼ばれて10年になりそうだ。
気持ち悪いくらいに毎回ハレルヤー、なのだ。
また帰りに「紅白屋」へ。
今度はお勧めメニューじゃない、普通の醤油で、と注文。
ここではスープを
チャーシューの煮汁でとっているのだそうだ。
それだけで今日もおいしそうに感じた。
私の舌は割と鈍感。
スナック菓子でも、CM文章を読みながら食べると、
かなりおいしくなったりする。
ヤノッチ「かなりすすれるようになりましたー、ほら」
と言って、成果を見せた。
よろよろと上へはい上がって行く麺。まだまだ。
そのあと、宝島インタビュー。
「宝島」は月1回の連載だけど、
写真と、原稿と、インタビューの3つがあるので、
けっこう時間がかかる。

5月8日・土曜日
「料理王国」「テレビブロス」「フィガロジャポン」原稿。
そのあと、コドモを誘って近所の「福寿」へ。
ちょっとしたラーメンライフ。やればできるっすよ!
コドモとラーメン屋さんに
ラーメンをちゃんと食べに行くのは初めてかもしれない。
ただし、ここはご主人がいい人すぎて
普通のラーメンがおいしいのに、私の顔を見ると、
「また来たね!」という顔で、
必ず「卵・野菜・ワンタン」を
黙ってたっぷり追加してくれる。
わーん私、そういうのいらないのよー。
でも言えないしー。
しかしすでに「わあ、すみません」なんて
喜んだ顔してる自分。これも顔マネか。
コドモにまでそれらをくださった上、
「持ってって。お好きでしょ」と
なぜか「シャブリ」をくださり、
メニューにないアイスコーヒーを置いてくれ、
「支払い」まで拒否された。
帰りに、お礼というよりは、
万引きした主婦がぺこぺこと謝るかのような状態で
お店を出た。
コドモと二人、逆・一杯のかけそば状態。
でも、おいしいですよ。
ちくらないでね。

1999-05-20-THU

第62回

5月9日・日曜日
「天才てれびくん」3本収録。
ハデな格好の東京の女の子と、さらにハデな大阪の女の子
二人が会った瞬間から仲悪い様子だった。
歌ってるうち、東京の女の子がちょっとまちがえた。
「ちゃんとしいやーあんたはー」、
「事務所から落とされんで」みたいなつっこみに、
ついに涙ぐんでしまった。
こういうセリフ、周り(大人)がうけるんで、
大阪「私は冗談で言っとったねんで」みたいな顔していた。

私もこういうタイプの子供だったので、
大阪の気持ちもわかった。
コドモって、
うけたい・ほめられたい・認められたい一心で、
大人びた事を言っちゃ、
驚かせようと頑張る生物でもあるのだ。
「君はもすこし上品に、あなたはもすこし下品に」と
アドバイスし、楽しく収録、のはずが、
収録合間での、私へのつっこみまでけっこうきつくて、
そのうち頭からもくもく煙が出てきた。

家に帰り、今日は母の日で、
コドモからメッセージが書いてあるカードと、
好物の「塩大福」2つもらった。
「塩大福って、ハムスターに似てるね」と、コドモ。
笑った。確かに。
大きさや、柔らかい白の中に黒く濡れた丸、
という構図がそっくり。

塩大福
塩大福
ハムスター
ハムスター



5月10日・月曜日
羽田空港で時間が余り、THE・GINZAで買い物。
富山で、北陸一帯に流れる料理番組
「清水ミチコのおかず屋さん」の司会。いつの間に。
ところで行きの機内で雑誌を読んでいたら、
林真理子さんが
「言葉使い(敬語)」について怒っておられた。

これを読んで思い出したのが、私の知り合いの怒り。
新幹線で、ある好きだったタレントさんが
立ち去った席を見て、そのちらかしっ放しの様子に、
ものすごく腹を立ててたのだ。
「あの人、そんな事しそうなタイプじゃん」と私が言うと、
「そういう問題か? いっぺんで嫌いになったわ、最低!」
と怒り収まらず。彼女はものすごく
公衆マナーがきちんとできている人だった。

この怒りが、どうも私にはピンとこなかった。
悪いことは悪いけど、何もあんたが怒らなくても、
と不思議だった。
しかし、林さんのでわかった。
人はどうやら、その人が「得意とするジャンル」にこそ
怒りエネルギーが爆発しやすいようなのだ、と。
また「清水・格言シリーズ」でしめてみました。

5月11日・火曜日
プロの料理人を横に司会。楽しかった。
料理に集中しておられるので、つまみ食いしたり、
ナスで遊んだり、歌いだしたりと、
いろいろな司会の仕方を編みだした。
きびしい一社提供なので、たくさん偉い人が来ていたが、
オッケーなのだそうだ。
オッケーなのだ。
オッケーって何だ。
プロの料理人を横に司会
土地の方と、何でもない話から、
「富山から出た有名人には、
本当は西村雅彦さんがいるんだけど、
多分、どうも彼は隠したがってるようです」
というのに笑った。
真偽は知らないが、(どちらでもいいのだが)
「薬売りの行商の姿で
東京までひたひたと歩いてきた西村さんが、
今刑事をやっている」という
松本清張シリーズの絵みたいなのが浮かんだ 。

1999-05-22-SAT

第63回

5月12日・水曜日
「走れ!ガリバー君」に、カイヤ川崎さんとコンビで。
これは変わっている番組で、まず、新幹線で大阪駅に到着。
ホームで二人がゲームをし、その運命によって、
宿泊する一晩が「天国か地獄の旅か」
本当に別れるのでした。

この「地獄」ってのが、キツくって、
本当にマネージャーなし、携帯なしで、
ハンディカメラを持ったディレクターと
ただ二人で民家に泊まる。食費などはアルバイト先を探し、
働いてお金を得なければいけない。
なお、そのマネージャーだけは天国の旅に同伴して、
一日仕事なし。
「天国となると夢のような豪華旅」なのでした。

ヤノッチ
清水ミチコ撮影:
マネージャー・ヤノッチ

ただ、地獄の方がたくさん映るため、
いわゆる「おいしい」状態でもあるらしい。
しかし、私はきのうも旅先だったので、
地獄だったらいやだなあ、と本気で思った。
ところが、新幹線でお隣の席だったカイヤさんが、
英語の本を読んでおられ、
「何の本?」と聞いたら
「ペラペラペラペラ(英語のタイトル)。
つまり、強く思い描いた事は、必ず実現するという意味」
と言っておられ、
おっしゃ、それやってみっか、と思い、
「私は今夜、スイートに泊まっている、ああ幸せ」
とイメージ。そしたら本当に勝った。

フルコースのディナーをいただき、
ホテルのスイートでシャンペン。
おーっほほほ、という顔で収録。
多々羅大橋の陸橋のてっぺんの景色が一番よかった。
けれど、実際カメラがまわっていると、
味覚や安泰など吹っ飛ぶものなので、さすがに疲れ、
夜、マッサージをお願いした。
このマッサージャーの方の人生の話が濃く、途中まで
「お、こりゃ“ほぼ日”に書けるわ」と思ってましたが、
結局悲しすぎて、泣く泣く筆を折りました。

5月13日・木曜日
この番組、関西・広島方面で視聴率が高いらしく、
朝から会う人ごとに必ず
「あ、ガリバーやない?」なんて番組名で言われる。
いきなり「どっちが勝ったんですか?」なんて質問まで。

それにしても瀬戸内ってめちゃめちゃいいところだ。
海のおだやかさが、人にうつってしまったかのようだ。
数年前に一度だけ、「ベル・カントホール」というところに
来た事があったのだが、そこでも
「遅刻しそうなんです!」と言ってるのに、
タクシーの運転手さんに
「家が近所なので、ちょっと庭で
みかんをもいでいってほしい。うまいから」。
と言われ、えー、と言いながらも、
3分ほどもいでた思い出がある。
両手に「ハサミとバケツを持って立っている」写真が
今もまだ残っている。
今日はロケ先で一般の方から
「ところで、ちょうどキムチを
つけ終わったところなのだが、持っていくか?」
と聞かれ、喜んで2キロほどもいただいた。嬉しかった。

カイヤさんに「キムチなんて食べる?」と聞いたら
「オー、大好キ」とのことで、半分こした。
家に帰り、さっそく切って
「なんてえ、うまいキムチなんだ」と、舌鼓を打った。
甘くない、酸っぱくない。
私はうまいキムチを食べるたび、
身体が喜ぶのがわかるので、
本当の故郷は韓国じゃないかな、と、思いを馳せる。
でもたいがい外国では
「Are you from Taiwan?」と必ず聞かれる。
夕方、東京でナレーションの仕事。
ヤノッチを先に帰し、いったん家に帰り、
10時に日テレへ向かう。

5月14日・金曜日
朝、学校に行くコドモを夫にまかせ、
朝食も作らずたっぷり寝た。
午前、迷ったけど肌ボロボロなのでエステに行き、
帰りに下北沢の「一龍」で、普通のラーメンすする。
たった一人でラーメン食べるっての、
十何年ぶりってカンジー。
ちょっとうるさいメにあう。
しかし、原宿の美容院でカットしてもらい、
家に帰ってピアノ弾き、と、命の洗濯。
充実した。

夜、コドモの宿題に頭脳全開。
やりながら今度のライブ用に
そろそろネタ書きしにゃいかん、と思う。
7月16日、17日、18日(マチネあり)の
3日間が決まったのでした。
チケットは1カ月前から渋谷ジアンジアン、
チケットぴあなどで発売します。
お暇でしたらよろしく。

(編集部註)
清水さんからライブの情報をいただきました。
クリックすると、詳しいことがわかりますよ。
http://www2u.biglobe.ne.jp/~jamhouse/live.htm
「第2回 清水ミチコディナーショー(食事なし)」

1999-05-25-TUE

第64回

5月15日・土曜日
ドラマ収録。
何かの話から、宮沢りえさんに
「今度私、清水さんと
海外に旅行してみたいです。仕事で」。
などと言われ、オヤジのように顔がゆるむ。
しかし、「行ってみたい国」を
お互いせえので、同時に言ってみたら、
私は「ハワイ、メキシコ、カナダ」と、
わかりやすい国名なのに、
りえさんは「チベット、インド、アイルランド」と、
沢木耕太郎方面なので、話がそこで終わった。
成田離婚の前に帰国した。

秋本奈緒美さん、あいかわらずさっぱりと、
「こないだ、タクシーの運転手さんに、
お客さんはもしかして、女性なんですかと、
おかまに間違えられてた」話を、
ごく普通にしてたのに笑った。
長く話してたい人だ。

そのあと、BSの「世界の教科書」収録。
同じ小学校でも海外では、
こんな事をこんなふうに教科書に掲載、
という内容で、おもしろかった。
アフリカの給食も食べた。
マッシュポテトに赤い煮豆をかけたもの。渋い。
マーシーさん、小堺さん、ダンカンさんらと
御一緒したのだが、
ダンカンさんって、ふとしたたたずまいやコメントが、
「えのきどいちろうさん」に似てる気がした。
えのきどいちろう、ウチの事務所で長年のブームなのだ。
えのきどさんがね、と、誰かが話しかけた時点で、
もう笑ってしまう。

5月16日・日曜日
休み。
不思議なファンレター2通。
いたずら電話にしてもそうだが、
いろんな人がいろんな場所にいそうなのに、
日にちが案外きちーんと重なってるのが不思議。

のろのろと新聞を読んで、
家族でハンバーガー屋さんに行き、そこでブランチとする。
この「家族全員がゆるゆるとたるんでる姿」って大好きだ。
といって、これがずっと続いてもダメなんだろうけど。
昔、私が好きなアーティストが、何かのインタビューで、
「家庭という場所は、エゴの吹き溜まりになりやすい」
と言ってて、それには強く膝を打ったものです。
いや、ほんと、「自分は忙しいなあ」って感じただけで、
「王様」になってしまうんですよね。
王様じゃないから忙しいのに。
だから「忙しい」という漢字は心を亡くす、
と書くんだったりして。グラッチェ。

本屋さんで3人それぞれ3冊買う。
子供のマンガ本って、かわいそー。
大人よりも、立ち読みで選べない
(ビニ本みたいにされてる)。
決められたおこずかいで、表紙のみを見てのカンで
選ばなくてはならない。
家に帰ると北海道の近藤さんから紅鮭が届いていた。
わーい。
「切っただけで、これはうまいとわかった」と、
夫が言っていたが、本当においしかった。
最近おいしくって炊きまくってる「赤飯」の残りも
あったんだけど、ここはやはり、と、白米を炊いた。

5月17日・月曜日
「ごきげんよう」打ち合わせ。
そのあと自転車でコドモを塾まで送る。
ホントにごきげんよう。
帰りも待ち合わせし、時間まで本屋さんとスーパーへ。
主婦らしき上品そうな女性に、すれ違いざまに突然、
「あの、いつも、素敵な芸をありがとうございます」。と、
丁寧に言われた。
普通、「いつも見てますよ!」「ありがとーっす」、
くらいだったもので、はっ、と一瞬驚いてしまい、
あろうことか「こちらこそ!」と返事してしまった。

1999-05-27-THU

第65回

5月18日・火曜日
ビデオをレンタル。
私は今まで、あまりにもドラマを見ていない方なのだが、
ここ最近、「ヒット作品」をシリーズで
一気にたくさん借りて観るのが好きになった。
「古畑任三郎シリーズ」や、
「愛していると言ってくれ」など。遅い。
でも、こうやってパパパッと観ると、
集中できるし、時間の節約できてるってカンジ。
気のせいでしょうか。

今日から「ロング・バケーション」。遅い。
3本つまり6回分まで借りた。
こういう時気をつけたいのは、
はまってしまい、翌日つい
「あれ、おもしろいわよねえ、ロンバケ!」
なんて言わないようにすること。

5月19日・水曜日
「ごきげんよう」CXで3本撮り。
メーク室で偶然ピーコさんと会う。
生放送の後だったらしく、ハイテンションで、
いきなり、「わっ! やだっ、ミチコ!」と、
パチンとたたかれた。
「蚊じゃないんだから、、」と、つぶやいただけで
爆笑していた。

本番前の人間と本番後の人間とでケンカしたなら、
ぜったい後者が勝つようだ。

帰りにまた「ロンバケ」456を
レンタルしようとしたら、なくって舌打ち。
ま、世の中には今頃こうやって借りる人も
ちゃんといるわけですな。
「始皇帝暗殺」借りた。
これがまたおもしろかった!
こないだ夫と観た「ジャッカルの日」もよかったなあ。
ドキドキした。暗殺モノが好きになりそうだ。
でも昔から私がたまらなく好きなのは
なぜか「脱獄モノ」。キムチですよねー。
いい「脱獄モノ」があったら教えてください。

5月20日・木曜日
ビバリーとCBC。
そのあと電通の「アドバタイジング」と「ポスト」取材。
最近、まるで決められた運命のように、
ちょうどいいタイミングで仕事が入ってくる。
そんなに忙しくもなく、かといってひまでもなく。
そのあと敬愛する「パテ屋」の林のり子さんとともに、
パテ屋のOB会。夫に送ってもらう。
林さん、30年ぶりに「行きつけの店」ができたらしい。
ピーターバラカンさんのラジオで
「自由が丘のアイルランド系のパブ」を紹介していたのを
聴いて行ってみたのがきっかけとか。
ウチも実は夫婦で日曜日の朝はけっこうつけている番組。
本当にいいお店で、天井が高くて
ビールも食べ物もおいしかった。
ぱくさんに、
「矢野顕子さんに、私の本を渡してほしい」と頼まれる。
ちょうどライブに行くんで、ひきうけた。
すぐおいとましなくては、と思ってたのに
楽しくて長居してしまった。

5月21日・金曜日
ロマンス収録。
行く前の午前中、ピアノ弾いてMDに録音。
なんちゅうヘタなことか。私ならモノマネする。
でもこれでいいのだ。仕方ないわ。
スタジオに行って、しばらくしたら
台本に私の顔が落書きしてあった。
主演女優が書いたイラストらしい。

「HOTDOG・PRESS」の原稿と「FROM・A」の原稿、
今夜書いてくださいね! とヤノッチに言われる。
原稿なんざ、ちょちょいのちょいだよ。
しかし実は、字だけの普通の本を出せたためしがない。
ぜったい何かオプションつきで、と言われるんだ。

5月22日・土曜日
母校の文教大でトーク。なつかし週間だ。
奥平教授も変わってないのねー。
まりちゃん、きてくれてありがとう。
当時を思い、じーんとしながらも、帰りにはお腹がすき、
ちゃっかり行ってみたかったラーメン屋1位である
「はるばる亭」へ。
おいしかった。が、勝手な期待も大きすぎた。
映画とラーメンだけは、期待しすぎず
ノーマルな状態にして行くものかも。
ここで聞いた「ザ・ブーム」の新曲、
いったいこりゃ何だ、と思い、ちゃんと聞こうとする。
そんな時、いつも駅前のレンタルアコムへ。
お世話になっております。
はるばる亭

1999-06-01-TUE


第66回


5月23日・日曜日
コドモの運動会。
毎年泣けて泣けてしかたがない。
といっても私の場合、「こんなに大きくなって!」
という美しい感激なのではなく、
「音楽がなってる状況のもとで人が動く」という構図に、
昔からなんでだか涙が止まらない体質なのだ。
音楽で数人が踊ってる、と感じると、
それだけで泣けてしまう。

ミュージカルでも、ユーミンのステージでも、
ディズニーランドのパレードでも、
踊りを見たら一人でひっそり嗚咽が止まらない。
こないだはスーパーの店頭で、
アメリカ人のチアガールたちの踊りを突然見せられ、
感動もなんともないのに号泣しながら帰った。

小学校の頃も、鼓笛隊で、
笛を吹きながら街を行進している最中、
途中からこらえきれずについ、一人泣けてしまい、
あとで先生と親から「ちょっと話が」となった。
「何か悩みがあるんじゃないか」だった。
初めてうまく説明できなかった事件だった。

ところでコドモは100メートル走で、4人のうちの2位で、
「私の血を引いているのに、凄いじゃない!」
と思ったけど、泣きまではしなかった。
それより踊り。
鼻をかんでもかんでも泣けてきて、
とにかく横になりたかった。

5月24日・月曜日
渋谷スタジオで、「北野チャンネル」収録。
テリーさん、絶好調で飛ばしてた。
ガダルカナル・タカさんに挨拶する。
今度、名古屋の番組で、一緒に司会をするのだ。
できたばかりのチラシを渡す。
「ディナーショー、食事なしって。本当に出ないの」
と率直に聞かれるのは初めてだ。
チラシを配るのはいいが、
肝心の中身がまったくできていない。
いつもプレッシャーで胃が痛くなりつつ、
なんとか書けてたのに、
なんと、プレッシャーを感じられないのだ。
これは成長なのか、その逆なのか。
それすらもよくわからない。
北野チャンネル
5月25日・火曜日
矢野顕子さんのコンサートにジァンジァンへ。
何度聞いても素晴らしい。
この瞬間、生きていてよかった、
実は腹が減ってたんだ、と切実にわかる。
泣けてくる。ほどける、というか。

いったいいつまでこうして我々はこの情熱を、
この愛をナマで聞けるチャンスがあるのだろうか。
HPの「あしたには消えてる歌」のように、
録音やコピーでもしなければ、永遠でありながらも一瞬だ。
永遠の一瞬、というものは、
このようにあっけなくタダで宝石をパラパラくれるので、
もらう方は呆気にとられる。
呆気にとられるために行くんだけど。
鈴木慶一さん自身にも感動。

矢野さんに挨拶に行くと、
「最近メール出さなくてごめんねー」と明るく言われた。
現実の人間。
「そんなのいらないのです、
こうしてあなたの音をナマで聞ける、
それがどんなにありがたい事であるかくらいは
わかっているんです。」
そう言いたかったが、
「いいえー」のひとことで平凡に終わる。

ぱくさんに頼まれた本を渡すと、
「ああ、ぱく・きょんみさん?」と言われた。
「彼女と一緒に“パテ屋”で働いてました、
あんがい狭いですよね。でもこれ、いい本でした。」
なんて答える(来月号のフィガロ・ジャポン参照)。

帰りの駐車場で鈴木さんと会う。
「おお。いつか、ありがと」
(以前私がムーンライダーズのライブで司会した事)
「いえ、ポカスカ、行かれます?」
(ポカスカジャンライブの事)
「行くよ。ときどきあれ、読んでるよ。俺も出たでしょ」
(この日記の事)。
「座布団は?」
(ポカスカジャンライブに座布団持つか、どうかの意)
「俺は、実はいる方なんだ。」
(さる病気の心配があるという意)

一緒にいた友達が、業界用語かと思ったようで、
「座布団、ってどういう意味」だったかを、
「龍の髭」でしじみなど食べながら説明する。

1999-06-08-TUE

第67回

5月26日・水曜日
中京TVの報道番組のナレーション。
「ドキュメンタリー・ダムの里に遠い昔が響く」。
「なんとか」っていう有名なコンクールに
出品するのだそうだ。
私も「頑張りましょ!」と思い、
渋い声・落ちついたトーンに気持ちをしぼる。
「ここはこういう言い回しにしませんか?」とか、
「あ、ここは少しあっさり行きませんか!」、
なんてアイデアをバシバシ提示してたら、
そのうちディレクターさんが不機嫌になってきたようで、
雰囲気が暗くなってきたのがわかった。
「あの、」とか言いかけたら
「はいはい、ちょっと待ってくださいっ!!」と、
声がすでに怒ってるのだ。
ありゃ、また出しゃばったか、と思い、
(あんまり口出ししない方がいいか?)
と手話でマネージャーに聞くと、
「しー」、と口に指をあてる仕草をしたので、
やはり、と思い、
しーんと従うことにした。

5月27日・木曜日
強風。お台場まですごい渋滞。
ニッポン放送の山口さんに「遅刻しそう」、と電話する。
しかし、なんと出たのはタクシーの運転手さんだった。
山口さん、携帯電話をタクシーの中に置き忘れたのだった。
なぜかペコペコあやまって、切ってから笑った。
とりあえず携帯で生放送に出演。
遅刻している状態はとても辛いものだが、
顔を曇らせながらも、ちょっとした
「売れっ子気分」を味わった。
でも、実際「この放送だけは私がいなくちゃ!」
と思ってたのに、放送を聞いているとそうでもなく、
かえってなごやかにスムーズみたいなので、
ありゃ? と、自分が渋滞した。

5月28日・金曜日
CXの「どーなってるの」にナマ出演。
「夫、子供の汚い部屋」特集。
帰りに評判のいいラーメン屋
池尻の「まっち棒」に行ってみる。
が、やっと見つけたのに営業時間ではないらしく、
しまっていた。
仕方なくその近くの「中華・龍の子」でラーメンをすする。
「中華風ラーメン」は、
私の理想よりもやや高級に位置する。でも安かった。
偉い仕事をなさってるお店、と見た。

1999-06-06-SUN

第68回

5月29日・土曜日
昼、BS「土曜元気市」に出演。
沖縄料理特集だったので、まかせろー。

深夜、パソコンに向かっていると夫が
「おい、ちょっと見ろ!」と言う。
行ってみたら、ハムスターの一匹(マウ)が
空気孔にはさまって死んでいた。
空気孔の奥に入ってみようとして、
突起してる部分にささったまま、
だれにも気がついてもらえなかったらしい。

基本的に鳴かない動物なので、助けも呼べなかったのだ。
抱いて目をつむらせながら、私も静かに泣いた。
かわいい瞳のまま、あまりにあっけなさすぎる。
もう一匹に見せたら、
匂いを嗅ぎ、しゅーんと寝床に去っていった。
「まるで、わかったみたいな顔だな」という、
夫の声がやさしく聞こえてしまい、
いつかは私達もどっちかがこうしてわかってしまうんだな、
と思うとまた悲しくなり、深みにはまってしまった。

5月30日・日曜日
時間を置いて、コドモに報告。
「ちょっと悲しい知らせでさー」
と言っただけでわかったみたいで、
ハムスター? とすぐに言った。
しばらく自分のベッドで泣いてから、
「もう大丈夫になった」
とあんがい明るく言い、
「あれ? やっぱ、まだだった」
と部屋にもどっていった。ひい。

そのあと、親子で土に埋め、
小さい葬式をした。
コドモはハムスターの死で
悲しみがいっぱいのようだったが、
私はまたまた夫か、自分の姿と重なってしまった。
ちょうど空が薄白く、マウの背中の色みたいで、
きっと天国に行けたわ、わかるわかる、と言う。
きのうはハムスターが死んだ日だが、
今日はコドモの誕生日なのだ。
ま、こういう日もあるのだね。

5月31日・月曜日
イベントのため、母は宮崎シーガイアへ。
父も仕事へ。
そしてコドモは「川場教室」という二泊三日の林間学校へ。
大丈夫かなあ、このコドモ、などとちょっと不安。

しかし、本番前はすっかり忘れ、
ピアノ、気持ちよく弾けて嬉しかった。
このように仕事ってのは、いい時も多い。
さて、私が一泊した部屋は、100平米ほどもある
超豪華なスイートルームで、本番前に通された瞬間、
「よっしゃ、このあとのステージングがよかったら、
もどったこの部屋を堪能する喜びに変わるんだわ!
やるぞ!」
と直感したんだけど、
あんがい終わってからもどるとそうでもなかった。
でかいお風呂に入りながら
「仕事、終わったんだから喜べ! 私の中の林真理子よ!」
なんて思ったんだけど。
結局「あー幸せ」、などと感じられるのは、
「もらう」よりか「出す」事なのか。
いや、単に私が貧乏性ってことなんだろう。

1999-06-09-WED

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