SHIMIZU_MICHIKO
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(秘密厳守)
1999年10月の日記

第99回

10月1日・金曜日
なぎら健壱さんと「田舎暮らし」のロケで、新潟へ。
なぎらさんは本当にいばったようなところがなく、
俺の位置なんざこんなもんさ、というところが、
実はすごくカッコよく、渋い。
ロケが予定より3時間も早めに終わったので、
「東京駅に着いたら2時間のマトリックス、
みんなで見に行きませんか?」と誘った。
芸能人を映画に誘うのは生まれて初めてだが、
ナギーも
「あっ、俺、芸能人と一緒に映画見た事ない! 行こ!」
と言ってくださった。
しかし、今日は奇しくも「都民の日」で、
リサーチしてみたらものすごく混雑していたので、
断念した。
帰りのバスで、また「行き遅れた息子と、その母」のような
二人の図で、ミニミニクイズ大会を催す。




10月2日・土曜日
ニッポン放送・「はっぴいウイークエンド」で、
「パーソナリティ賞」をいただいた。
ありがとうございますですー。
小笠原局長、私に
「ミッちゃんのコドモ、高校生の男の子だっけ!」と言う。
「放送ちゃんと聞いてね。小学生の女の子なのね」と言う。
「ああ、そうだったそうだった! 
今が一番かわいいだよ! なっ!」と言う。

私はかねがね、コドモが赤ん坊の時に
「今が一番かわいいだろ!」と言われ、1才で言われ、
3才で言われ、ランドセル時に言われ、と、
ずうっと「今が一番!」と言われ続けてきたので、
実は「いったい、ピークはいつなんだ!」
と叫び聞きたいくらいだったんですよ、と言ってみた。

すると、さすが局長ランク、すかさず
「それはね! ミッちゃん! 
ピッタリ小学校5年生なんだよ!
小6からピタッとかわいくないんだ!」と言い切った。
気持ちよかった。

世の中、声量だな! それで決定でいいじゃない!
きっと、何歳でも正解なんだ。要は、言いたくなった勢い!
小笠原さんって人は、とにかく晴れてる!

10月3日・日曜日
勝沼ワイナリーでライブ。
250名キャパで、ワイン飲みながらゆったりと、
という話だったので、
「 いいねえ。小野リサのボサノバかげんでゆったり」
と、イメージしていた。
ところが、フタを開けたら3000人も立ちで来てた。
それを見たらすっかりハイになって、
ボサノバ小野リサをやめ、急きょドサノバ小林幸子理想。
日本晴れ。

一升瓶のワインをいただき、
スタッフで(3人だけど)飲んだ。

10月4日・月曜日
休日。
コドモが「寝てていいよ」と、私の部屋にきた。
「自分で朝食作って食べるから」と言う(しくしく)。
いやいや、と起きあがると、
すでにキッチンで父親が作ってた。
結局一緒に食べた。

乾貴美子さん(ニュース・ステーションのお天気お姉さん)
から、ずっと前にビジター券をいただいていた、
「青山のエステ」に行ってみた。
かねがね「男の芸能人は仕事が終わったら、
飲みにいったり、お姉ちゃんと遊んだりと、
楽しみが持てていいよ!」と思ってたのだが、
それを「いいえ、女性の方がお得なのです」と、
さとしてくださるのが、このエステ。
性格もおだやかになり、感謝に溢れた丸い笑顔で、
すっかりいい人となって帰った。
マザーテレサテン。

10月5日・火曜日
日テレに出たあと、帰りの車に乗ってたら、
路上に見たことのない雑草を見つけ、ふとむらむらした。

こないだから、小さい鉢植えでいろんな草花を
ちょっとだけ育てていたのだが、
つい最近、夫と散歩の途中に近所の路上で
ペンペン草みたいなのを見つけ、
それをひとつ掘って家で育ててみたら、
たちまち増えてかわいく育ったのだ。
それ以来、路上でかわいい雑草を見ると、
ふと持ち帰りたくなる。

コトミちゃんから
「今、病院からなんですー」という電話。
なんと、入院したばっかりなのだ。が、
「病室に入って、いよいよひとりになった時、
テレビつけたら“天才てれびくん”にミッちゃん出てて、
ふざけてんの見てたら、よかった、ここにいるよいるよ、
と思えてきて、嬉しかった」と言った。
「それ本当? やっぱタレントっていいね!」
と思わず実感していうと、
「あ、そういう冷たいところも電話で聞きたかった!」
と言っていた。

野沢直子からメール。
なんと制作した「おめこちゃん」のビデオが、
賞を取ったそうだ。監督と呼ぶように。
今、またすぐ2作目に入るところなのだが、
お金がないので、とほほな日本のテレビの仕事を
入れちゃった、とあった。「美川・うののぶらり旅」。
すごいぶらり人生ここにありだ。

1999-10-20-WED

第100回

10月6日・水曜日
ナレーションの仕事。地味だけど好きな。
ちなみに私は、中学時代の国語の時間も「本読み」だけは、
(当ててくれよー、先生よお!) と思ってたほどで、
「(ためて)……メロスは。
  走った!!(←大きく・感動的に)」と、
思いっきり芝居口調で読むのが大好きだったんですよ。
みんなもクスクス笑うし。
こういう、朗読に限らず、歌声やピアノに、
「ムダに心を込めてやる!」という世界は、
ずうっと私の得意ジャンルとするところ。
ムダに、やみくもに、なのがポイントね。

この日記もやみくもに
今日でちょうど一年になろうとしてます。
今までのご愛読を、皆さんに感謝します。
またお会いしましょう、さようなら。
と、一年前には結ぶつもりでいましたが、
もうちょっと残ることにしました。

皆さん、返事書いてないけど、
メールたくさんありがとうね。

ところで、今日は事務所の仕事が終わった夕方に、
家族とスタッフ全員を誘って、電車に乗って、
「ハンバーガーをテイクアウトして持ち込み、
 映画(マトリックス)を観に」行ってきました。

5人くらいの人数で映画を観に行ったことって、
ありますか?
私は一人が一番好きだ、と思ってたけど、
こうやって仲間とつれそって行く映画って、
こんなに楽しいのか! と思うくらい、楽しかった。
夕食はそんなんだったし、映画が終わってすぐに
バラバラに電車に乗って帰ったんだけど、
スペシャルスイート・デイってカンジ。
みんなも確かにそういう顔をしていたようだった。

誰も何も盛り上げようともしてないのに、
なんだか盛り上がる日、というのがあるもので、
今日はそういう日。
自分が幸せだと、
ぜったいに巻き込まれる人間がいる、と思えました。
とかいって、
私が誰かに巻き込まれてたのかもしれないんだけど。

10月7日・木曜日
ニッポン放送でナマ放送。
そのあと、たまっていた原稿書く。

事務所にそれを持っていって、
そのついでにした中川さんとの話が面白かった。
ナカガーさんの友達の話なんだけど、
「市販の歯磨き粉の研磨剤には、
  たくさん漂白剤が入っていて、
  結局は体に悪いのである」
という事がわかったので、
「漂白剤の入ってない、天然だけで作られた
 歯磨き粉を買って使い始めた」のだそうだ。

そうしたら、2週間目で、歯がマッキッキに
なってきたのだそうだ。歯がマッキッキ。
世にも楽しい語呂じゃないですか。
その友人が、「おや?」と思う頃、たちまち家族に
「あんた、歯が黄色くなってるわ!」と指さされ、
急に怖ろしくなって、すぐ市販のものにかえたら、
1週間でたちまち白さがもどってきたという。
すごいねえ。歯がマッキッキ。
ってことは、昔の人はみんな、歯がマッキッキ。

多少、鈍感でなけりゃ、生きにくい世の中って事ですなあ。
そのあと、私が
「歯ブラシっていえば、舌のこけを取るときさー」、
と、話しだしたら、ナカガーさん、
ぎょっとした顔で、話の中身よりも
「何ですか! 舌のこけって!」と、驚いてた。
“こけ”ってのはつまり、舌べらについた垢のようなもので、
これは取り出してみると、取らなかった自分の時代が
信じられないほど、気になるんですよね。
でも、「舌のこけ」、ってのも、
誰がつけたネーミングなんだか、人聞き悪い。
ものすごく悪い。
でも、一回取ると、取らないと気になるしー。
白い色は恋人の色、なんではなく、
現代の求める色、なのかもねー。

10月8日・金曜日
「誰でもピカソ」で、久しぶりにクマさんと会った。
「ほぼ日で、市川の新作品見ちゃったよ!」と言うと、
照れながら、
「そっか! 見たか! メール交換しよっか?」と言った。
この言葉が日本一似合わない男、決定1999!。

楽屋に行って静かにお化粧をしてたら、ノックが聞こえた。
普通ノックは「コン、コン」と2回やって、
相手の返事をうかがうものなのに、
「スコココココココココココココン!!」と、
「いかにも両手で連打ってる!」という音。
誰だろう、いったい、と思ったら、
綾戸智絵さんだった。出た!
「ミッちゃん、元気やったか!? 
 いやあ! 元気そーやんか! わかるわあ。
 あんな! うちな! ちゃんとつけとんねんよ!」と、
早く早く!と言わんばかりに、自分の首を指さした。

実はずっと前に彼女と楽屋で御一緒した時、
私のアクセサリー(ビーズだらけ)を見て、
「うわあ、えーなあ! えーなあ!」と、
すごく羨ましがっておられたので(こんな人も初めて)、
「どれでも1つあげよっか〜」と言ってみたら、
本気で喜んでゲットしてくれたんでした。

それにしても、まじかに顔を見ただけで
パワーをもらった気がした。コドモみたいなのだ。
帰られたあと、またメイクにもどりながら考えた。

彼女はおそらく、無邪気なままだったのではなく、
人生のどこかで「コドモに変わった」のではないか。
ターニングポイントがいったい何だったのかは
知らないけれど。
きっと、そういう地点があったのでは。
「細かいポイントなんかよりも、今を見てほしいねん!」
という顔なのだが。
大人になると、こういう人に会えるのがお値打ちだ。

10月9日・土曜日
LFで生放送。
この御時世に、ブリジストンが
新しく協賛に加わってくださった上に、
「皆さんにどうぞ」と、
出演者にゴルフボールのセットをくださった。

でも「私には……豚に真珠なのね……」と思ってたら、
元祖スケバンデカ(と、心の中で呼んでいるご婦人)が
やってきた。
そうだ、ま、ゴルフ好きのスケバンデカにあげたろーかな、
と思ったその矢先、
「それ、ちょうだい! ゴルフ嫌いなんでしょ!」と、
当然のように私のゴルフボールの箱に手をかけた。
私もつい「彼女に渡すもの」と
脳に命令したばっかりなんで、
ポカーンと渡してしまってた。直後アッターきた。

なんでこう「宿題しようかな!」と思ったときに
「宿題しなさい!」と言うのか、妙齢のご婦人は!
ちょっと待てば、
お互いにどんなにいい気分だったかしれないのにさー!

しかもそのあと
「清水さんね(←笑って)、
 これって1コ600円するもんなのよ。
 6×6で3600円するのよ?」と私に教えた。
おいおいおいおいおいスケバンデカよおー、
ありがとーよおおおお!!

10月10日・日曜日
コドモが「たれぱんだ」のイラスト入りの紙に
絵を描いていた。

私が「たれぱんだって嫌い」と言うと、
「なんで」とコドモが聞く。
夫もいたので、ちらっと聞こえるように話した。

「つまりですね、今の世の中、昔と違い、
 勉強できない学生で何が悪いんだ、成績が悪くても、
 本人さえしっかりしてたら別にいいじゃないか、
 という風潮になってきました。そこまではいいです。
 ところがそのうち、かわいかったなら、
 なんーでも許されるようにまでなってきました。
 ボーダーラインが、ゆるくなったわけです。
 しかし、たれぱんだ。
 これは、顔がたまたまかわいいってだけで、
 キティちゃんのように、立って歩いて活躍もする
  ってことすらしないのをまだ前提としています。
 だらー、と死んだように寝ているだけです。
 本人はぜったい『たれてる方がかわいい』と
 世間に思われてる事を確信しておる。
 ここが太いと。
 ですから私には、
 その甘さに甘えた鈍くさい鋭敏さが、
 こにくったらしい、と思えるのです」
と演説した。

そしたらコドモ、
「なるほど、そんな事まで考えてたのかー」と、
顔もあげず、ゆっくり言ったあと、
「けなげやのお」と、ピリオド打つかのようにいった。
「今の“けなげやのう”は、うまかったな」と、
夫が笑った。
確かにそうだった。
「けなげやのお」は、クラスで流行ってるんだそうだ。
なんて事だ。
「さむっ!」よりひどいボキャブラリーだ。

1999-10-23-SAT

第101回

10月11日・月曜日
TBS「スーパー知恵MON」に出演。
「この番組、なんか暗いから、明るくしたろー!」
と思ったのだが、やればやるほど浮いてたようだった。
このところ仕事がまるで
「明るさ救急隊」のようになってきたような。
私は暗い部分も大いにあるんだけど、
のべにしたら実はくどくて、周りを疲れさせるほど軽い。
でも実はそれが昔はずうっとコンプレックスだったの。
うざったいんじゃないか、くどかろう、と思って、
暗く見せようと、努力までしてたんです。
変なもんでしょう?
でも、このミックスされた味も、
私のひとつの個性なのだ、と最近思えてきました。

10月12日・火曜日
日テレにパカッと出演。
そのあと「TX・平成お見合いスペシャル」で
ナレーション。VTR、濃かった。
そのあと「WOWOW」で「サウスパーク」の吹き替え。

アメリカでヒットしたアニメで、
主役の子供二人の口がかなり悪い。
私はこてんぱんにコドモにやられる
「バーブラ・ストライザント」の役。
気位の高い女性をおちょくるのは、
古今東西にかかわらずおもしろいもの。
ただ、ふと思ったのは、英語の悪い言葉って、
いつまでたっても「FUCK!」だの、マザーなんとかだの、
ここ一番!のボキャブラリーが少なくて、
やっぱり日本語の細かで、繊細なやらしい言葉の方が
きついし、能力が問われていいな、と思いました。
スタジオで、KORNさん、キッチュさんらと
久々にお会いしました。
私はアニメは「ちびまるこちゃん」
(カニ缶もらって「ありがとう」と言う山口百恵の役)
以来だった。




10月13日・水曜日
高田文夫さんの主催するイベント
「高田笑学校」のため、新宿「サザンシアター」へ。
いっこく堂さん、浅草キッドさん、松村邦洋さん、
昭和のいる・こいるさんらと御一緒。
うけなかったわけではなかったんだけど、
女で良かったなー、救われたなーと思った。
お笑いって、なんでかわからんけど、
絶対的に「男の」領域なんですよね。
だから、いっつも「こんちきしょー」、
なんて思う時も多いんですけど、
今日はもし自分が男だったら、かなりしょげてた。
ま、負けたんです。
こういうステージって、かなり怖い。
えー皆さん、私は、面白いのでしょうか、と、
マイクを持って問うてるようなもんです。
みんなもあがってたけど。
笑ったのは昭和のいる・こいるさん。
「どうしてそれをやろうと思われたのか。発見者は誰!」
と、聞きたくなった。
一度聞いてみてください。
情のなさったら、この上なし。




10月14日・木曜日
楽しいビバリー。ラジオ大好き。
思えば私はラジオでデビュー。
そのあと、事務所に行って、来月出る番組の打ち合わせ。

夕食を作ってから、渋谷のコクーンの、
「かもめ」を観に行く。
事務所の中ガーさんが、岩松了さんにはまっているので、
私も、どら、と観に行ったのだ。笑った!
最後のシーンの(え?まさか、、)という顔は、
こわくてこわくて鳥肌が立って、
忘れられなくなってしまった。

コドモと屋上へ行ってしゃべる。

10月15日・金曜日
青山のスポーツクラブで1時間半。
ヤノッチとスカッシュなど。
体力、みるみる落ちているのがわかった。
ヤノッチは、さすがもとサッカー選手で、
たまたまここに大学の知り合いがいたらしく、
格安で入れてもらえるんだそうだ。
ここは、サウナも全員
「バスタオル巻いて入るの、当然ざましょ?」
というノリなのでラクちん。

そのあと仕事一本。
「いかにもスポーツクラブ帰り!」という
ギラギラ顔でのぞむが、別に誰もわからなかったようだ。

1999-10-28-THU

第102回

10月16日・土曜日
LFで生放送。帰りに買い物。
家に帰ると、久々に大橋君たち3人が来て、
居間でゲームをやっていた。
おいっす、とだけ言って自分の部屋へ。

しかし、どうも明るい大橋君が、
声をかけても目を合わせないような、
ツンと無視しているような顔だった。
あとでコドモに聞いたら、泣いた後だったそうだ。
それで目を合わせなかったか!
表情を思うとかわいい!
っちゅーか、いとしー!
男の子もいいな!

理由を聞くと、A子ちゃん(めちゃ強い)に、
「おーちゃん(大橋君)、ゲームの仕方がとろいよ」と
いびられてて、初めは笑ってたんだけど、
そのうちに静かに泣いちゃったそうな。
そして泣き止むか、というころ、私が帰ってきたそうだ。
あの顔は「そう見せまい」とする顔だったのだった。
「もっとどういう風だったか、ちゃんと詳しく教えて!」
と言ったら、
「書くからだめ」。

10月17日・日曜日
TEPCO横浜へ。夫と、マネージャーと3人で移動する。
夫、どんどん湿疹が増えてきて、
どんなお医者さんに行っても
「ストレスです」と言われちゃ
同じようなクスリをもらってくる。
このところ私が毎晩それを背中に塗るのだが、
(ちょっと楽しい)いっこうに治らない。

「このままじゃ、気味悪くて、人に会えなくなるよ」
とこぼしていた。
しかし、ついこないだ雑誌に、
「いわゆる新人類と言われている体質に、
 ストレスからの湿疹が増殖中」
という記事があり、それを見せたらちょっと喜んでいた。
帰りに夫のケータイが鳴ったんだけど
(ちょっとクセのある人からだった)、
「声を聞いたとたん、全身が一気に
 ブツブツっと動いて痒くなった」のがわかったそうだ。
男は繊細な。

でも、私の場合は「何時から何時まで」と
ハッキリわかっている仕事で、
ストレスも発散できるような仕事なんだけど、
夫はやっぱり「ご苦労様でした」ってな事もないのだ。
やってあたりまえっちゅーか。
中年の男子は誰もがそうなのか。

といって、「私は夫が病気中」という状態が
実はすごく好きだったりする。
ずっと病気だといい。
やさしくするのに理由ができるもんね。

10月18日・月曜日
〆切3つ。でも原稿を書くのは好きな仕事。速いよー。
苦手なのはインタビューや対談。へたよー。

事務所に行き、中ガーさんから聞いた面白い話。
妹さんが、
「大手の会社に出向いての健康診断のアルバイト」を
しているそうなのだが、その会社によって、
「ものすごく個性が出てる」そうだ。

たとえば「大蔵省」に出向くと、
「人生のレール、もうすでに決まってるんです……」と、
全員がなんら病気でもなく健康なのに、
顔に全く覇気がないそうだ。
ちょっと健康的な仮死状態みたいらしい。

逆に元気なのは「宅急便屋さんの某会社」だそうで、
これはみんな誰もが、ちょっとした注意を、
「ハイッ!」そして「ハイッ!」と、
気持ちよく返事してくれるんだって。

感心したのは「パソコン会社」で、
ちょっとした注意書きの、たとえば
「耳の聴覚検査をしておりますのでノックは静かに」
なんて張り紙を、わざわざ頼まなくても、
絶対に自ら読んでくれ、それはもう、
かすかな響きのノックをしてくれるんだそうだ。
ともかく「文字」を察知するという能力が違うと。

この点では「宅急便屋さんの某会社」は、
言われた事は「絶対!喜んで!」なのだが、「張り紙」は
「まったく目に入ってないかのよう」だそうで、
ちゃんと言わない限り、
「ダダダダ!」そして「ダーッンッ!」と、
すごいノックで、しかも爽やか!な笑顔で現れるんだそう。
笑ってしまった。
会社によってこんなに個性が違ってくる、ということは、
やはり「朱に交われば赤になる」というもんかしら。
それとも、もともと「赤かった人が朱に寄っちゃう」のか。

10月19日・火曜日
日テレ生放送へ。そのあと大阪で仕事。
大阪って「笑いに厳しい土地柄」と言われているけど、
実は「笑い」に対して、
日本一「おおらか」なんじゃないかな。
なんとも楽観的で、やさしくて、
いっつも帰りの新幹線でしみじみーとする。
なんだこれは、と考えてみると、
どうも「おっかさん」みたいな人が多いようなのだ。
東京はお父さんかな。
品がないと、怒られるような。

ファッションセンスにしろ、言葉にしろ、
そりゃもう包むような暖かみがある。
プライドも感じるけど、
人を好きになりたい、さあおいで!
という気持ちが溢れてるようだ。

音楽の「ブルース」も、大阪では独特な流行があって、
長いあいだしっかり生きているのもわかる気がする。
なんか聴きたくなる。

10月20日・水曜日
神奈川の高校に呼ばれた。すごくうけた気がした。
私は、笑いも必要だけど、
もひとつ何か、役目があるような気がする。
このところ「出る」事に意味があるような、と感じました。

夕方、たまたま読んでいた本、
「ラジオの鉄人毒蝮三太夫」(山中伊知郎)の主役でもある
毒蝮三太夫さんのドキュメンタリーをテレビで観た。
私にないもの・あるものを感じつつ、夕食の準備。

コドモ、「学芸会の練習で最近忙しい!」のだそうで、
横でセリフ(でも3言)を繰り返していた。
「おーちゃん(大橋君)は、セリフを“おかま”みたいに、
 うっふんとやりたがってる」のだそうで、
先生にも「そのアイデア、個性があっていいね」と、
誉められたらしく、
「ウケるか、どうか」みんな注目中なのだそうだ。

1999-10-31-SUN

第103回

10月21日・木曜日
ラジオビバリー昼ズ、イッセー尾形さんがゲスト。
CM中に
「ジァンジァンって、どういうところが
好きだったですか?」と聞いたら、
「あすこはねえ、
俺の方が偉いぞっ!って思える場所なんだね」
と言ってらした。笑った。

ちなみにイッセー尾形さんが「すげー怖かった」という
ジァンジァンのライブは、
お客さんに渥美清さんがいらした時で、
「一人だけ顔がすごく目立ってて、
みんな笑ってるのに、一人だけずーっと笑ってない上、
目が光ってるだけなのがわかるんだ」と。
もの凄く怖い話でしょ。

そのあとCBCに出て、
帰りに麻布の「スーパー・NISSIN」へ寄り、
友達数人で集まり、久々に多人数の料理をする。
料理の腕がにぶってるのがわかった。
あれ?と思った。
なんというか“作った時の自分のコーフン度!”が低い。
前日から漬けておいたチキンが丸ごと焼き上がっても、
「できたわ!今日もミッちゃん大・成功!」ではなく、
「そら焼けるわな」ってなカンジ。
このところ、忙しかったからだ、ってことで、かたつけた。
でも食べ始めたら楽しかったー。
ヤノッチも大好きな田中さん(キンタマの会所属)が、
洗い物を担当してくれ、横でヤノッチが手伝いながら
しゃべっていたのも、いい光景だった。

10月22日・金曜日
打ち合わせのあと、「天才てれびくん」2本録り。
hitomiさんのモノマネをやってた時、
本番中、歌い踊りながらチラッと見たら、
ヤノッチが吹き出してたがわかって、いっそう激しく踊る。
もはや、モノマネじゃない。別モノ。

帰りに書店で本を買って、
今夜はどれから読もーか、迷う。
ついこのあいだ買った
「レンジで4分チンして、しっとり首を暖めるまくら」
(肩こり・冷え性におすすめ・いい香り)で、
匂いを嗅ぎながら暖まりつつ、
読み寝するのが流行っている。
私にだけだけど。

笹塚の電気店で買った「30分タイマー付き蛍光灯」も
その時ついでに、ワンタッチで押しておくんです。
この製品はいいよー。
デザインも気まじめだけど、よく働いてくれる。
もう4年以上は大切に使ってます。
勝手に30分で消灯してくれ、時間延長もでき、
うとうとしてても、そのうち消えると思うから、
読み寝が気まま。
ただ、恐怖モノを読んでる途中なんかだと、
「ヒュッ!」と音もなく消えるので、
「ひゃっ!」と、呼吸や動悸が激しくなり、
死んでしまいます。

10月23日・土曜日
銀座お米ギャラリーのニューオープンで、
平野レミさんとトーク。
「できるだけでけっこうですから、
お米についてもふれていただきたい」と、
向こう側から要請があったんだけど、
平野さん、いきなりお客さんに向かって、
「えっとねえ!パンなんか絶対だめねっ!
お米食べよーっ!さあ食べよう!すぐ食べましょー!
戦争起きても米食べてれば、勝つのよねっ!」と、
まるでコントのようなハイテンションぶりで、
ずっと笑っていた状態だった。

聞けば、人気の歌手の息子さんは、
夕食中でもテレビに自分が映ったとたんに、
「プツッ!」と消して部屋へ行ってしまい、
料理番組でレミさんが映った日には、
家族中がまるでクモの子をちらすように
パアーッと一気に解散して、
一人になってしまっているのだそうだ。
でも、そんな事をおおっぴらに語れる性格の
レミさんファンも多く、暖かい目を感じた。

私は、芸能界でも自分ほど、
平野レミについて語れる者はなかろう、
と思ってるほど詳しいつもりなんだけど、
レミさんの方はあいかわらず私に、
「ねえねえ、3人とも子供、元気!?」だった。
ウチは一人だけです、という説明もこれが初めてではない。
「だってー、この人の顔ってさー、
いっかにも子供3、4人産んできたって顔よね!
アッハッハ!」
「それはひどいな。アッハッハ!」と、
めずらしくペースに巻き込まれた状態のままで、おひらき。

10月24日・日曜日
福岡で番組「熱血!オヤジバトル」の司会。
11月8日、オンエアです。今年で3年目になる。
始まる前、ステージ脇にあった椅子に座っていると、
近田春夫さんが
「おお、本日もお美しい!」と言うので、
「本当ならここに伏してみよ」と言ったら
本当に伏したので、そこをすかさずヤノッチがパチリ。
コント直前にもヤノッチと一枚しこみました(↓写真参照)。

帰りの飛行機で、南こうせつさん、萩原健太さん、
近田さん、キッチュさんらと御一緒。
飛び立ってから文庫本を読もうとして、ふと周りを見たら、
近田さん、キッチュさんも本をお手持ちの様子だったので、
「この二人は、いったい何を読んでいるのか」が
知りたくてたまらなくなり、
「私はこういうもの(「広島に原爆を落とす日」
つかこうへい )ですが……」と、表紙を見せて聞くと、
近田さんは文庫の「女囮捜査官」で、
キッチュさんは、ぶ厚い「UFO・超能力を見破る!」
といった類の本だった。
なんだかおかしかった。

10月25日・月曜日
また事務所の中川さんから聞いた話。
中川シリーズ。
毎年10月の終わりの土日には、
世田谷線の松陰神社前で小さなお祭りがあり、
この街に住む人々にとっては、まあなんというか単に
「商店街の祭り」としてのにぎわいのようなのだが、
中川姉妹は実は、そろいもそろって長年の
「大の吉田松陰ファン!!」なのだそうで、
毎年秋になるとウキウキ楽しみに出かけてるのだそうだ。

で、今年もその祭りに行き、
「屋台でモグモグする」→「チャンバラを見る」→
「大学構内でやってる落語をのぞく」
(今年も理解不能だった)→「またもぐもぐ」→
「神社を散歩して帰る」というコースのはずが、
落語を見物したあと、すぐ横の看板に
『時代劇映画上映中! いつでも入れます』と
書いてあるのが目に入り、
「ちょっとのぞこっか、そんですぐ出よっか」と、
軽い気持ちで二人で入ってみたら、
すでに映画は終わっており、
あれよと思う間にいきなり司会の人が出てきた、と。

そして、
「では、今の映画に出ていらっしゃった、
原田大二郎さんです!」と言うと、
本当に、原田さんがあの笑顔で
「やあやあ!」と出てきたんだそうだ。
ここで、客席にしっかり明かりがついてしまい、
二人はここで帰ったらいかにも目が合いそうで、
1時間、まんじりと濃いトークを聞く覚悟を
するしかなかったらしい。

ところが40分くらい熱弁して話の途中、
原田さんがいきなり、
「あの、皆さん、くどいんでしょう?僕の話が」
と客席を見まわしたのに、
めちゃくちゃ驚いたのだそうだ。
そして、
「わかってるんです。皆さん、ひいてる。
でもね!僕はいつもこういう性格なんだな。
だから、いやだったら皆さん帰ってくれていいんだ!
ただ、目の前に人がいる以上、
僕はこのまましゃべりたい!」
という熱い言葉に、妙に感動したのらしい。

「こんなに白けないで、自分をわかった上で
頑張ってる人が世の中にいるのか」と、新鮮だったそうだ。

でも、1時間半すぎても、まだ終わらない。
司会の人が
「ありがとうございました。
ではここで皆さんお手持ちの抽選券で、景品を」
と言いかけたら、原田さんがまた、
「いや!こうしよう。抽選はヤメ。ヤメましょ。
ここから、僕と、ジャンケン大会ーっ!
さあ、やりたい人!」と、
こぶしをあげておられたのだそうだ。
「今の若者には、元気がない!」と
言ってらしたらしいが、
そういえば若者に「本気で濃い!」タイプが
いなくなったのは確かかもしれない。

1999-11-07-SUN

第104回

10月26日・火曜日
鹿児島でライブ。
すごい人数(1000人くらい)だったけど、
見ると、ほとんどが女性だった。いいねー。
「男の人って、どこかにいますかー?」と聞いたら、
一人だけいた。すごいいたたまれなさそうだった。

帰りのタクシーの運転手さんから、人生相談。
「娘の恋人はやさしいのだが、
その恋人のお母さんがきついきつい。
遊びに行っても料理から洗い物、洗濯物までやらされ、
あげくに電話で『おたくの娘はずぼらで困る』と
聞きたくないことまで言われる」のだそうで、
来年に結婚をさせるのにしのびないのだそうだ。

“FMのユーミン”をイメージし、
「弟に聞いた話なんだけど、
冷たいようですが、恋というもの、
どんな魅力的な人でも、3年間で冷めるように
脳の構造ができているそうです。そうじゃないと、
ずっと熱にうなされ続けるような状態になってしまうから。
ですから、3年間だけは結婚に反対をして、
それでもダメだったら、
きっぱり賛成してはいかがでしょうか」と言ったら、
「携帯で娘にそれを言ってくれないか」と言うのに参った。
ユーミンの番組にそれはないのだ。
「いや、他人じゃ、まずいでしょう、多分。
かえって火がついてしまいますし」と逃げた。

タクシーから降りしな、運転手さんに
「清水さんがね、とにかくモノマネ王座に
出られるよう祈る。私はあの番組が大好きですけんね!
がんばってください」と言われる。
そのあと空港で鹿児島ラーメンをすすった。うまか。

10月27日・水曜日
青山のエステへ。
エステは「女のソープ」と言われてるんだそうだ。
お下品だけど、わっかるわあ。
そのあと、テレビ用に自前の洋服を数着買って
(これまた気持ちいー)、日テレのメレンゲへ向かう。
このところ毎日クリスマスプレゼントをもらってるような。

たまたま家にきてたコドモたちの会話を聞いて絶句した。
サンタクロースが、いまだ、「いる」か「いない」か、
意見が別れてるのだ。なんてことだ。
(いないに決まってるじゃん!)と心で絶叫、顔で無視。
ウチの子はどっちだと思ってるのか、
みんなが帰ってから聞いたら、
ちょっと笑うような顔で
「あれはないと思うよー。空をトナカイで渡るっていうの。
でも、サンタクロースは、どう。いるんじゃないの」
と言うのに、(ダメだこりゃ)と思った。

昔と比べ、コドモ達は全体的に
明らかに幼くなっているようだ。
でも、親のほうから
「いませんよ、そんな人」とも言えない。
これが、本当にどうしても言えないのだ。何だろう。
「ファンタジー(善)への、大人のぬるい思い」が
蔓延してるかもしれん、と思った。

ところで、こうして子供達をながめていると、
どうも、(死別・離婚・あるいは冷酷で)
母親がいなかったりするという子供は、とても大人びる。
まるで少しでも早く大人に近づきたいかのように。
でも、それは悪いばかりなのか、と言うとそうでもなく、
とても賢く育ち、本当にたくましいほど。
このへんは明らかに平等です。

10月28日・木曜日
ビバリー。
先週行ってきた福岡の、若いビバリストの女の子
(ビバリーファンで、わざわざ有線で聴いている)から、
LFあてにFAXをいただいた。
「あの時見た、ヤノッチのみんなへの腰の低さに、
プロを感じました」と書いてあり、ヤノッチに
「あれ、あんた、どっかでそんな姿を見せたっけか?」
と聞くと、
「さあ。どこかで見られてたって事でしょうね。
ふふふふ。ふふふ」と、嬉しそうだった。
マネージャーを誉めてくれるとは、さすがビバリストだ。

そのあと、いったんコドモの夕食を作りに家にもどって、
メイクをし、あがたさんの映画
「港のロキシー」トークショーのため、渋谷の映画館へ。
あがたさん本人もカッコいいが、
あがたさんファンもこれまた若く、
ファッションもカッコいい人ばっかりズラー。

話しているうちにわかったのだが、
なんとずーっと昔、あがたさんは私の家に来られ、
「私の手料理を食べた事がある」のだそうだ。
私は全然覚えてないので、ただ、びっくりした。

10月29日・金曜日
オフ。素晴らしい言葉。
しばらく弾いてなかったピアノにさわる。
そのあと、冷蔵庫の野菜室を徹底的に掃除。
なんだか、SFみたいな匂いがして、
えらいことになってるなあと、笑えてきた。
すでに悪性の「笑気ガス」が発生したのかもしれない。

そうか。それでウチはいつも明るい家庭なんだな。
けたけたけたけた、と笑いが止まらずにいると、
夫が踊りながら帰ってきて、
笑いながら私と一緒にタンゴを踊り、
コドモも笛をふきながら
ハムスターをぞろぞろと引き連れ、
一家の陽気なパーティが始まった。
と、そんな事になったら困るので、
野菜室はこまめに掃除をしましょう。

10月30日・土曜日
LF生放送。
苦手なスケバンデカ、
なぜか強力に上機嫌でやってきて、その陽気さったら、
私にまでふと、うつってしまってたほどだった。
こんな事でなんだかスケバンが好きになっちゃった。
上機嫌というもの、実は人類最大の武器かもしれない。
「相手に好きだ、という状態にさせる」
という事は最強の勝利だもんねー。

いったん家に帰り、コドモと近所にある
無印良品(下北沢)へ行く。

コドモ、お菓子売場で見つけた袋を指さして、
「『カリッ青梅』って読みにくい!」と、笑いながら
「カリッ青梅、カリッ青梅。ほら言いにくいよー」
と繰り返していた。
私も口にしたら確かに。

コドモ、「チェキッ娘」も、
「チェキッむすめ」と読むのだと勝手に思い、
これも(言いにくいな)と感じてたのだそうだ。
結局「カリッ青梅」と、ソックスひと組を買って帰った。

10月31日・日曜日
和歌山放送へ。
機内で、またヘタな返事をした。
本を読んでいると、
席に来てくださったスチュワーデスさんに、
「ご搭乗ありがとうございます」と言われ、
その時は黙礼だけし、本に目をもどしたのだが、
そのあとすぐ、
「清水様とワタクシとは、
実は今回で3度目の飛行になります」といきなり言われ、
つい、「あっ!どうもありがとうございますー」と、
語尾をのばしたのだ。
彼女はすぐ去っていったが、どうも今の返事が
間違っていたような気がして爪を噛んだ。

そのあと、
「じゃあ、本来はどう答えるべきだったか」を
考えてみたのだが、これ!というナイスな答が、
いまひとつ見つからなかった。

タクシーに乗ったら、本で見た事のある
「井出商店」(元祖・和歌山ラーメンのお店)を発見!
(帰りに絶対食べる!・すでに食べている自分の姿)を
集中イメージトレーニング。

本番終了後、本当に行けた。
素晴らしい500円の使い道だった。
カロリー気にしないで全部飲み干した。
私の感謝の気持ちを、丼の底の形で表したつもり。
店員さんは、「や、別に」と
見慣れた顔でさっさとかたつけておられたが。

1999-11-09-TUE

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