帰ってきた松本人志まじ頭。

第14回 ジェラシーに、どうやって反応するのだろうか。



糸井 アメリカにも、成功した人に対する
早くつぶれろという流れの人々もいますか?
末永 たぶん、アメリカ人は
日本人に比べると嫉妬が少ない人たちですし、
嫉妬よりも憧れの強い人たちですから、
それをストレートに出して
「よーし俺もやるぞ」と考えますよね。
糸井 そこが知りたいんですよ。
それは、なんでそうなるんでしょうか?
松本 ぼくは、それ、最終的には
アメリカが戦争で勝ったからだと思います。
日本はやっぱり負け国なので、
強いものに対する反感が強い、
というような気がしてならないんですよ。
糸井 もしぼくが神様の目から見ていたら、
成功したひとがいたほうが
市場も大きくなるし景気もよくなるし、
だからどんどん成功しなさいと思うよね。

でも、地面から見た時に、
なんか、やきもち焼きになる。

日本では、成功すればするほど
「思ったことをそのまま言ってはいけない」
という状態になりますよね。
つまり、ほんとに成功しちゃった人が
「俺はこう思っている」と言ってしまうと、
一方ではベストセラーになるけど、
もう一方では・・・。
松本 すごい叩かれますよ。
糸井 本の時は、どうでしたか?
たくさん売れたといっても、
全国の人口から言ったら
何百万部とかは、少ないよね。
そうすると、反感を持った人も多いんですか?
松本 それは、かなり叩かれましたよ。
ぼくのやることなすことについて、散々。
新聞から何から。ひどいもんでしたね。
今でもそうですけど。
糸井 (笑)ものすごく正直に書いたじゃないですか。
あれ、どういう効果があるとか
そういうことを全然考えずに書いたんだよね。
松本 全然考えなかったですよ。
「週刊朝日」でしょう?
そんなもん、週刊朝日を読んでいる人間が
ぼくのこと知ってるとは思ってなかったし、
それが本になるつもりもなかったので、
週に1回、とりあえず書いていただけです。

今考えると、正直に書きすぎたぐらいに
すごく正直に書いていますよ。
糸井 総理大臣になったとたんに
ニコニコしなければいけないようなのは、
ほんとは変だと思うんですよ。

自分の意見が通って総理になったんだから、
もっと全体を変えていけるようなことを
やらなければ、それこそがほんとうに
総理の価値ないように思えるのに、急に
「みんなのもの」とかを
意識しはじめるじゃないですか。
あれを、誰も突破できた人がいないですよね。
松本 むつかしいですね・・・。
糸井 いまだかつていないですよね。
正直にそのまま言えた人って。
末永 ビルゲイツだって
「俺は金持ちだ」とは言いませんよ。
敢えて言えば、カリギュラとかですか。
糸井 ネロとかも。
・・・あ、でも失敗政権ですよね。
末永 だから楽しそうに見えるんですよ。
えらい王様なんて、窮屈そうじゃないですか。
糸井 前に教育テレビに塩野七生さんが出てて、
昔、独裁政権だったというけれど、
ローマ帝国で王様をやるというのは
民主主義みたいなようにみんなで相談するよりも
ずっとむつかしくて、要するに
これだけ大勢の人をひとりの力で
不満なくおさめるというのは、どれほど大変かと。
そういう王様って、もう、いないですよね?

投票なんかしても、
結局は代議制になって、
声のでかい奴が勝つんだったら、
独裁的な奴が、
「いつ俺は殺されるんだろう?」
と思いながら政治をやっていたほうが
よっぽどうまくいくという。
松本 なるほどなあ。
末永 多数決というのは、
そんなに信用のできるものではないと
ぼくは、思いますよ。
でも、大事なのは、自由を確保することで
多数決は、その自由を守るためには
まあ、割といいシステムなんです。
独裁者も、えらい独裁者ならいいけど、
そうでない独裁者は圧政を敷きますから。

多数決は、圧政を敷かせないためには、
割と優秀な制度だと思いますね。
糸井 例えばの話、前に松本さんと会った時に
話したんですけど・・・
ぼくはいろいろな人たちみんなに、
のびのびしてもらいたいんですよ。

でもその時に、
「圧政を敷こう」と考えること自体が
不自由そうだなあって、思うよね。
末永 頭の中が平和じゃない人って
やっぱり、いるんじゃないですか?
松本 ぼく、ドラマでもちらっと言ったんですけど、
結局、ちょっとずつ不幸なのが
みんなの幸せなんですよねえ・・・。
それしか、たぶん、ないと思う。
糸井 うん。
何かをコントロールする力が
つけばつくほど、自分の自由は
売り渡さざるをえなくなりますよね。
末永 でも、陰険な人って、いますよね?
糸井 いますよ〜。
末永 「やっぱは、不幸じゃないとだめだ」
とぼくが思ってしまうくらいに
陰険な人って、いますよね。
糸井 結局、ぼくはとても地味なんですけど、
強姦を、ものすごく憎むんですよ。
せっかくみんなが楽しくやってんのに。
松本 (笑)
糸井 そういう人がいると、
みんなを硬くするじゃない?
で、どれくらい嫌かはわかるだろ?と。
そういうのが、一個あるだけで、
もっとみんなを自由にできなくする。
「いいわよお?」と思っている人が
「え、こわい」と思ったりするなら・・・
松本 他の男は、被害者になりますよね。
糸井 そう。だから、
「お前のやってることはどれだけ犯罪か、
 ・・・もう、あらゆる意味でだ!!!」
って言いたい。
松本 (笑)
糸井 だから、レイプが嫌なんですよ。
でも、そんなことを考えずに
すっ飛んでいっちゃう人たちが
おられるじゃないですか・・・。
やっぱ「欠け」みたいなものが
すごい出てしまっているんでしょうね。


(つづく)

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2001-01-18-THU

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