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雑誌『編集会議』の連載対談
まるごと版。

1.ひさしぶりです、原田永幸さん篇。

第11回 マイクロソフトの古川さん?(笑)

糸井 昔ね、かっこよかったのは、
アサヒビールの樋口広太郎さんいますよね。
あのひととぼく野球場で
隣りあわせで座ったんですよ。
やったらととなりの親父が
アサヒビールを飲むんですよ。
原田 (笑)
糸井 もう、気持ちいいほど飲む。
誰だか知らなかったんですよ。
で、ちょっと話しかけてきたんですよ。
ネット裏で応援してるから。それで、
ぼくのぶんも買ってくれたんですね
ぼく、あまり酒が飲めないので、
「いや、ぼく、あんまり飲めないんですけど」
「いや、まあまあまあまあ」
「ありがとうございます」
って。それでぼく知らないから、
「ビールの、アサヒビールの関係者ですか?」
って言ったんですね。知らないからきいた(笑)。
そしたら、
「まあ、そんなようなもんですね」
ぼくはおつまみ買いにいって、
おくさんとふたりにおつまみ分けてたら、
「いずれまたどっかでお会いすると思いますよ」
と言われたんですよ。
誰だか知らないけどこのおっさんやるなあ、と。
熱心なアサヒのひとで、売り子に、
「どう?売れてる?」
ときいたりして、生き生きしてるんですよ。
それで2〜3日したら、テレビに
その親父が、にこにこして出てるんですよ。
そのときに、この会社は何かが起こっている、
あのひとがこの会社をやっている限りは、
絶対何か起こると思っていたら、
例の大逆転ドラマですよね!
ああいうことなんですよねえー。
かっこよかったですよ、あのおっさんは。
きっと原田さんどっかでそれに
近いことやってますよね。
原田 そりゃやってますよ。
糸井 ねー。
田村さん
(広報担当者)
わたし何度か目撃していますよ。
例えばお店のひとに、マックの説明など・・・。
原田 あるイベント会場の帰り道に
アルマーニの店があったので、
ふらっと寄ってみたんですよ。
試着して、買うことにしました。
そのときに店員のかたが、世間話をしながら、
「今日アップルのイベントやってますが、
 わたしiMacを買ったんですけど、
 買ったとたんに値下がりしちゃって」
って(笑)。
田村 最初そのかた、
私たちがアップルの関係者って
わからなかったんですよね。
原田 ああ、そうだったの。
てっきりアップルの人間だと
ばれてると思ってたから
「いやあ、ぼくは現場の人間ですから、
 文句があるんなら
 社長さんに言ってくださいよ」。
田村 けっこうそのあと、
アップルの人間ということで
細かな相談に乗ったりして・・・。
糸井 (笑)あのー、技術者出身のひとって、
技術畑の話になるとオタク化しますよね。
原田 マイクロソフトの古川さん?(笑)
糸井 あのひとのむきになりかたは
おもしろいよー!中学生と思うくらい(笑)。
さっきまで世界の話をしてたのに、
急に2ミリ単位みたいに。
おっかしいでしょ?
みんな、古川さんの話にちょっと
ひきはじめるんだけど、とまらない(笑)。
原田 例えばわたしアップルに入ったときには、
マーケティングでもオタクの集団なんですよ。
送り手の勝手な論理でみんなが言うわけ。
わたしは、
「商品におぼれて商売するんじゃないぞ」と。
昔はぼくもエンジニアでしたけどね。
徹底して、商品以外のまわりに力を入れるために、
商品は、あまり興味ないみたいな態度を
わざととってたんですよ。
「本日発売する**は、
 **がついておりまして・・・」
新発表して、終ってから
「ああ、今日発表したやつ、これだったのか」
わざと言ったんですよ。
糸井 うれしそうに言うんだよー(笑)、古川さん。
原田 糸井さんとの対談のときに、
「アップルの原田社長は
 自分の商品に愛着がない」って(笑)。
糸井 原田さん、そうとうわざとやってるでしょ、
その「知らないふり」って。
原田 そうですね。

(つづく)

2000-05-01-MON

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