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雑誌『編集会議』の連載対談
まるごと版。

1.ひさしぶりです、原田永幸さん篇。

第9回 クリエイティブのフィー

---- 広告業界に言いたいことは?
原田 まずはね、広告代金が高いというけど、
世の中ではサプライチェーンマネージメントと
いうけど、ユーザーが求めているものを、
いかにすみやかに、いち速く送れるかが、
基本的な競争力なんです。

例えば、GAPが何で
あの商品をあの値段で?
という、これがサプライです。
ユニクロが何で1900円のフリースを出せたの?
ぼく、床屋さんで雑誌読んでて、
1900円、うっそーっと思ったの。
そうなると、ユーザーさんは、
今までいかに無駄なものに
お金を払ってきたかに、気がついてきたんですね。
それくらいのスピードで世の中は動いてるんです。
ところが宣伝の、メディアのスロット取りかたって
とんでもない昔のものでしかない。
われわれ、新商品を何月何日に出すか、
決めて、前もって決めていたのが、数年前です。
今は、いつ出すかわからないくらいのスピードで
明日までわからないくらいのスピードでやる。
みんなうちの社員もXデーを知らないんです。
で、さあ明日だ、って動くんです。
それなのに、新商品を出すときには、
メディアを数ヶ月前に買わないと、
発売のときに追いつけない。
いわゆるジャストインタイムの商品提供力が
1番遅れているのが、メディアなんです。
これだけは、インターネットの時代になったら
絶対変わりますから。バナー広告にしても、
ジャストインタイムでできるわけですよ。
下手すると、取られますよ。広告業界は。
それと、ひとやまいくらでという
メディアの売り方もやめてほしい。
糸井 あれ、不動産業ですからね。
原田 それを変えてもらいたい。
糸井 それは、実現できないと
思っていたほうが、いいですよ。
できないでどうするかっていうのを
テレビと新聞は考えなきゃいけない。
1番いい場所って、誰もが置きたいわけですから、
価格競争で取りっこするわけはないんですね。
なぜなら、お金は出せる限界があるから。
だったら、
「テレビの使いかた、
 新聞の使いかたは変わってくるぞ」
と、「Think different.」を、まずは
メディアのなかでやらなきゃいけない。
おもしろいなあと思うのは、ぼく、前に
代理店って何かを調べたことがあって、
クリエイティブのフィーをパーセンテージでくれ、
って言ったときがあるんですよ。
これだけ売れたからこれだけの
クリエイティブフィーをくれ、って言ってたんです。
原田 なるほど、固定じゃなくて、ね。
糸井 そうじゃない限り
ぼくらはやりがいも出ないし、
企業の気分にあわせて
お布施をもらわなけりゃならない。
そのお布施ってどこから来るかというと、
不動産のマージンなんですよ。
つまり、メディア買いつけが
基本的に15%で固定している。
その15%が、たくさん取れたときには
一杯利益を取れるから、そこからぼくらに
クリエイティブフィーを払ってる。
ぼくらが1番売れてた時代は、
コピーライターブームとかいうときでも、
企業がぼくらにそのフィーを出してないんです。
ほとんど出してないんです。
それを代理店が肩代わりして
「糸井さんこれだけ出しますからね」
というところで、
1行1000万円というホラができたんですよ。
ホラなんですけどね。
これ、だめになるだろうなとは、
ぼく、思ってたんですけど、
案の上だめになってきて。
コンペになるから落ちたり受かったりする、

そこで、どんどんクリエイティブに
コストを投下しなくなっていくんです。
「クリエイティブのひとたちは自分で稼げ」
って早く言ってもらいたかったんですけど、
それも言われなかったんですね。
なぜかと言ったら、それは、
代理店がそういうシステムになってなかったから。
じゃあ、クライアントは、例えばアップルは、
クリエイティブはこれだけあげましょう、
「代理店には少なくしてこれだけにしましょう」
という方法を、日本のやりかたでは取れなかった、
それならもう、生きる道はないんですよ。

(つづく)

2000-04-27-THU

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