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雑誌『編集会議』の連載対談
まるごと版。

1.ひさしぶりです、原田永幸さん篇。

第6回 これからどうなるんだろう?

糸井 今、おもしろいなあと思うんだけど、
動画がリアルタイムで見られますよね。
おそらく2年以内に、実験的には十分ですけど、
各家庭で見れるのは、2年後かな?
技術的にはもうできるんだろうけど。
原田 今1番問題なのは、
電話代が高い、スピードが遅い。
糸井 ということは、定額制になれば・・・。
原田 来年は、一気に。
糸井 そうすると、今ぼくなんかも
さかんにやろうとしてるんだけど、
テレビ局になるんですよ、じぶんちが。

これをやっちゃって、
仮に動画のコンテンツを
一日に10本出せたとしたら、
東京12チャンネルになっちゃいますよね。

今までだと郵政省認可でなければ
出来なかったところが、
全然ちがうところから、つまり例えば
一般の民家がテレビ局になっちゃう。
それは、海賊放送ですらないわけですよ、
どうとでもできるわけですよね。
これきっと、今までの道から行ったら
ぜったいたどりつかなかったでしょうね。
原田 そこで強く思うのは、
郵政省のかたともお話をしたのですが、
Eコマースとしての敷居の低い商売が、
誰でもできるようになっていって、
世の中ボーダレスだ、となったときに
行政はモラルの問題だとかをどうするのか?
というのがあるわけですよ。

その点についてわたしが思うのは、
基本的には教育なんだろうということです。
その教育にはもちろん
子供の教育もあれば社会的教育もするし、
経営者も意識革命をおこさないといけません。

たとえばうちの会社での
わたしのリーダーシップのありかたは、
「いかに権限を捨ててリーダーシップを取るか」
なんです。
いかにみんなに思い切って無邪気なことをやらせて、
そのなかでもきちんと秩序を保つという。

例えば、今朝、ある雑誌を見たんです。
広告があって、うちのことが載っている。
その広告を、わたしは見たことなかったんですよ。
そこで普通の会社だったら、担当者呼び出して、
「誰の許可をもらったんだ!」とやるでしょ?

ぼくはそんなことやりません。
その広告がまちがってないから。
やっていることは、すばらしい。
それなら、いいんです。
で、わたしは、たまたま担当者がいたので、
「今度から見してよー」
って、ただ言っただけ。
糸井 それは単に原田さんが見たいからだね(笑)。
原田 「これはインパクトあるぞ、
 他の社員にも見せたほうがいいんじゃない?」
って、言うわけです。
そういうことが、ルールを決めてしまうと
絶対にやれなくなるんです。

それとおんなじで、
ウェブパブリッシングでも
みんながどんな秩序を持って
コミュニケーションをするかというのを、
許可制認可制みたいにして行政でやるとしたら、
ぜったいに動きが死んじゃうと思います。
インターネットの社会では
そういうことは、意味がないですから。

だから、そこで行政がいかに権限をなくして
リーダーシップをとれるかどうかですよ。
それはやはり、みんなの意識から来るんですよね。
個人個人の、受け手も発信者も
自己責任をきちっと持てるような意識。
糸井 「ルールが少ないから自由にやれ」
と言われたときに、
今までの日本の文化風土では、
「それがいちばんやなんだよ」
ってなりますよね。その問題が一番悔しいですよね。
原田 そう、「ルール、作ってよ」ってなる。
糸井 しばらくはそのあつれきが、
かなり長くつづくんだろうなあ。

(つづく)

2000-04-21-FRI

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