「パンがないのだったら、ケーキを食べればいいのに」と、マリー・アントワネットは言ったのだそうだ。どうせ、そういう話はよくできたウソなのだろうが、ケーキがパンのかわりになると思っているマリーの気持ちが、もひとつよくわからない。ぼくは、ケーキを食べて腹を膨らませることなんて、したくない。マリーはどうかしている。しかし、とんでもなくお菓子好きな人間というのは、ほんとうにいる。ぼくは、そういう人を、ひとり知っている。しかも、マリーという名である。日本人だ。彼女は言った。 「わたしは、パンも食べるし、ケーキも食べる」 なんのこっちゃ?そのマリーは、お菓子のことを語るときと、お菓子を食べるときだけほんとうに真剣な表情をみせる。怖い。 悪いひとじゃないのだろうが、怖いのはほんとうだ。そんなマリーが、「いま、ぜったいにたべるべきお菓子はこれだ!」とほんとうに真剣に語るのが、ここ。 「マリーの部屋」なのだ。
老舗チョコのバレンタインは、
いかがでしょう?

もちろん、
バレンタインです。



「バレンタイン」といっても
「プレゼント」とか「本命」とか「告白」
という意味ではないことを
おそらく共有してくださっているのではないかな
と、思うのです。この部屋では。

わたし自身、遅まきながら気づいたのですけど、
ここでは「バレンタインです」といったら
ただ「チョコレートです」の意味です。

そうはいっても
「贈り物としてはさておき‥‥」とか
「本命の方へだと素っ気ないかもしれませんが‥‥」とか
チョコを書くにあたって
バレンタインという時期のもつ
甘やかな雰囲気に配慮してるふうを装って
きたりしてきましたけど、
もう、まぎらわしいなと。

「バレンタイン」は一直線に
食べたいチョコを書く。
こういう理解でお願いできれば幸いです。
ん? ずっとそうでしたよね? と
思われてる気も
なんとなくしますけれど。



ひと箱で、
160年を味わえるチョコだそうです。

ノイハウスは、
チョコレートの本場ベルギーの首都ブリュッセルに
本店を置く1857年創業の老舗。
薬局として開業したジャン・ノイハウス氏が
お客さまが飲みやすいようにと
苦い薬をチョコレートで包んだことから
160年に及ぶ歴史ははじまったといいます。

そういえば、マリー・アントワネットも
「薬が苦い。。。」と飲みしぶったことから
おかかえの薬師が工夫して、
薬を包むオブラートみたいなチョコレートが誕生したという
逸話もあった記憶が。
薬師、そうとう苦労したんでしょうね。グッジョブ。



このボックスは、“HISTORY”と名づけられていて
ノイハウスの歴史が14粒のチョコレートに
ぎゅっと詰め込まれているとか。
それぞれに名前と
そのひと粒のあらわす年が記されています。



例えば、1857年のGalerieは
創業の場所をあらわしていて、
1912年のJeanは
ノイハウスの3代目、ジャン・ノイハウスJr のこと。
彼は、ボンボンショコラの発明者だそうです。

ボンボンショコラといったら、
チョコの中に、やわらかいチョコ(ガナッシュ)とか
ナッツのペースト(プラリネ)とか、
お酒(リキュール)とかいろいろ入ってる
板チョコじゃないタイプを指しますけれど、
バレンタインのチョコといえば、ほとんどがそうですよね。
断然、板チョコを贈る派もいらっしゃりつつも。



大航海時代、コロンブスがスペインに持ち帰った
カカオは、だんだんとホットチョコレート、
つまり飲み物として人気を博し、
産業革命を経て、やっと固形のチョコレートへと変貌。
同時に機械化で世界中に広まっていくわけですが、
ここまでは、まだ“飲む”か“固い”形態だった
みたいです。

それを、なかにやわらかいフィリングを入れて
ボンボン(ひと口サイズの砂糖菓子)みたいな
形のショコレートを生み出したのが、
3代目のジャン・ノイハウスJr氏。
歴史でも“中興の祖”とかいいますものね。
家光とか、3代目はキーなのかな。



薬局を開業したおじいさんを継ぐ3代目としては
薬を包む形態に、知恵をしぼったのでしょうね。
言われてみれば、
オブラートみたいに薄いとしても
チョコで薬を包むより、
中がやわらかいチョコに薬を混ぜて? 押し込んで?
処方する方が、むずかしくなさそうです。

で、このボンボンショコラは
チョコレートの概念を変えるくらい
すごい発明で大人気だったけれど、
それまでのチョコレートより、もろくて
運ぶ時にこわれやすいのが難点。。。。
そこで、1915年のLouiseというひと粒に
つづくわけですが、



ルイーズは、
ボンボンショコラをエレガントな箱で売るという
解決策を編み出したジャン・ノイハウスJrの妻。
きれいな箱で売り出されたことで、
チョコレートは“薬を包む”以上に“ギフト”に
シフトしていったわけですよね。

今年のバレンタインも
思い思いのギフトボックスに包まれた
チョコレートが並んでますけれど、
その中身のボンボンショコラの発明は夫で
最初のボックスをデザインしたのが妻なんて、
なんとパーフェクトなチームワーク。



えーと、
14粒ぜんぶ紹介してたら、相当な長文になるので
このへんでやめます。
このHISTORYという箱を開けると小さな冊子
というか、ブックレットが入ってて
英語でそれぞれ詳しい説明が添えてあるのですね。
正直にいうと、端折りながら訳すことに
若干つかれてきたので、ご興味のある方はぜひ
原文をゆっくりおたのしみいただければ。







チョコレートの説明を
こんなふうに読みつないでいくと、
世界史そのものがダイレクトに
つたわってくるのですよね。

新大陸のメソアメリカから
ヨーロッパにもたらされて、
最初は飲み物として王族・貴族の間で流行って
王女さまのお輿入れのときに別の国にわたって
そのうち庶民にも広がって。
コロンブスも出てくるし、
ナポレオンの大陸封鎖令も関係するし、
産業革命で飛躍的に生産量は上がったけど、
相変わらずチョコは貴重で人気なものだから
帝国主義の到来でカカオ栽培が
植民地のアフリカやインドネシアに拡散した結果、
過酷な労働問題といった負の側面も生まれていく
という。。。







それほど貴重な嗜好品だっただけに
名だたる老舗が、それぞれの国に。







イタリアのカファレルは
創業1826年。
現在も、200年近く前に誕生した
トリノの街に店を構えているといいます。







こちら、
オーストリアの首都ウィーンのデメルは
創業1786年。







パッケージの
色使いやイラストにも
伝統の重みを感じさせるのは、
さすがです。







スペイン最古のショコラティエは
1797年創業のアマリエ。
アマリエの3代目は
チョコレートにかける情熱と
同じくらいの熱量で芸術を愛し、
アルフォンス・ミュシャのパトロンとしても有名。
バルセロナを芸術の都へと高めるひと役を買った
存在でもあるそうです。





チョコレートの代名詞のような老舗は
もちろん、まだまだほかにも。
とにかく、深いですなぁ。。。
勝手に綴っただけだけど、
いやぁ、満足。
チョコをつまみながらだと、もっと満足。

この部屋では、
今年も完全な自己満足に終始した
2/14でしたけれど、
どうか、よいバレンタインを♥


わたなべ まり

 

2020-02-14-FRI

●ノイハウス NEUHAUS
https://www.neuhauschocolates.jp/

●カファレル Caffarel
https://www.caffarel.co.jp/

●デメル DEMEL
https://demel.co.jp/

●アマリエ Chocolate Amatller
https://www.chocolateamatller.com/en/


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2011-10-05 秋、来たり‥‥
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