桜の終わりに、花衣

桜、終わっちゃいましたね。

咲き始めると、あっという間に
三分咲き、五分咲き、満開になって。
折からの春先の雨や風で
すぐにはらはらと花びらを舞わせる桜。
でも、そのわずかな満開の時に桜の木の下に立つと、
そこだけ時間も音も止まってるような
不思議な静謐を感じる気が。。。

開花予想とか桜前線は染井吉野(ソメイヨシノ)を指して
出されますけれど、野山にあるいろんな種類の桜が
順々に咲いていくのも、春ならではの風情ですよね。
早いものだと寒桜や冬桜とか。
そのあと枝垂桜の早咲きから染井吉野が満開になって、
重なるように山桜や八重桜も開き始めたり。
春は「山、笑う」というのも、その通りだなぁと
じみじみ感じる卯花月です。

和歌でも桜を詠んだものがたくさんあるように、
菓子でも桜をかたどったものは、おそらく数知れず。
なかでも、これはほんとうに綺麗だなぁと毎年思う
「花衣」という生菓子です。
新入社員のころ、ほとんど東京を知らず、
(横浜は近いでしょう? と言われますが、実際
 なかなか都内まで行かなかったりするのです‥‥)
路地のここそこに情緒の漂う赤坂の街を
キョロキョロしながら歩いていたら、
老舗和菓子屋さんのケースのなかに、
この薄桃色の生菓子を見つけました。
きれいだなぁ。。と見入ってしまったのを覚えています。

同じ時期に、「吉野山」という名前の菓子も並びます。
平安時代から桜が植えられてきたという吉野山は
千本以上の桜が春霞のなかに見え隠れして、
きっと、こんな感じなのでしょうね。

桜の下には、
山吹もこぼれるように咲いていたりしますよね。
桜の淡い色と、くっきり黄色い山吹はどこか対照的で
これから草木がぐんぐん伸びていく春の活力みたいな
ものを感じます。

今年の東京の桜並木は
花びらが散ったあとの赤いガクを隠すように
黄緑色の葉が日に日に大きくなっていますけれど、
また来年、この「花衣」が並ぶころには、
新しい花たちがいっせいに開きはじめているんでしょうね。

そして、これからは緑のいちばん綺麗な季節、
良い春を。

 

2014-04-17-THU