CAKE

 
 
空也の和菓子


空也の菓子です。



書こうと思いながら、なかなかためらってしまっていたら
気づけば、この部屋も築12年くらいになっていました。
あまりに有名な老舗菓子ですけれど、
そんなに勝手に怖じ気づいてしまうほどの
部屋でもないよなぁ‥‥
なんて今更ながらに思ったりして、突然書いてます。

銀座の空也といえば、最中ですよね。
連想ゲームにもならないくらい
最中といえば空也ですよね。
空也の初代ご主人が、
懇意にしていた九代目団十郎さんを訪ねた時に
火鉢の引き出しからありあわせの最中を出して、
ちょっと焦がして勧められたのがとても美味で、
そこにヒントを得て作り出したのが
今日に至る空也の最中だとか。
店の栞に、そんな逸話がさらっと書いてあります。

小さな瓢箪型の最中も然ることながら、
生菓子も、おいしいのは言うまでもなく。
夏目漱石の『吾輩は猫である』の中にも空也餅が出てきて
店の栞に、これもさらっと書いてあります。
他にも林芙美子の『匂い菫』、船橋聖一の『白い魔魚』、
小島政二郎の『金の指』など、
手土産などで文学作品に登場すること数多。
銀座並木通りに小さな間口を構える店の暖簾の文字は
画家・梅原龍三郎の手によるものと聞きます。
(もともと縦書きで書かれたものを
 横に並べ替えたとか。)

CHANELやGUCCI、LANVIN、BOTTEGAなど
ブランドショップがきらびやかに路面店を並べる中で、
初めてだと見逃してしまいそうな、
でも気づくとどこよりも
確固たる存在感を放っている綺麗な木目の格子戸です。

このあと、どのくらいの年月、
この同じ格子戸をくぐって、
空也の菓子に魅せられた客人たちが
足を運ぶのでしょうね。
「この前お正月だと思ったのに、
 もう今年も半分近く過ぎちゃって‥‥」
なんて、毎年この時期に驚いたりしますが、
もっともっと長い時間が過ぎていくのも、
もしかしたらあっと言う間なのかもしれませんね。
百年後、世紀が変わっていても
この小さな間口に「空也」の暖簾が
銀座の並木通りの風に揺れていて、
誠実なおいしい和菓子の詰まった箱が
丁寧に並べられていたら、
実際に目にすることは出来なくても
何だか幸せな気がします。

GWも開けて、次の休みは夏休みかぁ~
なんてメゲそうになりますが、
休み疲れには気をつけて、どうか良い初夏を。

 

                   わたなべ まり

 

 

2011-05-13-FRI