学ぶこと、盗むこと、仕入れること。

hobo nikkan itoi shinbun

糸井重里×早野龍五×河野通和 東京大学特別講義

ほぼ日の糸井と早野と河野が、
東京大学の特別講義に講師としてよばれました。
講義のタイトルは
「学ぶこと、盗むこと、仕入れること。」
名づけたのは糸井です。
若い学生たちの希望にあふれる視線を受けて、
3人は、人生の先輩として、
「知恵や知識、行動のいろんなやり方を
 どうやって覚えてきたのか」
を話すことになりました。
20歳のほぼ日とほぼ同い年の大学生からすると、
私たちのことをくわしく知らない人も
多かったことでしょう。
それでも積極的に質問を投げかけてくれました。
今回はほぼ日をあまり知らないという方々に向けて、
〈参考〉もつけましたのであわせてどうぞ。
みじかめの文章で全10回、
どこからでもよんでいただます。

1 新しいものではなく、普遍的なものを仕入れる。 2018.08.16

原島

時間になりましたので、はじめさせていただきます。
本講義の担当教授の原島です。
さっそく3人の先生方も前にどうぞ。

糸井河野早野

本日はよろしくおねがいします。

会場

(拍手)

原島

今日はおまかせしてしまって、
よろしいんですよね?

早野

はい。
僕はもともと20年以上
東京大学で教鞭をとっていまして、
いわばホームグラウンドです。
なので「早野先生が口火を切って」
と言われまして、
今日は僕が話を振っていこうと思います。

さっそく糸井さんに質問を振りますが、
今日の講義のタイトルは
「学ぶこと、盗むこと、仕入れること」。
「盗む」という言葉がドキッとするんですよね。
こういうタイトルをつけられるのは、
みなさんのご想像どおり
元コピーライターの糸井さんです。
糸井さんはどうして
このタイトルをつけられたんですか?

糸井

僕ら3人だけなら
普段からしゃべっていますけど、
今日は学生さんの前で話すということで、
年上の人たちが「こういうことをしました」という
思い出話をただ聞いてもらうのではなくて、
多少でも、学生のみなさんが
自分と照らし合わせて考えられるような、
持って帰れる話をできたらいいなと。
僕らがどうやって知恵や知識、行動、
さまざまなやり方を身につけてきたのか、
そんな話をしたいと思っています。

そうすると、素直に考えれば
タイトルは「私たちの学び方」になるんです。
でも、知識や知恵の中には、
学んだつもりはなくても
自然と自分のものになっていることがあります。
それはなんだろうと考えたら、
「盗むこと」じゃないかと。
先輩なのか先生なのか、はたまた親か、
師匠に値する人の背中をみて
自然と盗んだ技があると思うんですよね。

早野

なるほど。

糸井

そして、知識や知恵で
自分のものにするにはハードルが高いから
盗むつもりはない、けれど「いいな」
というものがあると思います。
たとえば僕なら、
早野さんが専門とされている
原子物理学に興味はあるんですよ。
だけど早野さんの知識に追いつくには
相当時間がかかりますよね。
そういう分野はもう、
早野さんにおまかせして教えてもらおうと思ってます。
文系、特に本や文化に関する造詣は
河野さんの方が圧倒的に深いのでおまかせして、
一緒にプロジェクトをつくってもらっています。
つまり僕は早野さんと河野さんを
「仕入れ」ているんです。

早野

そうか。
僕らは仕入れられているんだ。

河野

なるほど(笑)。

早野

糸井さんは僕らからなにを仕入れようと
声をかけてくれたんですか?

糸井

そうですね‥‥。
今日は身内の人たちに話すと思って
手の内を明かしますけど、
僕らはよみものや商品といった
「コンテンツ」を中心に
人に集まってもらったり、
売り場を作ったりしています。

その「コンテンツ」というのは、
それぞれが持っているものを中心に
組み立てるんですね。
たとえば、コピーライターをしていた僕なら
「広告のつくり方」
なんていう講座をつくれるわけです。
自分の身を切り売りするんですね。

早野

はい。

糸井

ほぼ日は今年で20年目をむかえて、
外部の人でも僕らに深く関わってくれる人に
出会えるようになりました。
でも、自分の身を切り売りするところまでは関われない。
だからこの先、仲間内で同じようなコンテンツを
何度も生み出すことになりかねないと思いました。

じゃあ、今までと違う
コンテンツを生み出したいと考えたときに、
「仕入れ」をする必要があると思いました。
「仕入れ」といっても、
多くの人は「なにがいちばん新しいか」という
仕入れ競争はいくらでもやっているんです。
サイエンス系なら、
今だとAIやロボット、ビッグデータの
仕入先の奪い合いですね。
でも、それらは新しいふりをして
違う角度で話しているだけ、
つまり同じ話をしていることもあります。
それって、自分だからこそ生み出せる
コンテンツではないですよね。

早野

そういう傾向はあるかもしれませんね。

糸井

僕らはコンテンツをつくる者として
なにを仕入れようかと考えたときに、
あるていど普遍的なものを仕入れたいと思いました。

河野

ああ、なるほど。
普遍的ですか。

糸井

はい。
紀元前の人たちも、50年先の人たちも
知っておきたいと思うような、
普遍的なコンテンツを扱いたかったんです。
そこでキーになったのが「古典」#1です。
ボロボロになって朽ちるのではなくて、
何十年、何百年と生きてきて、
これからも生きていく古典を扱いたいと。

そう思ったときに、
自分ができない分野の仕入れができる
早野さんと河野さんに声をかけたんです。
サイエンス部門の早野さんと、
文芸も含むアート部門の河野さん。
2人の仕入れのプロならば、
僕らが手の届いていなかった領域に
どんどん踏み込んでもらって、
一緒に普遍的なコンテンツを
生み出していけるのではないかと思いました。

早野

そういうことでしたか。

河野

あらためてよくわかりましたね。

(つづきます。)

参考にどうぞ! 参考にどうぞ!

  • #1 古典
    去年より古典を学ぶ場所として
    「ほぼ日の学校」をはじめました。
    学校長は河野通和です。
    さまざまな古典を、いろいろな角度から学ぶ場で
    最初に取り上げたのは「シェイクスピア」、
    現在は早野による「歌舞伎」講座が
    はじまっています。