ライフ・イズ・マジック

人生はマジックだ、なんて言い方そのものが怪しいでしょ。
ひょっとしたら、マジックってのは、
宗教の種かもしれないし、驚きの商品化かもしれないし、
人類最古の情報産業だったりもして。

軽い笑いもとれるし、ちょっと好かれたり嫌われたり、
ひとつの国をまるごとだまし取るようなこともできる。
いま、マジックを考えたり感じたりするのは、
なんだかとても大事な気がするんですよ。

おおげさな紹介はよしましょう。
マジック・ナポレオンズのパルト小石さんです。どうぞ!

ナポレオンズのHPは
http://www.tvland.co.jp/napoleons/
e-mail:napoleons@tvland.co.jp

人生を、マジックを、今こそものがたるのだ

ステージ上にマジシャンが立っている。
後ろに横長の箱、マジック・ボックスが
用意されている。

この箱は『美女の胴切り』。
美女が箱に収まり、胴の部分に
幅広のナイフが刺され、
哀れ美女は上半身と下半身に真っ二つ。

観客が見守る中、ステージ袖から美女が登場。
ただ、この美女がかなりふくよかで
お腹もタプタプ揺れている。

客席がざわつく中、
美女は箱に収まろうとするが、
いかんせんお腹が箱からはみ出している。
スタッフが箱のフタを無理やり押さえようとする。

マジシャンは焦り出し、
もっと強く押さえと指示する。
と、その瞬間、ついに箱が壊れ始める。

お終いには箱の底が抜け、
ふくよかな美女はステージに落っこちる。

しかし、彼女は一切めげることなく、
満面の笑みを浮かべてステージを去る。

マジシャンも観客の大爆笑を笑顔で受けつつ、
観客に拍手を送りながら、去って行った。

続いて登場したマジシャンは、
小さなテーブル上に白いハンカチを置く。
すると、ハンカチが生き物のように動き出す。

しばらくハンカチ・マジックを披露し、
「このマジックのタネは、実は髪の毛なのです」

老マジシャンは突然、タネ明かしを始めた。

「まずは髪の毛を1本抜いて、
ハンカチに結び‥‥」
と、髪の毛を抜こうとする。

だが、前頭部、頭頂部には
もう1本の髪も残っていない。

指先を探り探り、ついには後頭部まで指を動かし、
やっと1本の髪の毛を抜くことができた。

老マジシャンは一言、
「私はこのマジックを、
もう50年もやっているのです」

私は大いに感動した。
この二人のマジシャンには、物語がある。

ふくよかな美女の胴切りに大笑いしながらも、
彼女の人生模様、あるいはマジシャンとの関係に
想いを馳せてしまう。

老マジシャンの長き人生の歩みを、
いつまでも夢想してしまう。

そうだ、人生を、マジックを、
今こそものがたるべきなのだ。

「私たちの師匠がこの世を去ったのは、
忘れもしない、1979年、くらいです。

そんな師匠が私たちに遺してくれた
ただひとつの遺作、人体浮遊イリュージョン。
今、ご覧いただきます」

あぁ、次のステージが待ち遠しい。




明るく軽く親切なのに。
 ほんの少し悲しみの味がするのだ。
 マジックというのが、もともとそういう
 素性のものなのだろうか。ー
        糸井重里(帯コピーより)

「神様の愛したマジシャン」
著者:小石至誠
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