罪をあがなう、なう
2019-07-14
< 闇営業 >
闇営業なんて、やったことない。
だいたい、闇営業という言葉すらなかったし。
以前は、所属事務所に内緒でする仕事を
職内と言っていた。
内職をひっくり返して、職内。
ある時、同じ事務所のタレントと
職内の仕事先でバッタリ、
「なんだぁ、お前たちも職内かぁ」
てなことも。
昔、某町内の夏祭りに出演することになった。
商店街の会長さんがマジック好きで、
「ナポレオンズさん、職内で頼むよ」
提灯が照明代わりの仮設ステージで、
30分ほどのマジック・ショー。
ところが、15分くらい過ぎたところで
電源が落ちたらしく、提灯も消えてステージは真っ暗。
これが、たった1度のナポレオンズの闇営業。
誠に、申し訳ありませんでした。
< パートナーは鳩? >
42年前、プロデビューした頃は
生きた鳩を鳩出しに使っていた。
ハンカチから鳩が出現する、定番のマジック。
ある日、相方が鳩を出現させようとハンカチを
広げたところ、鳩が息絶えていた。
「あとを頼む」
そう言い残して相方はステージを去った。
残された私は、おしゃべりマジックで
お茶を濁すしかなかった。
翌日、仕事先のホテルの裏山に鳩の骸を葬った。
その日以降、生きた鳩をマジックに使うのを止め、
ゴム製の鳩を出現させることにした。
相方はゴム製の鳩さえ、とても大切に扱っている。
あの日、亡くしてしまった鳩のことを、
今でも申し訳なく思っているのかもしれない。
「鳩は、マジシャンの大切なパートナー。
マジックの道具じゃないんだよ」
相方の言葉を聞きながら、
「僕のことも、もっと大切に扱ってほしい」
そう思う私であった。
ー明るく軽く親切なのに。
ほんの少し悲しみの味がするのだ。
マジックというのが、もともとそういう
素性のものなのだろうか。ー
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