ライフ・イズ・マジック

人生はマジックだ、なんて言い方そのものが怪しいでしょ。
ひょっとしたら、マジックってのは、
宗教の種かもしれないし、驚きの商品化かもしれないし、
人類最古の情報産業だったりもして。

軽い笑いもとれるし、ちょっと好かれたり嫌われたり、
ひとつの国をまるごとだまし取るようなこともできる。
いま、マジックを考えたり感じたりするのは、
なんだかとても大事な気がするんですよ。

おおげさな紹介はよしましょう。
マジック・ナポレオンズのパルト小石さんです。どうぞ!

ナポレオンズのHPは
http://www.tvland.co.jp/napoleons/
e-mail:napoleons@tvland.co.jp

誰のせいでもない

< 誰のせいでもない >

いつもの店でワイン選びをしていると、
ワイン担当のDさんが
開けたワインを1本、手にしている。

「そのワイン、どうかしたんですか?」
と聞くと、

「あぁ、このワインの味わいがイマイチで。
 コルクが少しカビてるんでしょうね、
 なんか変な臭いがするんですよ。

 これをフランスでは『ブショネ』と言ってね、
 日本語で言うと、
 ダメなワインてな感じですかね。

 誰のせいでもないけれど、
 ダメなワインになってしまったのを
 『ブショネ』って言うらしいです」

すばらしい表現ではないか。
ダメなのに、
「誰のせいでもない」
というのが、すごく良い!

僕は大いに感心しつつ、

「となると、僕はミスター、
 いや、フランス語だから
 『ムッシュ・ブショネ』。
 誰のせいでもなく、
 ちょいダメなマジシャンだから」

Dさんも店長さんも特に否定せず、
ただ静かに苦笑するのみであった。

 
< 万有引力 >

地下街に貼られたポスターの文字『万有引力』を、
『万引引力(まんびきいんりょく)』と
読んでしまった。

引力に引かれて万引するわけじゃないよね。
あぁ、僕はきっと疲れている。

 
< だいじょうぶ >

まだ20代のころ、
朝ごはんは行きつけの喫茶店でモーニング、
コーヒーとトーストのセットだった。

毎日、同じような時間に喫茶店に行き、
同じものを食べていた。

ある日、食べ終わって
財布を忘れているのに気づいて、

「マスター、ごめん、財布忘れたよ」

「だいじょうぶ、明日にでもまとめて」
そう言われると思っていたのに、
「とりあえず時計とか置いてって。
 財布を取りに行って、
 早く支払いしてください」

ショックだった。
僕は、まるで信用されていなかった‥‥。

急いで帰り、財布を持って支払いを済ませた。
その後、二度とその喫茶店には行かなかった。

時は過ぎて、つい先日のこと。
財布を忘れたまま、
いつものごはん屋さんで
ランチを食べていた。

食べ終えた頃、
財布を忘れているのに気づき、
仕方なく、
「ごめん、財布忘れました」

店主はやわらかな笑顔で、
「だいじょうぶ、いつでも」

マジシャンは信用のうすい商売である。
だから、店主さんの、
「だいじょうぶ」
の声が、なにより温かく、耳にのこった。




明るく軽く親切なのに。
 ほんの少し悲しみの味がするのだ。
 マジックというのが、もともとそういう
 素性のものなのだろうか。ー
        糸井重里(帯コピーより)

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