夜にさまよう
2019-02-24
夜中に目が覚めた。
なんだか久しぶり。
二日酔いと夜中の目覚めは
忘れたころにやってくる。
by 小石。
こんな時は、枕元に置いてある本を読むに限る。
まずは、A先生の本を読み返してみる。
副題は『昭和・テレビ・夢』とある。
本の舞台は1960年前後、
それを半世紀のちに
ドキュメンタリー形式で書き綴っている。
私の知らない、若いA先生が本の中にいる。
A先生の後ろにくっついてあちこちを旅したのは、
もう30年以上前のこと。
A先生はまだ50代、
すでに富も名声も得ていたのに、
未だ得られない何かを求めるように
旅を続けていた。
A先生は早くにテッペンに立ち、
下界とはまるで違う景色を見たはずなのに、
いつまでも何かを
追いかけているように思えたものだ。
「先生はこれ以上、
何を求めているんだろう?」
私はいつも、不思議に思っていた。
そんな疑問への答えが、この本の中にあった。
A先生も、先を行く誰かの眩しい背中を
追いかけていたのだ。
なんだか、ますます目が冴えてきた。
よし、もう1冊、読み返してみよう。
今度は文庫本、帯に「自伝のようなもの」とある。
主人公は、始めから
フリーランスしか考えていなかったようだ。
何も見えない大海に向かって泳ぎだし、
自分を活かせる舟を見つけ、少しずつ舟を大きくし、
再び大海原を航海するようになった。
多くの乗組員と針路を語り合い、
ついには大型客船の船長となって七つの海を大航海。
みたいな、本当はめちゃ苦労があったと思うけれど、
ちっともそれが文面に見えなくて。
なんだか、明るい苦労話を読んでるような。
あぁ、うらやましい。
私は、未だに沼を泳いでいる。
舟じゃなくていい、流木でもいい、見つからないか。
現状は、ひとつの浮き輪に3人4人、
ただつかまって漂うのみ。
あぁ。
でもいいさ、今夜はひとまずベッドという舟の中。
もう少し眠ってもいい。
起きて朝焼けを待ってもいい。
本を閉じて、夜に戻ってもいい。
たまには、夜にさまようのもいいもんだ。
みんな時々、夜にさまよっている。

