ライフ・イズ・マジック

人生はマジックだ、なんて言い方そのものが怪しいでしょ。
ひょっとしたら、マジックってのは、
宗教の種かもしれないし、驚きの商品化かもしれないし、
人類最古の情報産業だったりもして。

軽い笑いもとれるし、ちょっと好かれたり嫌われたり、
ひとつの国をまるごとだまし取るようなこともできる。
いま、マジックを考えたり感じたりするのは、
なんだかとても大事な気がするんですよ。

おおげさな紹介はよしましょう。
マジック・ナポレオンズのパルト小石さんです。どうぞ!

ナポレオンズのHPは
http://www.tvland.co.jp/napoleons/
e-mail:napoleons@tvland.co.jp

バランサーのクリスマス

今年も、あのクリスマス・パーティが
開催される日がやってきた。

都内某所の会社、広いスペースに大きなキッチン。
そこに、今年は160人が押し寄せるらしい。
 
さて、私の仕事は余興のマジシャンではなく、
今年もシェフたちのアシスタント係。
トマト切ったり玉ねぎすったりスープかき混ぜたり。

今回もイタリアン、和食、肉担当の
シェフの皆さんが参集、
加えて美しいパテシエも参加するとのこと。

12Kgの肉がすでに届いている。
これらに塩、胡椒する。
しばし置いたら、オーブンに入れる。

玉ねぎ、ニンニクをすりおろし、しょうゆ、
はち蜜などでソース作り。

巨大な魚はカンパチであろうか。
大きな切り身のまま、バーナーで炙る。
塩、オリーブ・オイルで香り豊かに。

切れはじをこっそり口に入れる。
犬のように低くうなる。
うぅ〜、ワンワン、あぁ、たまらん。

揚げが甘辛く煮てある。
1枚ずつ広げて酢飯をのせ、
くるくる巻いていなりロール。

これまた、はじっこをいただいてモグ、モグ。
猫のようにウミャーウミャー。
ゴロゴロと喉が鳴りそう、鳴らないけれど。

大鍋のトリッパを、焦げないように混ぜ混ぜ。
フーフー味見、あくまでも味見、
つまみ食いではありません。

トロトロの中で輪切りのごぼうの歯ごたえ、香り。
シェフ、いい感じに仕上がってます。

でかいフライパンに茹でたてペンネ。
トマト・ソースの海に放り込み、あおりあおり。
パルメザン・チーズをドバドバ投入。

イタリアのマンマの味、あくまでも想像ですが。
パスタが胃袋に到達すると、なぜか心安らぐ。
モルト・ブオーノ!とってもおいしい!

お客さんは180人を超えたらしい。
まるで満員電車のような人、人、人。
そこにロースト・ビーフの大皿を持ち込む。

肉の大皿の前で、
人は遠慮という言葉を忘れるらしい。
飲み込まれるように人々の口に消えていく。

私はまな板の上に残された肉片をつまみ食い、
いや、味見です。

あぁ、この肉の脂のとろける甘さ、私は一生、
ベジタリアンにはなれません。

「小石さんは、『バランサー』になってもらいます。
 4人の一流シェフが、ひとつのキッチンを囲むと、
 なんかねぇ、緊張感ハンパないんですよ。

 だから、小石さんにバランスを取ってもらって」

私は『バランサー』という初めての大役をいただき、
バランスよくつまみ食い、いや味見することで
使命を果たしたのであった。

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