
2009.11.30
アンリ・ベグランさんに訊く12月のスペシャルカバー「アンリ・シリーズ」のこと(2/3)

犬も、そういう自然のシンボルのひとつですね。
たとえば、犬から学べることもたくさんあります。
犬は、基本的に悪いことしませんし、
常に自分の飼い主を尊敬して、忠実です。
信頼とか、純粋であることとか、
とても大事なことを思い出させてくれます。

[ ーー ]
犬の刺繍は、5つのカバーすべての裏側に、
共通して入っていますね。
[ アンリ ]
そうですね。
こんなふうに、ふたつのシンボルを
組み合わせることも、よくあります。
そうすることで、
さらに大きな意味をもってくるんです。
ぼくは、自分のなかにある子どもの部分を
大事にしたいと思ってるんですね。
子どもの気持ちを思い出させてくれるものに、
こういう自然に関するシンボルがあって、
それをふたつでも、3つでも
こうして組み合わせることが、とても好きです。
[ ーー ]
「馬に乗っている人」は、
ネイティブ・アメリカンですね。

[ アンリ ]
そう。ネイティブ・アメリカンも
自然をあらわす大事なシンボルです。
彼らは、とてもすばらしい。
自然のなかで、自然を守りながら
とてもシンプルに暮らしています。
自然をリスペクトして、
自然と共存しながら生きること、
彼らから学べることも、たくさんあります。
ネイティブ・アメリカンのイメージには、
花とか動物、犬とか、すべてが含まれています。
[ ーー ]
なるほど。

[ アンリ ]
人間というのは、とても頭がいい生きもので、
どんどん新しい、
性能のいい機械を作ることができますよね。
それを使えば、いろいろ便利なものを
作れるのかもしれません。
けれども、いまのほとんどの機械は、残念ながら、
自然をリスペクトしていません。
人間も、もともと自然の一部だということを忘れて、
それを置き去りにしたまま生きていくとしたら、
明るい未来は想像できないと、ぼくは思います。
みんながもっと、考える必要がありますね。
こういう、犬だとか、ネイティブ・アメリカンは、
そのシンボル。それから自転車も。
そう、車ではなく、自転車なんです。
[ ーー ]
ああ、よくわかりました。
5つめのモチーフは「アンリさんの顔」ですね。

[ アンリ ]
あはは、そう見えますか?
これは、そう、ちょっと特別なシリーズで、
エスニックなテイストがあります。
自分に似たものと、自然が好きだとお話しましたが、
もうひとつ、とても好きなのが、
エスニックの文化です。
自然を大切に思うことともつながっていますが、
素朴なエスニックの、歴史を刻んだものには
とてもすばらしいものがあります。
昔のものはシンプルなものが多いけれど、
その質であったり色であったり、そういうのは、
なかなかいま、もう誰もつくれないんですね。
どんなに優れた機械を使ったとしても、
真似できるものではありません。
そういう、忘れてはいけないことを、
エスニックのテイストのモチーフが
いろいろ思い出させてくれると思っています。
どれもシンプルなものばかりですが、
こういうものから、使う人が何かを想像したり、
何か考えたり、思い出したりしてくれたら、
ハッピーだなと思うんです。
アンリさんの原点の色を。
[ ーー ]
それから、革についてお訊きします。
この手帳のカバーをつくるときに、
わたしたちは、
アンリさんの原点の色を選んでください、
とお願いしました。
そうして選ばれたのが、今回の5色ですね。
そのことについてうかがえますか。
[ アンリ ]
この革は、ケミカルなものは一切使われていない
タンニンなめしの革で、
100%自然由来の染料で染めてあります。
色の選択の幅はあまり広くはなくて、
一番ナチュラルな状態では、
このキャラメルに近い色をしています。
薄い茶色から黒までと、あとボルドー、
この5つのバリエーションがすべてです。

でも、原点の色をというリクエストをいただいて、
この5色に決めるのに迷いはありませんでした。
ぼくにとっては、この5色だけで十分なんです。
どれも、この革のよさをもっとも活かせる色。
もちろん、お客さまにとってはもしかすると
ほかの色のリクエストもあるかもしれませんが、
この素材のよさを引き出せるのは、
まちがいなく、この5色なんです。
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