
2009.11.25
革とのつきあい方は、ごくシンプル。愛情をもってどんどん使う。(4/5)
[ 籠浦 ]
汚れたら、乾いた柔らかいネルの布で拭きますけど、
余計な油をつけたりなんかはしないですね。
[ 糸井 ]
そのことによって、
何が得られて、何が得られないんですか?
[ 籠浦 ]
たとえば、色をもう少し濃くしたいな、
みたいなことがあるとしますよね。
自分の持ってるカバンとかベルトがその色だから、
もう少し濃くしたいっていうときは、
色を塗るのではなくて、ミンクオイルみたいなものを塗って、
色をちょっと落ち着かせるということは、あります。

[ 北川 ]
そうだろうな。
[ 籠浦 ]
でも、ふだんはまったく何もしないですね。
余計なことはいっさいしない。
[ 糸井 ]
はあー。革が乾燥してきたりしませんか。
[ 籠浦 ]
そのときは、保革油を薄めに塗ることはあります。
[ 糸井 ]
保革油。
[ 籠浦 ]
ミンクオイルとか、馬油とか。
そういうのを塗りますね。
[ 糸井 ]
つまり、それを早いうちに塗っておけば、
もっとよくなるんじゃないかと人は思うわけですよ。
[ 籠浦 ]
ぼくもそういう時期はあったんです、実は。
[ 糸井 ]
ああ、聞かせてください。

[ 籠浦 ]
革靴の底の部分に最初に塗っておいたほうが、
「かえり」がよくなるんじゃないかって思ったんですね。
[ 糸井 ]
で、で?
[ 籠浦 ]
たしかに馴染みが早くて、履き心地はよかったんです。
ただ、縫ってある糸とかがけっこう早めに傷んだりしました。
だから、今はやってないです。
[ 細井 ]
たぶん、即席にしたいんだと思うんですよ、きっとね。
早く馴染ませたい。
[ 糸井 ]
ああー。
[ 細井 ]
早く自分のものにしたいと思うんですけど、
基本的には、そんなに早くはじぶんのものにならない。
使って、しごいてこそ、じゃないですか。

[ 黒澤 ]
そう思いますね、ぼくも。
[ 糸井 ]
いや、思いがけず「手入れはしない」ということで、
4人揃っちゃいましたね。
でも、「何かしたい」という気持ちが、
ぼくはベースにあると思うんです。
買った、手に入れた、うれしい。
そこに、「買っただけじゃなくわたしは何かしたい」
っていう気持ちは、やっぱりあると思うんですね。
手入れは必要ないっていうことも、わかりました。
でも、最低限するとしたら、何をお勧めしますか、
という質問には、みなさん、なんと答えますか?

[ 籠浦 ]
ぼくは、ていねいにガンガン使ってください、
ということだと思いますね。
[ 糸井 ]
あぁ、それはいいことかもしれないですね。
[ 北川 ]
それと、もし何かするんだったら、
使った後に乾いた柔らかい布で拭く程度、っていうのが、
正しい革の扱い方だと思います。
[ 籠浦 ]
もし、汚れたらね。
[ 北川 ]
いや、汚れなくてもさ。
指紋があったら、ハンカチで拭くとかね。
いたわるってことかなっていう気がします。
[ 糸井 ]
大事にしてるという気持ちだけあればいいです、
っていうことですね、いわば。
[ 北川 ]
ええ、一番はそこだと思います。
[ 細井 ]
手帳って、持つところのポジションって、
だいたい決まるじゃないですか。
そうすると、手の脂がつく回数が多い箇所が、
ほかより色が変わってくるっていうことも
あるかもしれないですよね。
じぶんは何もしないんですが、
やっぱり全体を均一に経年変化させていく方法を
提案してあげたほうが、
お客さんはうれしいかなと思うんですよ。
で、乾いた布で拭くっていうのは、
たぶん、それを均一にしてあげる行為に
近いのかもしれないなと思うんです。
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