
2009.11.24
革についてもっと知りたい。糸井重里と革のプロたちの革座談会をお届けします。(3/4)
[ 糸井 ]
そういう時代に、
革にもいろんな考え方があると思うんですが、
「これがベーシックな考え方だよ」っていうのをまず知って、
そこからいろんなバリエーションを考えていくほうが、
やっぱり正しいんじゃないかと思うんです。
それは、ぼくらもよくわかっているわけではないので、
革にくわしいみなさんに、
「ああ、それは、もともとこうでね」というようなことを
うかがっていきたいなと思っています。
いま、まさしく「経年変化」の話が出ましたけれど、
その「経年変化」という言葉と、もうひとつ、「ヌメ革」。
このふたつの言葉が、
本当はどういうことなの? っていうのがないまま、
いま、ひとり歩きをしている気がするんですね。
じゃあまず、「ヌメ革」ってなんですか?
というところから、はじめましょうか。
ヌメ革って、なんですか?
[ 細井 ]
ヌメ革を、最初に世の中に有名にしたのは、
ルイ・ヴィトンだと思うんですよね。
[ 糸井 ]
なるほど。
[ 細井 ]
「フランスヌメ」と呼ばれる、
白っぽいベージュの革なんですけど、
あれがおそらく、日本のヌメ革の
スタンダードな解釈になったんじゃないかと思うんです。

▲細井潤治さん
[ 籠浦 ]
たしかにそうかもしれませんね。
そのあと、ヌメ革をメインに扱うブランドも出てきて。
[ 糸井 ]
ヌメ革っていうのは、
染めてないベージュ色の革のことだというふうに、
いま、一般的に思われていますよね。
[ 細井 ]
でも、本来のヌメ革っていうのは、
あの「色」をさすものではないわけでしょう?
[ 籠浦 ]
ええ、「タンニンなめしの革」であるのが大前提ですね。
[ 細井 ]
ケミカルじゃないほうですね。
[ 籠浦 ]
そうです。
タンニンでなめして、もともとは、染色もしていない、
素材の自然のままの色の革を、「ヌメ革」と言ってたんです。
そこから、最近では意味が広がってですね、
「タンニンなめし」をした革で、
後で色をつけているものも「ヌメ革」と呼ぶ、
ということになっていますね。

▲籠浦兵衛さん
[ 糸井 ]
それは、定義みたいなものが変わったんですか。
[ 籠浦 ]
定義がかわったというか、小売業の都合なんですけどね。
[ 細井 ]
そうそう、そうですね。
[ 糸井 ]
ええ(笑)?
[ 細井 ]
そのほうが売りやすいからですよね。
[ 糸井 ]
ああー。
[ 籠浦 ]
「ヌメ」という、耳障りのよさを、
みんなが便利に使ったんだと思うんです。
[ 糸井 ]
「無添加」、みたいなことですか、いわば。
[ 北川 ]
そうですね。
で、先ほど細井さんがおっしゃったように、
ブランドから入ってきたイメージも強くて、
わかりやすく定着してしまったんでしょうね。
[ 糸井 ]
なるほど。
[ 北川 ]
革の歴史をさかのぼれば、
そもそもヌメしかなかったわけですよ。
革って、最初は何に使ったのかというと、
ヨーロッパでいえば、馬具ですとかね、
そこからスタートするわけですが。
[ 糸井 ]
なるほど、はい。
[ 北川 ]
動物の皮は、そのままだと腐りますから、
どうしたら腐らなくなるのか、
皮を腐らなくする方法として、
自然にある植物の渋を使って
「なめす」という方法が発見された。
原点はそこだと、ぼくは思うんです。

[ 糸井 ]
ははぁ。
[ 北川 ]
さらにさかのぼると、
毛のついた状態でそのまま敷物にしたりとか。
[ 糸井 ]
いわゆる毛皮ですね。
[ 北川 ]
ええ、そうですね。
で、そのときには、腐らなくする方法も、
乾燥するしかなかったはずなんです。
[ 糸井 ]
固かったでしょうね、もっと。
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