
2009.11.24
革についてもっと知りたい。糸井重里と革のプロたちの革座談会をお届けします。(4/4)
[ 北川 ]
腐ることもあったし、臭かったと思いますね。
[ 糸井 ]
そういえば、革製品って、
昔はもっと臭かった覚えがありますね。
[ 北川 ]
「皮」から「革」って、よく言うんですが、
なめす前を「皮」、なめしたものを「革」と、
漢字を使いわけてるんですね。
腐らなくするためになめす工程を経ることで、
皮革の「革」になるんです。
[ 糸井 ]
なるほど。
「ヌメ革」という言葉の定義ということになると、
じゃあ、元来のものからは、
違うものにさしかわっちゃってるということですか。
[ 籠浦 ]
いまは「タンニンなめし」イコール「ヌメ」、
色がついているかいなかにかかわらず、です。
そこに定着していますね。
[ 北川 ]
たぶん、色を染めることと加工することを
分けて考えないといけないと思うんですよね。
[ 糸井 ]
というと?
[ 北川 ]
革をどのような仕上げにするのか、
柔らかくするのか、
自然のままにするのかというようなことと、
革を染めるっていうのは、
別問題だとぼくは思うんですよね。
それがいっしょになって語られることで、
わかりにくくなっているというのが、
今の現状だと思うんです。
[ 籠浦 ]
たまに、なめし方を関係なくして、
ベージュの色の革というだけで
「ヌメ」と書いてしまっているものもありますね。
[ 細井 ]
そのとき、クロムだったりコンビネーションだったり、
ケミカルな加工を施しているとすれば、
ベージュ色をしていても、
「ヌメ革」というのは言葉として正しくないですよね。

[ 北川 ]
そうですね。
[ 細井 ]
だから、色が変わらない「ヌメ革」というのはないわけで。
[ 籠浦 ]
そうですね。
ただ、色が変わるかどうかでいうと、
コンビなめしの革もタンニンが含まれているので、
もちろん変化するんです。
なめしの段階で革に含まれたタンニンと
紫外線が結びついて色が変わるので、
タンニンの量が多ければ、変わる度合いも大きいし、
変化のスピードが早かったりするんですけど。
[ 細井 ]
うん、そうですよね。
[ 籠浦 ]
それと、今年のタンニンなめしのカバーの場合だと、
フルタンニンで、いわゆる「ヌメ革」なわけですけど、
じゃあ、これが色が濃くなっていくかっていうと、
そういうことではないんです。
濃色がついているので、色が濃くなるというよりは、
よぶんについてる顔料が落ちていって、
透明感が出てくるんですよね。
[ 糸井 ]
ああ、それも愉快ですね。
[ 籠浦 ]
ぼくがいま使っている手帳カバーは、
はじめて担当した2007年版で、
これは、タンニンとクロムを併用した
いわゆる「コンビなめし」のものなので
まったくいっしょではないんですが、
こんな具合に、透明感が出てくるはずです。
[ 糸井 ]
ちょっと見せてもらってもいいですか?
[ 籠浦 ]
どうぞ。

[ 糸井 ]
(手にとりながら)
これは、いい感じですねぇ。
[ 細井 ]
ほんと、いい感じですね。
丸くなって、こう、角がなくなって。
[ 籠浦 ]
自分の厚さになって、
丸くなって、透明感が出て、っていう。
ぼくは「経年変化」って、
こういうことをいうんだと思ってるんです。
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みなさんのお話を聞きながら、
わたしたちも、「へえぇー」と思ったり、
「うんうん」とうなづいたり。
「革」座談会はまだまだつづきます。
明日の後編も、おたのしみに。