2009.10.30
カズン待望のファブリック、「マキノコレクション」牧野隆司さんインタビュー(2/3)

[ ーー ]
あ、釣り糸といっしょと思えば、 なんとなく想像できます。

[ 牧野 ]
モノフィラ、正確にはモノフィラメントといいますが、 糸って、通常はフィラメント、 要するに、細い糸を何本も束ねて 1本の糸に縒った状態なんですね。
それに対してモノフィラというのは、 1本で形成してる糸なんです。
通常の糸は束ねてあるために、 白っぽく、不透明になるんですよ。

[ ーー ]
なるほどー。
で、モノフィラは1本だから透明感がある、と。


[ 牧野 ]
そう。糸に透明感があることによって、 色をつけると、ちょっと光沢感が出てくるんです。
組織との組み合わせにもよりますが、 光沢感が、こう、出てくる。

[ ーー ]
それも、いかにも光ってるって感じじゃない、 シックな光沢ですよね。

[ 牧野 ]
そうです、そうです。
ぼくらの表現では、「底光り」と言ってるんですが。

[ ーー ]
底光り、ですか?

[ 牧野 ]
ファッションの仕事をしていると、 いろいろと、無理難題なリクエストがあるんですね(笑)。
光沢感はほしい、でも、 いかにも光ってますよというのではなく、 底光りがほしい、と。
底光りって、どないしたらええの?
っていうことなんですけど、まあ、 どうしたらできるだろうかと、いろんなテストを重ねて。
これは、透明感のある糸を組織のなかに隠して、 内側から光を出していく。
ミクロの世界ですが、組織の隙間から光を出すことで、 この光沢感、底光りが実現できたんです。

[ ーー ]
「パープル・ストライプ」と「ゴールデンブラック」、 同じモノフィラですが、印象がちがいますね。
こちらの「パープル・ストライプ」は 紫のグラデーションが人気で、 待っていてくださる方も多いんです。

[ 牧野 ]
うれしいですね。


[ 牧野 ]
「パープル・ストライプ」は、 縦糸に色糸を使い、グラデーションの柄を作っていて、 横糸には何も染めてない、透明の糸を使っているんです。
そうすることで、なにか濡れてるような光沢感が出て、 上に膜を張ってるようなイメージなんですね。

[ ーー ]
なるほど、うん、わかります。
もうひとつ、「ゴールデンブラック」のほうは、 見る角度で、色の見え方が違うのが とても不思議なんですが。

[ 牧野 ]
ああ、「ゴールデンブラック」のほうは、 黒と色の反射効果をねらって、底光りさせてるんです。


この生地は、縦糸が黒い糸なんですが 縦糸が黒のときに、横糸に色を持ってくると、 反射効果が出て、横糸の色、 この場合は、オレンジイエローの色ですね、 それがより引き立ってくるんです。
かつ、この生地は組織が斜めに走っていってますから、 こう、向きを変えると色が違って見える。

[ ーー ]
へええ、おもしろいですねえ。

[ 牧野 ]
ほんとはこの生地、最初は黒と白だったんですよ。
糸が硬くて、染まりづらいということで、 黒と白の糸の2種類しかなかったんですね。
で、本来は先染めの生地なんですが、 横糸に色をつけるために、先染めで作った生地を、 さらにもう一度加工場に入れて、 後染めするということをしているんです。

[ ーー ]
それは、すごい人の手がかかっているという‥‥

[ 牧野 ]
通常は、先染めは先染め、後染めは後染めでやるのが 順当なやり方で、 こういうことはあまりやらないんですけど。

この横糸を染めたっていうのは あるブランドのデザイナーのアイディアで。
もともとの、黒と白で織った生地を見せたときに、 「横糸を染めてよ」と。
横糸だけで、そんなに色が変わるのかなと、 最初はね、思ってたんです。
でもまあ、ひとつのアイディアとしてやってみようかと 実際に色を変えてみると、それぞれ色が違って見える。
それによって、より高級感が増してきた というところがあります。

[ ーー ]
モノフィラの生地は、ファッションでは どんなものに使われてるんですか?

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