
2009.10.06
革カバーのご質問に、革のプロがお答えします。(2/3)
[ ーー ]
そうすると、ピッグスキンは、
いまの発色のまま長く楽しめて、
逆に、もっと経年変化をたのしみたい方には
タンニンなめしの牛革がおすすめ?
[ 籠浦 ]
そうです、そうです。
それぞれに良さがあるんです。
ピッグスキンについてもうひとつ言うと、
クロムなめしはタンニンなめしに比べて、
表面にキズがつきにくいという利点もあります。
だからたとえば、女性のバッグなどのように
変わらずきれいに使いたいものに向いているんですよ。
[ ーー ]
高級ピッグスキンだけど、
そういう意味では、気軽に使えるんですね。
TSブラックも、クロムなめしですか?
[ 籠浦 ]
そうです。
ああいうやわらかさ、しっとりとした質感は
タンニンでは出せないんです。
やわらかさが必要なもの、たとえばジャケットなど、
衣料品に使われる革は、ほとんどがそうですし、
市場に出ている革製品の9割か9割5分は、
クロムなめしの革製品です。
タンニンにもクロムにもそれぞれの良さがあって、
目的によって使いわけているんですが、
植物由来のタンニンなめしは
環境にやさしいということでも近年見直されて
クローズアップされています。
Q.
「タンニンでなめした革をヌメ革と呼ぶ」
という説明を他で読みました。
2010年のタンニンなめしの牛革カバーは、
「色の着いたヌメ革」ということですか?
[ 籠浦 ]
そうですね。
ヌメ革というのは、タンニンなめしの革を
表面加工をせずに仕上げたもので、
今回のタンニンなめしの牛革カバーは
ヌメ革と同じつくり方をしています。
もともとは、染色もしないナチュラルな色の革をさして
ヌメ革と呼んでいたんですが
いま、一般的には、色をつけたものも
ヌメ革と呼ばれるようになっています。
ただ、ヌメ革の特徴に
日に当たると色が濃く変化するということがありますが、
今年のカバーは
グレープ、マスタード、オレンジレッドと
どれも濃いめの色に染めているので、
ナチュラルな色、仕上げのヌメ革ほど
目に見えて色が変わっていくということは
ないんじゃないかと思います。
Q.
「タンニンなめし」の牛革カバーは、
以前の「タンニン仕上げ」のカバーと、
どんな違いがありますか?
[ ーー ]
こちらは、2007年、2008年版の革カバー、
「牛革タンニン仕上げ」のカバーを
お使いの方からのご質問です。
今年の「タンニンなめし」の牛革が
植物から抽出した渋(しぶ=タンニン)だけで
なめしているのに対し、
「タンニン仕上げ」と名付けた以前のカバーは、
クロムなめしで下処理した牛革を、
タンニンで仕上げたもの、でしたね。
[ 籠浦 ]
そうです。ぼくらの言葉でいうと、
今年のタンニンなめしの牛革のように
タンニンだけでなめしたものを
「フルタンニン」と呼んでいます。
以前の「タンニン仕上げ」のほうは、
「コンビなめし」と呼んでいる方法ですね。
じつは、ぼくが使っているこのカバーが
ちょうど2007年版の
「牛革タンニン仕上げ」なんです。
自分がはじめて取り組んだ手帳カバーということで
とくに思い入れがあって、使いつづけているんです。
[ ]

[ ーー ]
今年いただくお問い合わせには
革の経年変化の度合いについてのご質問が
多いのですが、いまのお話によると、
コンビなめしの「タンニン仕上げ」に比べると
今年のタンニンなめしのほうが
経年変化は大きい、ということになりますね。
[ 籠浦 ]
そうです。
とくに色の変化は、革が含んだタンニンが
紫外線と結びついて起こるものなので
タンニンの量がより多く含まれる革のほうが
変化は大きいということになります。
お使いになる環境や使いかたにもよりますが、
コンビなめしの「タンニン仕上げ」のほうは
タンニンなめしの革よりも、
より変化がゆっくりだ、と思っていただくと
いいんじゃないかと思います。
Q.
革は使い込むほど変化するようですが、
具体的にはどう変わるのでしょう。
濃い色目は、褪せて薄まるのでしょうか?
[ 籠浦 ]
色が褪せて薄まる、ということではないですね。
最初のうちは表面の顔料が少し落ちていくと思いますが、
色が薄くなるという程度ではなくて、
余分な顔料が落ちて定着していくという感じです。
ぼくが使っているこの「牛革タンニン仕上げ」のカバーは
2007年から使い続けて、今年で3年目なんですが、
こんなふうに透明感が出てます。
ツヤが出て、丸みが出てきて、
こう自分の形になってくると、
愛着も増して、なかなかやめられません。
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