たった20年で、この小箱が。
・かつて、長い休暇で南の島に行こうなんてときには、旅行鞄はとんでもなく重かった。旅先で、本は読みたいに決まっているから、それを選ぶ。少なくしようとしても10冊以上にはなってしまう。音楽にしても、カセットテープをいくつも入れる。これだって、けっこうな体積になるのだ。その後、CDの時代になってもなかなか悩ましかった。さらに、その音楽を流すための道具が要る。カセットでもCDでも聴くには電池が必要だったから、乾電池も持っていったほうがいいとも考えた。ここまで記したものだけで、大きなトランクは満杯だ。隙間に水着やらサンダル簡単な着替えなどを詰めて、うんうんいいながら空港に向かったのだった。その後、しばらくはこのセットに、さらに重たくてでかい「パソコン」が加わっていた。
ここまで読んでるだけでもうんざりするよね。ぼくも書いていて、よくやってたもんだと呆れるよ。でね、そのうんざりのうちの、海パンとサンダル以外は、いまじゃあ、すっかりちっちゃな箱に収まってるんだ。かつての「大荷物」は、まるごとポケットに入っている。そうだよ、「スマホ」とか呼ばれてるものさ。本、10冊20冊なんてケチなこと言わないで、何万冊だって揃った図書館ごと運んでるんだ。音楽にしたって、世の中の人に知られてる曲は、ぜんぶこのなかに入ってるとさえ言えるだろうよ。さぁ、「カメラ」も「財布」も入れてしまおう。そして、なんと「映画館」だって入ってるんだぞ。乾電池も買いだめしなくていい。そんでもって、いいかい、この「スマホ」ってやつは、世界中に向けて電話だってできるんだぜ。手紙を書きたかったら、それもできてすぐに送れる。書いた手紙は、すぐに相手も読めちゃうんだ。
こんな魔法の道具があったらいいのにと空想していた。その空想をさえ上回った「スマホ」なんてものがあるんだ。だれだって欲しがって、夢中になるに決まってるよ。たった20年で、こういうことになっちゃったんだよなぁ。
今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。幼児の「離乳」みたいに、「離スマホ」も考えなきゃなぁ。