糸井重里のコラム
2025-12-23
うまく言えない。

・「うまく言えない」ことを大事にしてほしい。若い人にばかりでなく、働きざかりの人にも、老人にも、赤ちゃんにも、じぶんにもそう言いたい。

立て板に水とか、プレゼンテーションの名人とか、そういうのは、仕事上の技術としてはあるだろう。アナウンサー口調というのも、聞きやすいし、それはそれで訓練のたまものだ。

なんでもうまく説明してくれる人も、ありがたい。たぶん、その人は、考えて考えてきたのだ。そして、相手の理解に合わせて、じぶんの考えたことを伝えてくれる。これは、とてもありがたいのだ。

しかし、あなたが(ぼくが)、「うまく言えない」と思うことがあるなら、その「うまく言えない」ところを、うまく言おうとするのを、いったんやめておいて、「そのまま」をキープしておこうよ。

「正解」みたいなことばに、うまいことまとめてしまうのは、いったんがまんしよう。そういうことが得意な人ならいるさ。いちばん得意なのはAIだろうと思うけどね。

でも、「うまく言えない」思いのかたまりだか、けむりだか、匂いだかを、「胸に持ってる」と感じるのは、たぶん人間だからじゃないかな。

「うまく言えない」ことは、いずれ、別のかたちで姿をあらわすかもしれない。夢のなかから、別の人のことばから、風のなかから。そいつが、見つかったら大いに笑おうや。

今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。ぼくは、たぶん、「うまく言えない」が得意な人間です。

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