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第6回 出さなかった禁煙日記。
吸うのも、やめるのも、面倒くさい。
やめたのにまた吸いはじめるっていうのは、もう、最高に面倒くさい。

[糸井]
そうだよねぇ。
そんなところかなぁ。
[永田]
ありがとうございます。
[糸井]
なんか、いろいろ忘れてるなぁ。
きっと、もっといろんなことを言えたんだろうね、禁煙しようとしてる最中はさ。
まぁ、ともかく、ぼくの奥の手は、
「おっぱい理論」ですから、それさえ、言えればOKなんですけどね。

[永田]
あ、じゃあ、最後に、ぼくの奥の手を見せますよ。
[糸井]
ん?
[永田]
ちょっとすごいですよ、この、奥の手は。
(分厚い紙の束をドサッと机に置く)
これです。
[糸井]
‥‥なに?
[永田]
糸井さんの禁煙日記です。
[糸井]
え?
[永田]
つまり、7年前の原稿です。
こんな量になってたって知ってます?
[糸井]
‥‥知らない。
当時、しゃべったこと?
[永田]
じゃなくて、書いたやつ。
[糸井]
‥‥知らない。
[永田]
糸井さん、毎日書いてたんですよ、禁煙日記を。
[糸井]
知らない。
[永田]
ははははは。
[糸井]
(紙の束をめくりながら)
‥‥すごい長いじゃん。
[永田]
ぜんぶ、あなたがお書きになったことです。
[糸井]
え、日を分けて書いてるの?
[永田]
分けてもなにも、毎日書いてました。
[糸井]
うそ。
[永田]
ほんと(笑)。
[糸井]
‥‥‥‥ほんとうに忘れてる。

[永田]
1ヵ月半、毎日書いてます。
そのあと、不定期になって、けっきょく2ヵ月続いてます。
[糸井]
(ぺらぺらめくりながら)
2ヵ月も。
[永田]
そうとうな量ですよ。
[糸井]
‥‥びーっくり!
[永田]
はははははは。
最初のころは、吸いたくなったら書くことにしていたみたいで1日の文章量がすごく長いんですけど、だんだん短くなっていくんです。
[糸井]
じゃ、ほんとに、禁煙の苦しみに比例して。

[永田]
そうそう。
[糸井]
いや、これ、奥の手どころじゃないね。
びっくりだよ‥‥。
[永田]
これをつけようと思ったときの気持ちを覚えてます?
[糸井]
まぁ、本にしようと思ったというか、かならずなにかになると思ったからだろうね。
[永田]
糸井さん、喘息の治療のときに、日記をつけてたことが役だったっておっしゃってましたね。
[糸井]
それもおなじです。
なにかをはじめたりやめたりするときは変化を語るだけでおもしろい。
[永田]
実際、これ、おもしろいんですよ。
[糸井]
(ところどころ拾い読みしながら)
‥‥‥‥おもしろいねぇ。
「日記つけてるから吸わずに済んでる」
って言い方してるわ。
いや、記録ってすごいな。
残しとくもんだねぇ。
[永田]
でも、ここまで忘れてるとは思いませんでしたよ。
見せたら「あー、あれか!」ってなるのかと思ってた。
[糸井]
いや、まったく覚えてないよ、オレ。
読んでると、たしかに自分の文章だなってわかるんだけど。
いや、ここまで自分のやったことをキレイに忘れてることってないかもしれない。
[永田]
たぶん、糸井さんの状態がちょっとふつうじゃないでしょうから。
[糸井]
そうだねぇ。
「ガムを噛みすぎて、口の中が傷だらけだ」だって。

[永田]
生々しいんですよ、とにかく。全編にわたって。
[糸井]
‥‥はーーー。
あ、ここで「犬!」って書いてる。

[永田]
そうそう、ブイヨンと出会ったころ。
[糸井]
いや、まいったな。
これは、永田くんに送ってたの?
[永田]
そうです。
コンテンツにしようっていうことで、ふたりで進めていたので、ぼくにあてて毎日送ってたんです。
[糸井]
じゃ、永田くんだけが読者で。
[永田]
結果的には、そうですね。
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