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第3回 3つの動機と、ニコチンパッチ。
そう。
[永田]
ちなみにぼくの禁煙の直接のきっかけも、海外への取材旅行でした。
シルク・ドゥ・ソレイユの取材に行く一向のなかで明らかに自分しか喫煙者がいないっていうんで、とりあえずそこを吸わずに乗り切って、そのまま今日まで続いているという。
[糸井]
あー、そうだったね。
[永田]
そういう、
「みんなに迷惑をかけない」みたいなことってけっこうな動機になりますよね。
[糸井]
なる。
とくに、自分が上の立場になるとね。
そう、ぼくのもうひとつの動機は、経営者としての責任みたいなものだからね。
ひょっとしたらそれが最大の動機かもしれない。
[永田]
はい。
ぼくも、糸井さんの禁煙を見守って、いちばん大きな動機はそれだと感じてました。
つまり、社長だからやめるっていう。
[糸井]
うん。わかりやすい例をあげると、禁煙の会社がどんどん増えていって、ミーティングが禁煙になるんですよ。
そうすると、ぼくは、ミーティングを抜けだそうとするわけ。

[永田]
ああー。
[糸井]
で、Aにするか、Bにするか、っていうふうに意見が割れたときに、
「もうどっちでもいいや」
って気持ちになるんですよ、吸えないと。
[永田]
「早く終われ」と。
[糸井]
「早く終われ」と思っちゃうわけ。
これはダメでしょう。
[永田]
まずいですね。
[糸井]
ものすごくまずいな、と。
[永田]
うん。
[糸井]
吸いながらだったら、
「オレはBで譲らないよ」って言えるんだけど、吸えないし、終わらないし、ってなると自分の意見が変わっちゃうわけだよね。
そうすると、煙草のために、自分の筋を曲げなきゃなんない。
そんなだらしないやつにオレは仕事頼まないな、って自分で思って。
[永田]
うん、そうですね。
[糸井]
だから、社長として。
[永田]
禁煙。
[糸井]
うん。
[永田]
いま、つらつらっと動機が3つ語られましたけど、どれもすごく納得できますね。
最初が、「親としての動機」。
ふたつ目が、「男としての動機」。
最後が、「社長としての動機」。
どれも、現実的な問題として。
[糸井]
あー、そうだね。
人によって、それはいろいろだろうけど、そういうことが重なって、
「やめるべきだ!」というよりは、
「やめられるものだったらやめよう」
っていう感じになっていくんだよね。
[永田]
そうですね。
禁煙の方向へ押し出されるように。
[糸井]
うん。
まずは、やめる気持ちが固まった。
それで、やめる方法を探してみたら、パッチを貼って、ニコチンを注入しながらやめる方法があった、と。
[永田]
そうですね。
結果的にその方法が成功するんですが、その、パッチを貼るという方法は、どうでした?
[糸井]
ま、タバコはやめてるんだけど、ニコチンは入ってるっていう状態にして、徐々にニコチンを減らしていくやり方ですよね。
それは、なにもせずに自力でやめるよりは、ずいぶん、らくでした。
[永田]
なるほど。
[糸井]
もちろん、らくって言っても、らくじゃないですよ?
ニコチンのパッチを貼ったって、苦しいし、吸いたいし、いやだし、犬が飼いたくて泣いたりしてるわけですから。

[永田]
そうですね(笑)。
[糸井]
ただ、パッチを貼ってると、たとえニコチンを摂取しているとはいえ、
「自分がタバコを吸ってない日」っていうのが1日ずつ、増えていくんですよ。
これはね、上達の喜びなんです。
[永田]
あーー、「上達」(笑)。

[糸井]
そう(笑)。
もちろん、ニコチンが入ってるんだから中毒の状態から抜けてないともいえるんだけど、オレはそのへんポジティブだから、
「3日も吸ってないよ!」っていうのがむちゃくちゃうれしかったりするんですよ。
[永田]
はいはいはい。
[糸井]
で、貼ったパッチは、だんだんちっちゃくなっていく。
[永田]
たしか、大、中、小って、あるんですよね。
[糸井]
そうそう。
で、ちっちゃくなるまで、けっこう時間がかかるんだよ。
[永田]
つまり、ニコチンが必要なくなるまでに。
[糸井]
簡単じゃないよね、やっぱり。
中毒から抜けるわけだから。
それでも、1日ずつ上達していくのがうれしくて。
最初は、ひと月経ったらもう成功だろう、なんて甘いことを思ってたんだけど、ひと月経ってもできた感じがしなかった。
こう、まだまだ自分を信じないぞ、みたいな。
[永田]
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