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第1回 糸井重里、禁煙8年目。
[糸井]
そうそうそうそう。
ぼくの場合、わかりやすいのは、
「独身の日」みたいな状況ね。
つまり、家人も犬もいない日があって、その日は自分ひとりなわけ。
それはね‥‥訪れるね。

[永田]
ああ、訪れますねぇ。
ぼくは、たとえば、大きなインタビューが終わった瞬間。
[糸井]
あーー(笑)。
[永田]
「おつかれさまでした!」って現場が終わった瞬間は‥‥訪れます。
[糸井]
訪れるねぇ(笑)。
あと、なんだろな、いくつかあるんだけど。
[永田]
細かいところでは、出張の新幹線のなかで駅弁を食べ終わってあの、座席の机をパタンと戻して、さて、デッキで一服‥‥。

[糸井]
あああ。
[永田]
それから、真冬のラーメン屋。
武蔵とか、よく行くラーメン屋さんを
「ごちそうさま」って出た瞬間。

[糸井]
そういうのは、もう、しょうがないよね。
[永田]
しょうがないです。
[糸井]
(タバコを吸ってる)夢は?
[永田]
見ましたし、いまも見ます。
[糸井]
ぼくも、つい最近見ましたよ。
2ヵ月くらい前かな。
夢の中で、「やぁっちまったぁー!」。
[永田]
やっちまったぁーってなりますよね(笑)。
そうそうそうそう。
最近見る夢は、だいたい吸ったあと。
[糸井]
そうそう、吸い殻を見て、
「ありゃー!」ってなるの。
[永田]
あの、話しましたっけ?
ぼくが、タバコをやめた当初に見たおかしな夢。
[糸井]
いや。
[永田]
やめてるときって、体が、あの手この手で、夢の中の自分にタバコを吸わせようとするじゃないですか。
でも、夢の中の自分って、けっこう現実っぽく振る舞うから、ふつうには吸わないんですよ。
夢の中でも必死に我慢しちゃう。
[糸井]
そうそうそう。
[永田]
そんなときに見た夢なんですけど、こう、あたり一面、霧で真っ白なんですよ。
もやーーーっとしてる。
で、そこに知り合いが何人かいて。
[糸井]
うん。
[永田]
その霧をよく見ると、あちこちで、パチパチ、パチパチって、線香花火みたいな火花が起きてるんですよ。
で、そばにいた誰かが
「この霧はね、火に触れると キレイな火花を散らすんだよ」
って教えてくれる。
で、ぼくが「へー!」って驚くと、その人がスッとタバコとライターを取り出して、
「やってみる?」って。

[糸井]
はははははは!
[永田]
で、ぼくは、「あ、ありがとう」つって、くわえてシュボって火つけてパチパチってなる火花を見て
「ほんとだ‥‥‥‥うわぁあ!」って。
[糸井]
おもしろい(笑)。
あなたの体はさ、あなたの性格をほんとによくわかってるね。
[永田]
はははははは。
[糸井]
こんなときに吸いたくなるっていうシチュエーションの話は、ほんとはもっとあるんだろうなぁ。
[永田]
ありますよね、きっと。
[糸井]
あと、やめたあとは、
「自分が吸う人だったら、 ここは面倒くさかっただろうな」っていうシチュエーションがたくさん目につくよね。
もう、わかりやすいところでいうと飛行機の中とかね。
[永田]
そうですね。
[糸井]
だってオレ、外国行くのいやだったもん。
[永田]
やめたころの糸井さんの話で覚えてるのが、よその会議室とか社長室で、
「オレにだけ灰皿が出てくるんだよ」って。
[糸井]
そう、あれはいやだったな。
ほんとは禁煙なんだよなっていう場所で、自分にだけ灰皿が出たりする。
‥‥ああ、思い出すなぁ。
[永田]
そう、けっきょく、そういう現実的な問題の積み重ねなんですよね。
なんか「健康のために」とかいう大きな動機ではなかなか難しいんだけど。
[糸井]
うん、うん、そうだね。
[永田]
当時の糸井さんの話でよく覚えてるのが、職場を禁煙にするかどうか、みたいな話をしてるときに、
「きみらがつかってる灰皿を 誰が洗ってるか知ってるか?」
って言ったんですよ。
「あれは、毎朝、モッキー(総務の元木)が 洗ってるんだぞ」って。
[糸井]
あーー。
[永田]
あれはグサッときましたね。
モッキー、タバコ嫌いに決まってるし。
[糸井]
それは、社長としては、いいセリフだねぇ。
[永田]
はい(笑)。なんていうか、
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