[小田社長]
「雪やこんこ」なんかも‥‥。
[──]
ココア味のビスケットにホワイトチョコレートをはさんだお菓子ですね。
これから派生した「雪こんチーズ」もすごく、おいしかったです。
直営店でしか手に入らない
「賞味期間2時間」のお菓子ですから、ここに来る前に、本店によって食べてきました。
[小田社長]
‥‥ともかく、その「霜だたみ」や「雪やこんこ」もそれくらいの売上になってきてるんだけど、やっぱまだうちには「4番バッター」がひとりだけ。
この状況を、今後、どうにか変えていかないと。
[──]
新製品というのは、どれくらいの頻度で出ていくものなんですか?
[小田社長]
それは、わからないですね。
ポポーンと次々にいけるときもあるし、挫折して、寝てるやつもいるし。
しばらく寝かしといたら、また思いがけないヒントが見つかったり‥‥もう、それぞれですよ。
[──]
先ほど、とらやさんの「進取の精神」という話が出ましたけどそういうときに六花亭が「ファッション性」を追うこともあるんでしょうか。
[小田社長]
それは、ありますよ。
[──]
たとえば‥‥。
[小田社長]
最近で言うと‥‥何だろうな。
ああ、よく「かわいーっ!」という種類のお菓子ってあるじゃないですか。
ぼく、あんまり好きじゃないんだけど。
[──]
女の子っぽい「かわいーっ!」ですか?
[小田社長]
そう、で、その一方で、六花亭のお菓子に
「大平原」というマドレーヌがある。
[──]
はい、ございますね。
袋を開けた瞬間に、バターの香りがパァーっとひろがる、あの‥‥。
[小田社長]
40年以上前、私の父、つまり先代の社長が2年もの歳月をかけて、作りあげたお菓子なんです。
で、ぼくも好きで、よく食べるんですが、われわれが思ってるほどお客さまから、評価されてないんですよ。
[──]
「大平原」が? それは意外です。
[小田社長]
どうしたらいいかなぁって思案してるときにたまたま百貨店を歩いてたら何かこう、小さい、ポロポロっとしたものが‥‥。
[──]
ポロポロっとしたもの?
[小田社長]
いやね、ともかくも、小さくて「かわいーっ!」って感じのお菓子が袋詰めになってるのを見て、待てよ、「大平原」をひとくちサイズに小さくしたらどうなるだろうと思って、作ってみたら‥‥。
[──]
ええ、ええ。
[小田社長]
日ハムがパ・リーグ優勝したときに百貨店に記念品を頼まれたんで、そのときに作ったら、ぶわーっと売れちゃったんです。
[──]
ちっちゃい「大平原」が。
[小田社長]
小袋に入れた「大平原ミニ」って言うんですけど。
で、うちの社員たちもね、
「うわあ、かわいーっ!」て食いつくんですよ。
[──]
大成功だったわけですね。
[小田社長]
でもね、あれは、お菓子としては一切妥協してないんだけど、
「売りかた」としてはすこーし、流行にたいして媚びがあったかなあ‥‥ってね。
もちろん、許される範囲だろうなと思ってやったことなんですけどね。
[──]
でも、お客さんが喜んでくれるんだったら、よかったんじゃないんですか?
[小田社長]
いや、でもね、
「大平原」みたいなマドレーヌってのは本来は「手で割って」食べるべきお菓子だと思うんですよ。
[──]
ひとくちで、ぱくっといくよりも。
[小田社長]
理屈から言ってもね、小さいやつより、大きいほうがおいしいはず。
[──]
はー‥‥そういうものですか?
[小田社長]
だって、大きいほうがムックリ焼ける。
[──]
ムックリ?
[小田社長]
何というか、大きければじっくり火が通せるからより風味豊かに焼けるんです。
[──]
なるほど。
[小田社長]
小さい場合は、すぐ火が入っちゃうから、大きいのに比べたら、しっとりしないはずなんだ。
[──]
なるほど‥‥。
[小田社長]
もちろん「大平原ミニ」それ自体については100%、納得して出していますけどね。
今のはあくまで、比較したときの話ですから。
[──]
今日は「なぜ六花亭は人気があるのか」を知りたくておうかがいしたのですが、こうして、小田社長の「お菓子のお話」を聞いているとなんとなく、その理由がわかったような気がします。
[小田社長]
そうですか?
[──]
読んでくれている人にも、うまく伝えられると、いいんですが。
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