[──]
ええ、ええ。

[小田社長]
非常にデリケートなお菓子だから、外的な条件に、影響されやすかったんですね。

[──]
はい。

[小田社長]
そこで、外的条件が変わってもなるべく味が変わらないようにする「ひと工夫」を、この春に、ほどこしたわけ。

[──]
そうだったんですか。

[小田社長]
お客さまによって、お菓子の扱いがちょっとブレちゃったとしてもクオリティにバラつきがでないよう、安定させたんです。

[──]
今、マルセイバターサンドの年商は‥‥。

[小田社長]
80億円くらいですかね。

[──]
今みたいに、六花亭のメイン商品になったのは、いつごろのことだったんですか?

[小田社長]
昭和60年代かな。
気がついたらホワイトチョコレートを超えてた。

[──]
気づいたら。

[小田社長]
でもおもしろいのはね、全国的に見たときでもお菓子単品の売上額って、だいたい80億円くらいで頭がそろってくるの。

[──]
とおっしゃいますと?

[小田社長]
たとえば、伊勢の赤福さん。



[──]
ええ。

[小田社長]
ピーク時、だいたい80億円くらいだったの。

[──]
あ、そうなんですか。

[小田社長]
それから、石屋製菓さん。

[──]
「白い恋人」ですね。



[小田社長]
あちらも、だいたい80億円。

[──]
で、マルセイバターサンドも80億円。

[小田社長]
その3つが、単品の売上では上位なんだけど。

[──]
へぇー‥‥。

[小田社長]
だからね、マルセイバターサンドはおみやげ品としてつくったんじゃないんだけど、
「おみやげ品」には最大マーケットサイズというのがあって、それが80億円くらいなんだ、不思議なことに。

[──]
そこが「天井」なんでしょうか?

[小田社長]
うーん‥‥天井だと思いたくはないんだけど、なぜか、そういうことになってるんだな。



[──]
これ以上には、ならないんでしょうかね?

[小田社長]
わからない。

[──]
北海道大学出版会から出ている『北海道の企業2』という研究書っぽいカタめの本に
「北海道内でだけで展開する六花亭は 売上高が100億円を超えたとき、 もうマーケットの拡大は 見込めないと感じたという」
と、書かれていたんですが‥‥。

[小田社長]
ええ。

[──]
今や、100億円は超えていますよね?

[小田社長]
六花亭全体でいうと、年に180億円。

[──]
その規模というのは‥‥。

[小田社長]
同業他社さまでいうと、とらやさんが、180億円くらいですよね。

[──]
あの羊羹の、とらやさん。

[小田社長]
全国にお店を展開してらっしゃいますから単純な比較はできないと思うんですけども。

[──]
今も売上は、伸びているわけですよね。

[小田社長]
落ちてますよ。

[──]
え‥‥ああ、そうでしたか。

[小田社長]
ピーク時は200億を超えてましたから。

[──]
そうですか。

[小田社長]
でも、成長することだけがいいことだとは思っていないんでね、ぼくら。

[──]
はい、雑誌の記事で読みました。

今年(2009年)の新入社員さんに向けて
「これから六花亭は成長しません」とおっしゃったとか。

[小田社長]
まぁ、経営の第一目標を「成長」に置かない、という意味なんですけどね。

まず、お客さまに満足いただけること、そして、従業員にも楽しく働いてもらうこと。
ここが、ちゃんとしてないと。

[──]
ちなみに、マルセイバターサンドをつくった当時、ここまで有名になると思ってましたか?

六花亭さんの売上の、約半分を占めるほどに。

[小田社長]
いやいや、そんなこと、ぜんぜん思ってないです。

はじめは「タバイセルマ」ありますか‥‥なんておっしゃるお客さまもいたくらいですから。

[──]
タバイセルマ‥‥あ、反対から読んで?

[小田社長]
そう。マルセイバターサンドの名前の由来って、知ってる?

[──]
いえ、詳しくは存じ上げません。

[小田社長]
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