[村松]
そうやって電話して行った先が、一番町の、川喜多和子さんと伊丹さんがふたりで住んでた独特の空間でした。
それはもう、俺にとっては、
「これが中央公論的に仕事になる」ということよりも、自分の体験として、すごく新鮮な人と出会っちゃったな、という感じでね。

[糸井]
伊丹さんは、そのとき30歳くらいなんですよね。
具体的にはどういう印象なんでしょう?

[村松]
いや(笑)、あのね、いまでこそね、コンクリート打ちっぱなしのだだっぴろい部屋に、書斎なんか作るやつ、多いと思うけど当時じゃめずらしいことでさ。
ガラーンとした何にもないようなところの、奥のほうにコタツがあるような部屋。
それで、伊丹さんは床の上を靴で歩いてるわけ。
外国映画なんか見ればあった光景かもしれないけど、
「それが普通でしょ?」みたいな感じで靴で歩いてるわけ。



[糸井]
すごいね。

[村松]
そこへ俺が行って、玄関から靴を履いたまま上がれるか、っつうことだよね!

[糸井]
はい(笑)。

[村松]
やっぱり俺は靴を脱いじゃった。
そうすると、伊丹さんは
「履いたままでどうぞ」とも何とも言わないという。

[糸井]
(笑)

[村松]
自分だけカッコよく靴で歩いてんの。
それで、奥のほうのコタツの上にちょこちょこっと原稿用紙が置いてあって、そこで伊丹さんは、鉛筆で原稿を書いてた。
コタツで、靴履いてんだよ?
コール天のズボン穿いて靴履いてコタツ。
おかしいんだよね。
で、その次。
2度目に行ったら、ブリーフ姿。

また「それが普通でしょ?」ってな感じでブリーフいっちょうなわけ。
(つづきます)


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