『人間は何を食べてきたか』は
誰が観るのか?
あ、オレか。
小山薫堂さんと、軽めに食を語る。

第8回 生きるために食べること
 
  (小山薫堂さんプロフィール)
糸井 多分、5回泣いたエル・ブジの人も
個人で「M」のフェアを
スポンサードするフードコーディネーターの人も
お金の価値を飛び越えさせたのは
動物的な何か、
こう、魂の問題なんだと思うんです。
よっぽど、体が打ち震えることじゃなかったら、
できないですよね。
ほんとは繋がってるんだよなぁ。
はぁー、いいなぁ、いい話だなぁー。
僕ね、この「何食べ」シリーズを、
ベンチャーのレストラン業界の人たちに、
配りたいんですよ。

小山 んーっ!ベンチャーのレストランは、すごいですよね。
糸井 すごいですね。
つまり、明らかにビジネスとして、
ある意味ものすごい完成度があって、
ガッツはあるんですよね。
だから、そこの人たちが、
どこかで、こういうものに触れたら、また何か…。
小山 違うかたちができるかもしれない。
糸井 うん、かもしれない。
今は結局インテリア・デザイナーと
ビジネス・モデルを作る人たちの合体でしょ?
小山 ええ。きっと彼らは別に「食」じゃなくても
いいわけですよね。
儲かるから「食」を今やってるだけで
糸井 そうですね。
やっぱり、「食」って学歴問われないし、
誰かが考えた方法があれば、
それをマニュアルに合わせてコピーしてって、
あとは真心という名の根性を
プラスすればできちゃうんですよ。
何かね、繋がりつつあるんだなー。
うまく言えないんだけど。
今、食うことを禁じられたら、
えらい騒ぎになりますよね。
小山 日本でもラマダン※註1)があれば、違うでしょうね。

※註1 ラマダン
イスラム教の断食月のこと。
太陰暦をもとに作られた
イスラム暦の9番目の月で、
最も神聖な月とされる。
太陽暦では11月下旬ごろから始まる。
断食をすることで、
一年間に犯した罪を償うとされる。
糸井 ラマダンだ!
小山 今ラマダンで思い出しましたけども、
今度、「グルメ・ガーディアンズ」っていう
番組を考えているんです。
糸井 なんだ?それ。
小山 フジテレビで、2クールに1回くらい、
キャンペーン的にやって行こうと思ってるんですけど。
それは何かっていうと、近い将来に、
警視庁と食糧庁が、
食の風紀が乱れてしまった日本を更生するために、
「グルメ・ガーディアンズ」という組織を作り、
彼らが、グルメ刑法というものに従い、
色んな犯罪を逮捕していくんです。
例えば、お寿司屋さんに行って、
お寿司をカピカピにしてしまって、
話に夢中になって
寿司を乾かしてしまっているヤツを
逮捕したり
だとか。
オープニングは、
家庭のすき焼きのシーンから始まるんですよ。
子どもとお母さんとかがみんな
「わーい!すき焼きだー」
とかっていってるような家庭で
「お父さんにすき焼きは任せろ」、
とばかりに、お父さんが
シラタキと牛肉を近くに入れてたりすると
いきなり、「カチッ」とかっていって刑事が、
「お前には黙秘権がある、
 今後お前の発言は裁判で不利に作用することがあるから、
 気をつけて発言しろ。シラタキの石灰は
 牛肉のタンパク質を固くする作用がある」
というようなウンチクを言って、
グルメ刑法第81条3項の、
 牛肉およびシラタキの接近過剰の容疑で逮捕する。

そうやって逮捕していくっていう
バカなドラマをやるんですよ。
糸井 ドラマになってるんだ(泣笑)。
小山 しかも、刑事モノの。
糸井 寿司、乾くっていうのは、
逮捕して欲しいね。
乾き寿司は罪重いよねぇ。
小山 罪重いですよ。
糸井 作る側にも逮捕して欲しい人は
いっぱいいるんだけどなー。
小山 ああ、いますね(笑)。

食の基準になるような店
糸井 いままで、こうやって一気に話を聞いてて、
食い物の話ってやっぱり、
腑に落ちるんですよ。
それって生理的な何かがあるから。
大きい意味でやっぱり猥談なんですよね。
その腑に落ちる部分と、
そっから先はもう聞きたくもないっていうか、
そんなにやんなくても、
っていうところのバランスを
今、探してる時代なのかも知れないね。
すごく腑に落ちるのは
「腹が減ってれば何でもない」っていうことだね。

原点はそこなんだよね。
小山 ええ。
糸井 「食えるだけ幸せだと思え!」っていう
星一徹のお父さんみたいな。
小山 「生きるために食べてる」ものが
多かったんですよね。
でも今の日本の文化は、
どう見ても「食べるために生きてる」人が
大半ですからね。
糸井 うん。うん。
小山 きっと「生きるために食べる」ということが、
わかった上で、「食べるために生きて」たら、
もっとすごく豊かになる
んでしょうね。
糸井 やっぱりラマダンだねぇ。
小山 ラマダンですよ(笑)。

糸井 ラマダンとかさ、
さっき僕が、「自分ちの今のご飯」って言ったけど、
粗食の店というか、
普通に金は取れるんだけど、
「これはどうだ!」っていう基準になるような
そんな店が欲しいですね。
小山 うん、うん。
糸井 朝の定食に近いようなものなんだけど、
めっちゃくちゃ美味い、みたいな。
多分、さっき話にでた銀座の「M」って店なんかでも
基準っていうのは、
そういうところにあるんだと思うんですよ。
小山 僕、写真でしか見てないんだけど、
「水飯」っていうのが
その「M」ってお店にはあるらしいんですよ。
それは、蓮の葉かなんかに、
白いご飯を少しだけ載せて
氷水を上からかけて食べるっていう。
糸井 ドラマチックだよね。
小山 ドラマチックな(笑)。
美味しそうですよね。「水飯」。


(つづきます。)

ジブリ学術ライブラリー 人間は何を食べてきたか』
「腰を据えて食べることを考える。
 NHKのドキュメンタリー番組が、人々を動かした。」

2003-03-09-SUN


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