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 『トランジスタ・ラジオ』
 RCサクセション

 
1980年(昭和55年)

恋とは違う
高校生活のスパイスでした。
(教科書をひろげている私)

君の知らないメロディー
きいたことのないヒット曲


ごく普通の高校生活。
勉強と部活、ちょこっとのアルバイト、
誰にも言えない片想い。

2年のクラス替え
片想いの彼とは同じクラスになれませんでした。

新しいクラスの初日
積極的に話かけるわけでもない私は
ぼんやりとクラスを見渡していました。

突然
私の席の前にこちら向きで座ったその人は
校内でとても有名ないわゆる不良
とにかく驚いて
とにかくその場を切り抜けることばかりで
何を話したのかもまったく覚えていません。

その後
ちょくちょく私の前の席にこちら向きで座り
話かけてくるその人
朝姿を見たと思えばお昼前に帰っていたり
いないと思ったら午後から来ていたり
学校に何をしに来ているのか
私にはとても不思議でした。
こんな人と関わったら私の平穏な高校生活が
どうかなってしまう‥‥
そう思いなんとか逃げなくてはと
頭を悩ませていました。

しかし話を聞くうち
その人はとても話が面白く
まるで大人と話しているような感覚になりました。
次第に私からも話しかけるようになり
一番仲のよい男子の友達に。

そして一年
3年生もその人と同じクラスになりました。
片想いの彼とはまたしても同じクラスになれず‥‥

ついに卒業目前まで
想いを伝えることはできず
やってきたのは高校最後のバレンタインデー。

なんとなく校内がザワザワとした雰囲気のその日
チョコレートは用意したものの
3年間なにも出来なかったことが
その日だからといって
できるはずもなく下校時間に。

机でぼんやり帰り支度をしていると
その人が現れ
「チョコ渡せた?」

その人には片想いの彼のことを打ち明けていました。

黙っている私に
「まぁ、渡せないままも青春だね、
 後からどっちがよかったと思うかは
 わからないけど
 今は今どうしたいかに正直でいいんじゃないかな、
 どうしたい?」

そう私に言うその人。
”‥‥渡したい”
そう答えると

「わかった、ちょっと待ってて」
と教室を出ていき、しばらくすると
その人が片想いの彼を教室に連れてきました。

「わかると思うけどよー、じゃあな」
彼にそう言い教室を後にするその人。

想いを言葉にすることは出来ませんでしたが
手紙をつけたチョコレートを
渡すことができました。
好きな人に想いを伝えたバレンタインは
これが最初で最後。

その人は
髪が茶色くスカートの長い女子に囲まれて
帰っていきました。

勉強と部活とちょこっとのアルバイト
誰にも言えない片想い、
そんなごく普通の高校生活の
ちょっとしたスパイスだったその人。

バイクの後ろに乗せてくれたり
夜中に学校のプールに連れていってくれたり
私にはちょっと刺激が強かったけど
とても楽しかった。

その人は
私の知らない世界、私の知らない言葉、
私の知らない音楽を
たくさん知っていました。

その人が好きだった曲の
私が好きなフレーズ

君の知らないメロディー 
きいたことのないヒット曲

片想いの彼こそが
私の青春だと思っているけれど
実はこのフレーズこそ
私の青春だったのかもしれません。

(教科書をひろげている私)

子どもの頃、RCサクセションが大好きだった私の
(いまもファンですけれども)
ファンになるきっかけはこの
『トランジスタ・ラジオ』でした。
たしか「夜のヒットスタジオ」で歌う
清志郎さんの姿にくぎづけになったのです。

ああ、ほんとうに、大好きです。
この前奏のギターからソプラノサックスの音!
あくびしてたら口がでっかくなって
居眠りしてたら目がちいさくなる彼‥‥
あこがれていました。

その彼が。
実在していたんですね!!!
かっちょええやん。
めっちゃ、かっちょええやん。

その不良の彼にとっても
あなたの存在は高校時代の
不思議なスパイスだったのでしょうね。
ああ、彼の側からの投稿を
読んでみたいなぁ。
どういう歌を恋歌に選ぶかなぁ。

バイクの後ろに乗せたり、
夜のプールに連れて行ったりって、
けっこう、彼もアプローチしてますよね。

RCのこの名曲、
とっくにここに登場していると
思ってましたけど、初登場だったんですね。
いま聴きながら書いてますが、いい曲だなぁ。
ロックだけど、ポップだなぁ。
いまの不良たちは、
屋上でタバコを吸ったりするのだろうか。

高校のとき、RCのコンサートに行きましたよ。
ぼくの育った静岡では、
「キヨシローがもう来てくれなくなる!」事件があって、
それは以前のコンサートでステージの演出について
RCが教育委員会から怒られたということがあって。
でも1年か2年したころに隣町の清水でコンサートがある!
というので、電車に乗って出かけたのでした。
好きな曲をひとつっていうのは選べないけど
「雨上がりの夜空に」と「トランジスタ・ラジオ」は
ベスト5にはぜったい入るなあ。
ぴょんぴょん跳ねてコンサートで
踊りながら聞いた記憶があります。
楽しかったな。体重も軽かったしな。

ぼくはどっちかっていうと「優等生」だったんで
(自分で言うな)
授業もサボらなかったしタバコも吸わなかったけど、
たしかにRCファンのなかには、
ちょっと不良っぽい子もまじってました。
でもそこはRCファンだもの、「話がわかる」。
その有名な不良の彼も、
きっとそうだったんじゃないかな。
今ごろはかっこいい大人になってると思う!

「その人」は、好きだったんだろうなぁ、
ごく普通の女の子のことが。
それも、かなり好きだったんだと思います。
バレンタインの日、
「じゃあな」と教室を後にする彼の心中を察すると、
ぐいぐい切なくなってきました。

スパイシーな彼は、
そのあとにも何度か同じようなことを
繰り返している気がします。
好きな人に気さくに話しかけるくせに、
あと一歩というところで不器用になっちゃう。
いますよね、そういうタイプ。
フーテンの寅さんみたいな?

と、同時に、
そのスパイシーな彼は、
いまごろどこかでちゃんと幸せになっているはず!
という確信めいたものも感じるのです。
なんの根拠もないのですが、
そうあってほしいという願望も込めて。

RCは、すごいな。
「良」にも「不良」にも「やや不良」にも、
ビンビンに感じるラブソングを届けてくれました。
唯一無二のバンド。
いま聴けば、こころはそこにすっとんでいきます。

♪君の知らないメロディー
 きいたことのないヒット曲〜

次の更新は水曜日。
どんな曲を聞かせてもらえるのかなー。
では、また!

2015-01-10-SAT

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