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 『真夏の果実』
 サザンオールスターズ

 
1990年(平成2年)

別れの原因になった
もやもやの正体がわかりました。
(マイナス100度の太陽)

四六時中も好きと言って
夢の中へ連れて行って


10年前の誕生日、当時仲の良かった男の子が
1枚の8㎝CDをプレゼントしてくれました。
他愛無い話の中で
私が好きだと言った一言を律儀に覚えていて、
中古屋さんで探してくれたんだろうそのCDが
とても嬉しくて。

男女混合の仲良しグループの中でも特に、
少し昔の曲が好きだと意気投合した私達2人です。
歌詞の意味なんてまるで分からないくせに
背伸びして語り合ってみたりなんかして、
そういう時間が楽しいと思っているうちに
彼の方から告白をしてくれました。

変な緊張もどきどきもなく、
友達の延長のように始まったお付き合いで
しかも中学生。
空いている週末に公園で長話、
くらいのデートでしたが、
いつも時間が過ぎるのはあっという間。
学校や先生のこと、好きな音楽、
共通の友達のことや趣味云々‥‥
色気も何もない田舎の平凡な2人でした。
でも楽しかった。

別の高校に進学しても距離感は変わらず。
お互い忙しく、それでも時間が合えば
いつもの公園でまた長話。
部活がなければ少し遠い映画館へ
自転車でデートしました。
汗だくになりながら坂道を駆け上がって、
本当に楽しかった。

高校2年の冬、別れを告げたのは私からでした。
何事もないようにバレンタインのチョコを渡して、
そしてさよならと言いました。
呆気にとられた彼から、
困った声で「いいよ‥‥?」の返事。

進学するから勉強に集中したい、と言ったのは
半分本当で、もう半分は
何だか得体のしれないもやもやと
格闘するのに疲れたから。
頑張ってはみたけど
もやもやの正体が分からなくて、
面倒くさがりの私は全部放り投げてしまいました。
ホワイトデーに告げられた
よりを戻したいの一言も聞かず、
それっきり私たちのお付き合いは終わりました。

そのもやもやの正体に気付いたのは、
つい最近のこと。
高校卒業後長らくお付き合いしている今の彼との
将来を考えるようになった時でした。

不器用で無愛想で無表情で、
何をしても淡々としている今の彼が、
それでも欠かさず言ってくれる大切な言葉。
ありがとうだったり大好きだったり、
その形は様々ですが、
ある日いつもと同じように
大切な言葉をくれた途端に
突然私の頭の中で鳴り響いたメロディー。

四六時中も好きと言って。夢の中へ連れて行って。

ああ、私はあの頃の彼にも
そう言われたかったんだと、
あの頃の私を誰よりも
特別扱いしてほしかったんだと、
本当に唐突にそう思ったんです。

あの頃の彼は愛想がよく聞き上手で
女友達が多くて、
相手が誰でも電話をすれば
深夜でもその子の元に駆け付けるような人でした。
女友達に送るメールを
私に間違えて送ってきたことも数知れず、
友人との予定を優先されたことも数知れず。
肝心の言葉も曖昧なまま。
その頃の私は何も思わず
あっけらかんとしているつもりで、
無意識にそれをもやもやと
溜め込んでいたんだなぁって、
その正体をしみじみと実感しました。
それに気付けなかった、言えなかった私の
ちっぽけなプライドと共に。

小さな田舎の同級生です。
共通の友人も多く、会う機会もたくさんあります。
険悪な別れでもなかったから、
会えば友達に戻ったように話します。
それでも「あの頃本当はずっとこう思ってた」
なんていうのは、
きっと意地でも一生彼には
言わないんだろうと思います。
必死にプライドを保っていたあの頃の
高校生の私が本当に恥ずかしくて、
ほんのちょっとだけ可愛いなぁと思うから。
始まりが友達の延長線でも、
私なりにきちんと彼を好きでいた
証拠のような気もして。

そしてあのもやもやに気付けた私は
少し大人になったような気になりながら、
現在花嫁修業奮闘中です。
「四六時中好きだ」と言えば
「知ってる」と何事もなく返される
優しくて大きい言葉には、
まだまだ敵いそうもありませんが。

(マイナス100度の太陽)

あどけない時期の恋だけに、
せつなく読みました。
「もやもや」と「なんでかな」が
うまくまじわらないで終わっていくことが
若い恋には特に、ありますよね。

「こう思っています」とか「おもしろいです」とか、
はては「この料理おいしいです」ということを
いつでも何度も言ってほしいという気持ちは
じつは私はたいへんよくわかります。
そういう確認をしたがるのは女性に多いという
感覚がございます。そして、
「何度も言ったからわかってると思ってた」
「そのくらい理解してほしいなぁ」
と思っている方々が、特に男性に多いというのも
なんとなくの感覚でございます。
で、鬱陶しがられながらもいろいろ聞いたりしちゃう。

強いつながりさえあれば、言葉なんて‥‥というのが
理想ですけれども、逆に言えば
それだけ自分が「あやうい」から
確認したいのですね。
一瞬の何かで、気持ちや状況は変わってしまう。
でも、相手は揺らがなく強いから、言葉は要らない。
求めるものが違うんだということを自覚できたのは
ずいぶん大人になってからでした。

だから、そういう彼女がいる人は、
だまされたと思って、
「好きです」「かわいいな」と
毎日言ったほうがいいと私は思う。

8センチCDが
(マイナス100度の太陽)さんたちには
レトログッズなんですねー。
たしかになつかしいけど、
現役で買ってたからなー。
(いまでも持ってます。)
アタッチメントが必要な
プレーヤーもあって、
けっこう面倒だったな。
パソコンみたいな吸い込み式だと
入れられないしねー。

ところで、彼の気持ちになってみると、
「きょとーん」なままではないか、
と思わないでもないです。
“「あの頃本当はずっとこう思ってた」
 なんていうのは、
 きっと意地でも一生彼には
 言わないんだろう”というのも、
もし言ったとしても
「きょとーん」じゃないかなあ。
そしていまもそのまんまで
愛したり愛されたりしていると思います。
(ちょっと苛々されたりしながらねー)

「もやもや」の正体は、いったい‥‥??
なんだかちょっと、ミステリー小説を
読んでいるような気分になりました。

で、その正体は‥‥なるほどお。
「ちゃんと言ってほしい」というきもち。
これはたしかに女性に多い傾向があるような気がします。
でも、男の人にも、ありますよ?
思い当たる男性、いますよね?
要はスガノさんが言うように、
「あやうい」状態の者が求めるものだと思うのです。

とくに友だちが多い人気者が自分の恋人になったりすると、
いっつも軽い嫉妬心が浮かびますから、
言葉はより重要になります。
「あなたは特別な存在です」
と、言葉でちゃんと定期的に伝えることは、
人気者が恋をするときの義務でしょう!
‥‥ということを言われても、
人気者は「きょとーん」とするだけなのだろうなー。

なにしろ、もやもやの正体がわかってよかった!
花嫁修業、がんばってくださいね!!

よくぞその「もやもや」を
「もやもや」のまま抱えていて、
ある日のひらめきによって
氷解させたものだなぁ、と感心しました。

あるいは、それは自分の
「小さなプライド」なのだと
じつは当時から心の底で気づいてはいて、
それを、特別扱いしてくれなかった
歯がゆさもぜんぶ含めて、
きちんと受け止められたのが
そのときだった、
ということかもしれません。

それにしても、同じ男子としては、
呆気にとられている彼に
少々、同情してしまいます。
(つき合っている状態から)
ふられる十代男子というのは、
いつだって、ぽかーんできょとーんだよなぁ。
その瞬間まで、いや、その瞬間を過ぎてさえ、
関係が終わるとは夢にも思ってないからね。

そうそう、サザンの曲が
iTunes Storeでダウンロード購入
できるようになったんですよ。
アルバムに入ってない
『ジャズマン』とか『FIVE ROCK SHOW』
とか買っちゃおう。
それでは、また次回の更新で。

2014-12-27-SAT

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