書籍化とCD発売のおしらせ 恋歌くちずさみの広場 こちらをクリック 文庫本『恋歌、くちずさみながら。』を購入する方はこちらからどうぞ。 文庫本『恋歌、くちずさみながら。』を購入する方はこちらからどうぞ。

 『ロビンソン』
 スピッツ

 
1995年(平成7年)

あんなに美しい夜を
見たことがありません。
(mk)

誰も触れない 
二人だけの国


学生の頃に交際していた人。
低い、落ち着いた素敵な声をしていて、
ぜひあの声で恋の歌を歌ってほしい!
と共通の友人に惚気たところ、
彼は音痴だというのです。

何かと忙しい学生時代で
カラオケに行く機会もなく、
卒業後、私は就職、一人暮らし。
彼は隣県に進学。
週末ごとに、私が住むアパートに
彼が泊まりがけで会いに来るのが
恒例になりました。

その日曜日もいつものように、
彼が終電に間に合うぎりぎりの時間に、
駅まで送るため車で走り出しました。

カーステレオから流していた
大好きなスピッツの歌に合わせて、
ふと、助手席の彼が
小さな、本当に小さな声で
歌っていることに気付きました。

あんなに美しい夜を見たことがありません。
対向車も、街灯もないような田舎道なのに、
その夜は道すがらずっと、
きらきら輝いていた記憶があるのです。

彼は、夫になってしばらく経った頃から、
素敵な低い声で
鼻歌を歌うようになっていました。
何を歌っているかは
だいたいわかりませんが、
聞かないことにしようと決めています。

(mk)

とくになにも起きないエピソードなのに、
まるで翻訳された短編小説のような読後感が。

小さく小さくくちずさむ彼の歌を、
こちらもじぃっと聴いているような
気持ちになりました。
ああ、よけいなことばを
長く足さないほうがいいですね。

スピッツのメロディーには、
ふだん歌をうたわない彼のような人をも
ついくちずさませてしまう
静かな力があるのだなと思いました。

これぞ恋歌くちずさみ!
いいんです、
なんだかわからなくても、音痴でも。
それがくちずさみ。

それも、一緒に過ごした週末が終わる
日曜の夜、カーステレオとともに、
小さくくちずさむ。
ちいさな歌声と走行音と吐息に包まれた
うんとちいさなふたりだけの空間。
なんだかいいなあいいなあ。

声がいいからといって
歌が上手とは限らないんですね。
ぜんぜん関係ないですが弊社には
「山寺の和尚さん」を歌うと
なぜかラップ調になる人がいます。

なぜかラップ調になるのは、
ヤエちゃんだ!
人呼んで、ヤエラップ!

武井さん、しみじみしたいい投稿の読後感が
台無しじゃないですか‥‥。

YO! 
ネコ・ヲ・カンブクロニ・オシコンデー!
ネコ・ヲ・カンブクロニ・オシコンデー!

ああ、ごめんなさい。
気を取り直して、コメントをどうぞ。

ヤエラップ(笑)。
まさかその話題になるとは!

永田さんが2回目のコメントを書き込んだ欄に
他の委員たちへの報告として、
「※つぎのコメント書きづらければ
 まったくこれを削除しちゃってOKです。
 つい、書いてしまった。」
と書き添えていたのも面白かったです。

たしかにムードを吹き飛ばす話題ですが、
ヤエラップのことも削除しないでそのままに。
だって「くちずさみ」はすべての人の権利ですからね。
音程がはずれようとも、
歌う歌がすべてラップになろうとも。

(mk)さんの投稿、すてきでした。
「あんなに美しい夜を見たことがありません。」
という思い出を共有している人と
今も生活を共にしているのですね。いいなぁ。

おふたりの距離感に、なんというかその、
上品さを感じます。
距離感ってとてもだいじですから。
初対面でも、長い付き合いでも。
(mk)さんご夫婦は、妙な言い方かもしれませんが、
距離感のセンスがいいのだと思いました。
低く歌う鼻歌と、その曲が何かを尋ねない距離感。

距離感かぁ。
やえさんのラップには
距離感と時空を一気に縮める力がありますけども‥‥。
距離感の気持ちよさは、つまり、
尊重している気持ちよさですね。
私はそういうことを
上手にできるタイプではないので、
いい距離感でお互いを尊重して
そんでもって色気もあったりするご夫婦を見ると
感動をおぼえます!

彼がきらきらさせた風景、
恋した人たちは、みんな
見たことがあるんじゃないかな。
びっくりするような
お花みたいなりんごみたいないい香りとか、
ぬけるような青空とか、
ろうそくの炎の向こうの影とか、
恋人の横顔が持ってきてくれるものは
たくさんあります。
その思い出とともに生きてまいります。
それではまた、土曜にお会いしましょう。
きら、きら、きら、YO!

2014-11-19-WED

最新のページへ
感想をおくる ツイートする ほぼ日ホームへ
(C) HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN