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 『キセキ』
 GReeeeN

 
2008年(平成20年)

また結婚している人と‥‥
という罪悪感や虚しさ、
悲しさがありました。
(困った人)

うまく行かない日だって
2人でいれば晴れだって!
強がりや寂しさも  忘れられるから
僕は君でなら 僕で居れるから!
だからいつも そばにいてよ 『愛しい君へ』


平凡に生きてきて、社会人になって2年目、
結婚間近の人とお付き合いを始めました。
その人の結婚相手は、私ではありません。
良くないことと思いながら断ち切ることができず、
相手は二人の子供をもうけ、
いろんなことがありながらも付き合いは続いて20年以上経過し、
徐々に相手が信じられなくなって私から距離を置き、
私から区切りをつけて別れました。
その間、結婚しない私を親や周囲は心配して、
お見合いの話を持ってきてくれました。
その人との付き合いのことは周囲の誰も知りません。
私ももしかしたら違う人生を歩むきっかけになるかもと思い、
他に思いを寄せてくれる人と会ってみたり、
お見合いをしてみたりしましたが心は動かず、
親には本当に心配をかけてきたと思います。

別れた時すでに私は47歳。
もう恋愛のことは考えていませんでした。
でも、その2年前に私の部下になった14歳年下の男子のことを
とてもまぶしく思っていた、ということはありました。
でも、歳が大きく離れていることに加えて、
出会った時すでに彼は入籍後で3ヶ月後の挙式に
私は上司としての祝辞を頼まれ、
無事に挙式も済ませて、
ときどきまぶしさを感じながらも
二人の間に何か生まれることなどあり得ないと思っていました。

その人と出会ってから2年半がたったころ、
突然その人から告白されました。ずっと憧れていたと。
そして思いがけないキス。
でもその日は職場の飲み会、
三次会の後でに二人ともかなり酔っていた時のことです。
冗談として受け流して帰りました。
その後二人とも気になりながらも何も言いだせずに時は過ぎ、
1ヶ月後にまた飲み会で一緒になりました。
私は自分からは言い出せないものの、
その人が何か言ってくれることを心待ちにしていたと思います。
帰りにその話になり、あらためてお互いに気持ちを確かめ、
その後から時間を見つけて会うようになりました。
私の中にはまた結婚している人と‥‥
という罪悪感や虚しさ、悲しさがありました。
加えて付き合い始めて1ヶ月後に
奥さんの妊娠がわかったということもあり、
迷いの気持ちもありましたが、
私にないものを持っていることに強く惹かれていたこと、
私のことをとても大事に思ってくれる気持ち、
またひとりになる寂しさなど、
多分色々なものを天秤にかけて付き合うことを選びました。
その人がカラオケに行くと必ずみんなで歌うのがこの歌です。
歌詞がとても好きです。
恋歌ポイントを選ぶのに苦労するくらいです。

それから2年後、父ががんのために死の床につきました。
もちろん家族にその人のことは話していませんでしたが、
部下としてお見舞いに来てくれた後、
父が既婚者と知らずに「あのひとはどうなんだ?」
とわたしにすすめるようなことを言ってくれました。
今度機会があれば聞いてみるねなどとにごしながらも、
父がその人のことを認めてくれたようで
何だかうれしい気持ちでした。

今付き合ってまる4年がたちました。
その人には、今の家族を壊して私と結婚する
という選択肢はありません。
こんなに歳が離れているし、
いつか気持ちが変わるのではないかと思ってきました。
でも、ずっと一緒に歳をとっていきたいと
言い続けてくれます。
奥さんがいるのに
そんなことを言うなんておかしいと思います。
罪悪感にもさいなまれ続けています。
でも、この4年間その人を見ていて、
信じてもいいのではないかと思えてきています。
叱られるかもしれないけど、幸せです。

(困った人)

思えば、この「恋歌くちずさみ委員会」には、
「私はどうしたらいいでしょうか?」
という相談の投稿はほとんど届きません。
多くは「こういうことがありました」、という内容です。
終わったことを振り返って、書いてくださる物語。
ときおり、「この恋はどうなるのかなー?」という
現在進行形の投稿もありますが、相談はまずありません。

(困った人)さんの、この投稿もそうでした。
文面からは、迷った時期はもう終えて、
「心を決めた」様子が感じられます。
不安はもちろんあるけれど、
今の自分を信じてあげよう、という肯定感を感じます。

とはいえ‥‥うーーん‥‥
ああ、今回はコメントがほんとに難しい。
(実はこれ、何度も書き直しています。
 書き直しを重ねた文章は歯切れが悪いです)

‥‥やっぱり、いいとかわるいとかについて、
ぼくには何も言えません。
(困った人)さんには、
小声で「がんばって」と言いたい気持ちです。
できれば、できるだけ、
傷つく人が出ないように「がんばって」と。
‥‥という望みは、虫のいい話なのかもしれませんが。

投稿文の最後が「幸せです。」で終わっていて、
すこしね、ほっとしました。

ぼくの直接的な周辺には
いろんな恋や愛があります。
はっきりさせなきゃダメ! 
なんて言いたくなったり、
あるいは怒りだす人もいそうな、
そんな恋や愛も「わっさわさ」あるのですけれど、
ぼくは肯定も否定もしません。聞くだけ。
聞くの大好き。
否定しないことが肯定になるのかもしれないけれど、
ぼくはいろいろひっくるめて、
「そういうこともあるのだ」と思い、
それはきっと星の数ほどある、
なにものともくらべられない、
ラブストーリーのひとつだと思っています。
「いいじゃないの幸せならば」(相良直美)です。
「いいじゃないの〜」(日本エレキテル連合)じゃないよ。
でも、あれもまあ、恋のコントですね。
叶わぬ恋のコントだ。

一生愛人で通した大正生まれの伯母が、
先日他界しました。
とてもきれいでまっすぐな、
竹を割ったような性格の伯母で、
料理も洋裁も和裁も上手で、
ぼくは大好きでした。
彼女の料理はぼくの理想です。
ずっと前に逝ったおじさん
(と、ぼくは呼んでいた)と
ぼくの知らない彼の奥さんと、
またあっちで一緒なのかしらん。
だいじょうぶなのか。
でも伯母は死に顔がピンク色でつやつやしていて、
なんでそんなにうれしそうなの、
というような表情だったみたい。

愛というのはほんとうに
いろんなカタチがあります。
別の人(奥さん)といっしょに人生を歩んでいる人と
ともに歳をとることについて
「信じる」というのは、いったいどういうことか。
わたしはまだまだわかっちゃいないことが
たくさんあるんだな。

この歳になるとかなり本音で
それまでの恋愛について語ってくれる友達もいて、
「しかたがないな」と思うことがたくさんあります。
正しいことなんて、ほんとうはないし、
思ったとおりにきれいにはいかなくて、
恋はほとんどが「おちる」ものである。
理由なんてなし。あとさきは、ない。
よろこびはいろんなところにある。
それはわかってるんだけど、
わたし個人的にはやっぱり、
頭の中の椅子はひとつだけになっちゃう。狭量かな。
恋の成就だけが男女の人間関係じゃない、って
いつも思ってるけど、それは逃げなのかな。

でも‥‥のおばさまは、
とてもすてきな人でした。
(昔いちどお会いして、ごはんをいただきました)
お話を聞くだけで、おじさまの愛を感じました。
わたしにも、このくらいのことを賭けて
好きになれる人がいるといいな、と思いました。
‥‥このあたり、わたしはやっぱりまだ
答えを出せていません。

青春時代にふられた話や、
学生のころ別れた話とかは、
たとえ三角関係だろうと二股だろうと、
まあ、なにしろ、
それはそれでよい経験をしたねぇ、
というふうに言えるのですが、
こと「不倫」となると、
添えることばの表現に
気を遣わなければならなくなる。

つまり、間に「結婚」という制度がからむと、
「モラル」という質の違うものが
混ざってきてしまうのですね。
たとえこの、読者と、四人の乗組員が
やいやいたのしむだけのコンテンツにおいても。

以上を四人分の前提のようにして掲げておいて、
ほんとにぼくらが思っているのは、
それぞれがそれぞれにすでに書いているように
恋にはいろんなかたちがある、ということです。

そして、この人は、とても強い人だなあ、とも。
よくないことと知りつつ抗えなくて‥‥
というふうに書くのではなく、
「多分色々なものを天秤にかけて
 付き合うことを選びました」と
しっかり書いてあるのが、
読んでいてガツンと来ました。

さまざまな方から、
さまざまな恋にまつわる
さまざまな投稿がある、恋歌くちずさみ委員会。
それではまた次回の更新で。

2014-09-27-SAT

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