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 『はぐれそうな天使』
 岡村孝子

 
1986年(昭和61年)

隣に座って挨拶した瞬間に
お互い一目惚れ
(ヒマラヤン)

あやうい恋心に
あわててる


女子高時代の友人が勤める会社の
クリスマスパーティーで、
A君と初めて会いました。
何だか私の事を気に入ったらしく、
友人を介してアプローチがあり、
「じゃあ、一度お会いしましょうか。」と。

初デートでのA君は、
なんとも素っ気ない感じでした。
駅で待ち合わせをして、
喫茶店でお茶をして、さようなら。
数日後友人からの電話で、
A君が物凄く落ち込んでいると知りました。
彼の同僚全員が、
あの時A君が私に一目惚れした事に気付き、
要らぬアドバイスを沢山した事。
色々なデートを考え、
考え過ぎて不眠になった事。
そんな事を聞いたら、
もう一度会ってもいいかな?
と、思うじゃないですか。
日を改めて会ったA君は、別人でした。
楽しい話をいっぱいするし、
優しいし、気が効くし、
うれしそうな瞳で私を見つめるし。
こりゃあ、もう、付き合うほかないな!
ドライブの時にこの曲が流れると
「僕の気持そのままの歌だな」
と、笑っていました。

そんなA君の会社の社員旅行が、
とある地方都市の海水浴場に。
いきなり現場の海で私を見つけたら、
喜んでくれるかしら?
以前から、会社の同僚達と
海に行く予定だったので、
迷わずに同じ海水浴場に場所を決めました。

当日の朝、
同僚が車で迎えに来てくれましたが、
その車に同乗していた、
同僚の友人が今の主人です。
車に乗って、隣に座って挨拶した瞬間に
お互い一目惚れ。
出会って2週間後にはプロポーズされ、
私も快諾。

A君には、電話で別れを伝えました。
ひどい事したなぁ。

今の主人とデート中によく聴いた曲も
『はぐれそうな天使』。
何も知らない主人は、
「この曲は、2人の思い出の曲だな」
と言っていますが、
私にとっては、別れたA君と主人との
どちらとも共通する、
甘くほろ苦い思い出の曲です。
(ヒマラヤン)

ひとつの思い出の中に
「一目惚れ」が3回も出てくるという、
なんともスピーディーな投稿です。
出会って2週間後にプロポーズ、
快諾、別れの電話。
ネット際でボレーの応酬とはこのことです。

テンポのよい思い出に寄り添う恋歌は、
一転してメローなシティポップ。
今回、はじめて聴いたのですが、
メロディーとアレンジに
なんとなく馴染みがあるなと思ったら、
作詞作曲が来生姉弟でした。
来生たかおさんが1985年にシングルとして出し、
翌年、岡村孝子さんがカバーしたんですね。

岡村孝子さんって、聴いてなかったなあ。
あみんの『待つわ』はもちろん歌えるけれど。

急展開には、もちろんびっくりしましたが、
個人的に最も興味をひかれたのは、
「最初のデートでガチガチになったA君」
のお話でした。
すごく、共感。親近感。
アドバイスを聞きすぎたり、考えすぎたりすると‥‥
「なーんにもできずにさよーなら」
ということ、あ〜りますよねぇ〜。
自慢じゃないけど、ぼかぁ、ありましたよ。

A君、惜しかった!
一度は挽回したのになぁ!
無念さに、のたうちまわったと思います。
「あああああああーーー!」と、
枕に顔をうずめて叫ぶくらい‥‥。
でもそうやって、
のたうちまわって悔やんだり悲しんだりしたことが、
いつかしら、いい思い出になるんですよね。
ですから、(ヒマラヤン)さん、
心配しなくてきっと大丈夫。
二度目のチャンスできちんと結果を出したA君です。
そのあと何らかのかたちで挽回して、
幸せになっているんじゃないかとぼくは思いますです。

すっかりAくんに感情移入して読んでたら、
ありゃりゃりゃりゃ‥‥!
でもまあ、そういうことはあるよねえ。
恋はタイミングだものねえ。
映画『卒業』(1967年)みたいに
もうどうしようもないところまで進んじゃって
やっと結婚式の現場で奪い返す、
みたいな大騒ぎにならなくてよかったです。
‥‥まあ、あの映画は、そもそもが、
かなり、ドロドロの展開なんだけど。

読後感がさわやかなのは、
(ヒマラヤン)さんが、Aくんのこと、
とても好意的に(それは恋や愛ではなかった、
のかもしれないけれど)、
当時も、いまも思っているからだと思いました。
デートがうれしくてそんなふうに
全身で「LOVE!」を表現できる男。
そのときはきっとおちこんだと思うけど、
きっといまは元気!
だから山下さん心配しなくて大丈夫だよー。

できたてほやほやの彼氏へのサプライズで
同じ海水浴場に行く予定の
行きの車で別の人と恋に落ちる。
すごいシチュエーションですね。
両者ひとめぼれのご主人との恋、あっぱれ。
いやぁ、ホントにうらやましい!
もうそれは、A君にあきらめてもらうほか
ありませんよ〜。

この投稿のおもしろいところは、
ご主人との恋のはじまりが
パーフェクトなものにもかかわらず
A君のことをきちんと描いていらっしゃるところ。
読む側がA君の気持ちの流れとそれに応える幸せに
包まれそうになったときに
「その車に同乗していた、
 同僚の友人が今の主人です。」
が出てくる。まばたきを2回、いたしましたよ!

恋というのは、油断なりませんね。
でも、ご主人は出会うべくして出会った方ですもん、
もっと前でも後でも、そうなってましたね。
だから、油断とかじゃないんだな‥‥。

などと、もっとおしゃべりしたいですが、このへんで。
次は土曜にお会いいたしましょう。

2014-07-30-WED

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