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 『ジュリアン』
 プリンセス・プリンセス

 
1990年(平成2年)

20年経つ今でも、
目を覚まして、切なさに
涙がこぼれることがあります。
(meteora)

こんなせつない恋を 私は忘れないでしょう


ひとまわり年上の彼と出会ったのは、
中学1年生のとき、担任教師としてでした。

毎日の宿題に日記があり、
提出するとコメントをつけて返してくれる先生。
ある日コメントにコメント返ししておいたら、
そこから会話がはじまり、わたしの日記は、
先生との交換日記になっていったのでした。
その楽しさと「特別感」から、
いつの間にか先生を好きになっていました。
当時、かなりませていたわたしは、
同級生と昨日のテレビについて話すより、
職員室で先生方と世の中について
お話しているほうが好きな、
ちょっと変わった子でもありました。
それなりの理解力もあったので、
24歳と12歳、大人と子供、
教師と生徒では絶対にかなわない、
かなえてはいけない恋だということも、
子供ながら、十分に分かっていました。
思いを打ち明けまいと心に決め、
周りの生徒に気持ちを悟られて、
はやされても、いじめられても、
3年間ノーコメントをつらぬきました。

わたしが中学を卒業すると同時に、
先生は峠ふたつ先の学校に転属に。
メールどころか携帯もポケベルもない時代です。
15歳のわたしには、
住所だけで知らない町にある先生の家に
たどり着く方法も思いつかず、
引き離される運命だったのだと静かに思いました。

それから5年後、
成人式のお祝いに来てくれた先生と少し会話をしましたが、
衆目のなか連絡先を聞くこともできず、
年賀状のやりとりだけ数年続けたあと、
先生の迷惑も考えて、こちらから音信不通にしたのです。

それなのに、あれから20年経つ今でも、数ヶ月に1度、
先生に会いたくて、声を聞きたくて、探し回る夢を見ては、
目を覚まして、あまりの切なさに
涙がこぼれることがあります。
そのたびに、
中学入学のお祝いとして初めて買ったCDの中で、
一番好きだったこの曲を思い出します。

チョークを持つ先生の指と手の甲が
ごつごつしてて素敵だったこと。

背が低くて教室のカーテンの取り付けに苦労していたら、
後ろからひょいっと助けてくれたこと。
部活で遅くなると家まで車で送ってくれたときの、
夜の静けさと暗さ。
先生の車に一緒に名前をつけたこと。
生徒会活動でお昼を食べ損ねたときに、
先生が買ってきてくれたコンビニおにぎりの味。
美術の写生で、その時間が空き時間の先生が見えるようにと
職員室の外を選んだら、
それに気づいた先生が写生の様子をのぞきにきてくれたこと。
そのせいでよけいに力が入って、
その写生が県で賞を受けてしまったこと。
英語担当なのに、クリスマスは嫌いだという先生に、
少しでもクリスマス気分を楽しんでほしくて、
先生の家の玄関に小さなクリスマスツリーを置いてきたこと。
その夜にお礼の電話がかかってきて、
電話のある居間はめちゃめちゃ寒かったけど、
先生の「メリークリスマス」と「おやすみ」が
すごく優しくて、耳だけ熱かったこと。
普段ジャージしか着ない先生が、
授業参観日にスーツを着たのを見たとき、
あまりのかっこよさに、
少女マンガみたいに本気で力がぬけて立てなくなったこと。
つっけんどんな普段の口調とは対照的に、
交換日記の中ではユーモアたっぷりで、
笑うと顔が赤くなって、くしゃくしゃになること。

吐き出せなかった想いは、
心に積もって結晶化するのでしょうか。

先生の夢(といっても夢の中でも
会えないことのほうが多いのですが)をみるたびに、
きらきらした思い出が涙とともに
心からあふれ出てきてしまいます。

出会ってからもう20年以上、
いいかげん気持ちにけりをつけなければと思いますが、
結婚して3児の母になった今でも、
先生とのことはこころに刻み込まれていて離れません。

ちなみに夫は、
先生が転任先で顧問をしたテニス部の部長。
そういえば、先生の話題で盛り上がったのが
会話のきっかけでした。

今のわたしの幸せも、先生が作ってくれたこと、
今回の投稿を書いてみて改めて実感しました。

わたしとの思い出も、
先生の幸せの、どこか片隅にあるといいな。
なんて思うのは、よくばりなことでしょうか。

(meteora)

年齢(とし)をとったからなんでしょうかねぇ、
もう、こういう投稿を読むと、
じわじわとあふれかえって仕方がありません。

いい先生だったんですね。
好きだったんですね。
次々と重ねて描写されるエピソードが
どれもみずみずしくて、あたたかく、切なくなります。
かなわなかったけれど‥‥
すばらしい恋だったんだと思います。

(meteora)さんの思い出は
きっと先生の中にもあるはず。
それを願うことは決してよくばりなんかじゃないですよ。

「ジュリアン」を聴きながらもういっぺん読んだら
もっとあふれてきて仕方がありません。
ひゃー、いい投稿です、ありがとうございます!

がー、せつない!
せつなすぎて怖いです。どうしよう。
先生の思い出がそんなにもいろあせずに
流れ出てくるなんて‥‥
私は力が抜けてしまいました。

20年かぁ。
吐き出せなかったものは
結晶化するのかな。
それをここで聞かせてくださって、
ありがとうございます。
いまが幸せなのがほんとうによかったです。

まったく。人を好きになるってなんなんだろうな。
「それだけじゃないぞ」というところを
いろんな方の恋が見せてくれます。
ありがとうございます。

結婚して3児の母になった今でも!
そうなのか‥‥それとこれとは別、なんですね。
ぼくが夫だったらジェラスだろうなあ。
I'm just a jealous guy...だろうなあ。

吐き出せなかった想い、
血や肉がまだドクドク言ってる気がしました。
結晶化されたらおちつくのかな。
あるいは一生かかえていくのでしょうか。
それも悪くないなあって思います。

20年経っても昇華できない恋の思いは、
実際、つらくて切ないばかりなのか?
それはそれで素敵なのか?
じつは、投稿を読んで、4人で話題に。

もちろん、ぜんたいに、
それはかけがえのない恋の思い出ですね、
ということは前提にして、
たとえば、自分だったらどうかなあと。

わかんないですけどねー、
それはそうなってみないと。

違う次元の話としていうと、
ここにこうして投稿して掲載されることで
20年経っても変わらず見る夢が
ちょっとだけ違うものになる可能性も
あるのかなと思いました。
ここに届く投稿に多いんです、
「書いてたら、わかりました」とか、
「落ち着きました」とかっていうものが。

心に残る投稿を、
どうもありがとうございました。
恋というのは、すごいものですね。

2014-07-19-SAT

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