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 『はじまりの唄』
 安藤裕子

 
2009年(平成21年)
 アルバム『THE BEST’03~’09』収録

私は応援し続けられる
と思っていたのに
無理でした。
(りお)

忘れていいと 遠くで言って


20代後半、とても好きな人ができて、
毎日一緒にいたくて結婚しました。
結婚してから、まるでジェットコースターのように、
いろんなことが次から次からおきました。
いいこともありましたが、大半は大変なことでした。
家業を継ぐ約束だったのを、職人になりたいと彼が言い出し、
彼の母親が病気で倒れても出ていくことにして、勘当されたこと。
引っ越ししてからの極貧生活。
慣れない土地での仕事。
私の親には苦労していると思われたくなくて、
あまり話していなかったのですが
またまた引っ越しすることになったとき、
引越し先に荷物は二人分送ったのに、
少しのつもりで帰省した実家からどうしてもそこに行けなくて、
1年考えて私から離婚してほしいとつげました。
私は一緒に応援し続けられると思っていたのに無理でした。
もう少しお互いが大人で、私が根っからの楽天家で、
貧乏にも慣れて、私が稼ぐから!
と尽くせばよかったのでしょうが‥‥

別れたあと、彼に未練がある。
というよりは、もう少し頑張れたのではないか。
という想いが強かったようです

偶然聴いたこの曲。
ピッタリの歌詞にたまっていたものがドッと出た感じで
号泣しました。
この曲を聴いて泣かなくなるまでは、
きっと前には進めないと思いました。

昨年、仕事の都合で二人で暮らしていた街に1年間住んだとき。
知り合いから彼が再婚したことを聞きました。
言葉はかわさなかったけど、彼と奥さんをみかけました。
あぁ、やっと終わったんだ、
幸せそうでよかった、
と思えました。

別れてから、もう7年。
この唄を聴いても、もう泣かなくなりました。
私はまだ一人ですが、
きっとまた誰かを愛せるはずと前を向いています。

(りお)

そうですよね、
「あのときもっと頑張れたのでは‥‥」
と思いすぎることはないんですよね。
つい、そう思ってしまう気持ちもわかりますが、
1年考えた(りお)さんの判断がそうだったんですから、
それはもう、そうなんだと思います。
誰も(りお)さんの判断を責めることはできません。
もちろん(りお)さん自身も。
事実、彼は再婚して、幸せになったんですものね。

(りお)さんがまた誰かを愛せるのは、
これはもう時間の問題で、あたりまえのことでしょう。
「前を向いています」
という結びのことば、力強く、すてきです。

はじまりの唄、はじめて聞きました。
とってもいい曲ですね。
ぼくはいまは涙が出ないけれど、
(りお)さんの状況ときもち、
きっとそういうことなんだろうなって
想像しながら読み、聞きました。

この曲を聞くと、ドッと涙が出る。
そういうめぐりあわせってありますよね。
もちろん悲しいわけなんだけれど
この曲があってよかった、って思えるような。
音楽ってそういうことのためにも、
あるのかもしれないです。

私はいま、いいぐあいの中年になりまして、
恋はもうおしまいと勝手に思っていたりするのですが、
このたびいただいたような投稿を拝読すると
自分に未知の気持ちの領域があって
「うわぁ、こういうことになったらどうしよう!」
という怖さを感じます。

でも、別れというのはじつのところ、
半端なものではないと思う。
行くところまで行って
もう振り返らない、というところまで
身も心もずっぷり納得してるんだと思います。
だから、いいのです。
もっとがんばれたのでは、とか
自分がいけなかったんだ、ということは
ないと思います。
終わらせることができて、前を向くことができて、
よかった。

「どうしてもそこに行けなくて」
というのは、すごいですねぇ。
当事者でない者が軽々しくいうのはなんですが、
それはもう、
「限界までがんばった」
ということなのではないでしょうか。

好きになったり、思いを告げたり
といった局面を超えて、
いっしょに「暮らす」ようになると、
やはり、恋愛は変質していきます。
それはもう、よくも、わるくも。
そもそもは他人であるふたりが
距離を縮めるというのは、
よろこびだってもちろんありますけど、
すり減ることも、やっぱりあるんですよね。

生きていくうえで、
あらゆる選択は、答え合わせができない。
前を向いている今が
きっと正しいのだと思います。
それでは、また、次回の更新で。

2014-07-05-SAT

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