書籍化とCD発売のおしらせ 恋歌くちずさみの広場 こちらをクリック 文庫本『恋歌、くちずさみながら。』を購入する方はこちらからどうぞ。 文庫本『恋歌、くちずさみながら。』を購入する方はこちらからどうぞ。

 『その目に映して』
 aiko

 
2006年(平成18年)
 アルバム『彼女』収録曲

好きな人と
くっつけなくても幸せなんて、
両想いがゴールじゃないなんて
(ice)

遠くで見てますから声はかけませんが
以上も以下もなくただ想っています


中学の3年間、
ずっとずっと彼のことを追いかけていました。

初めてのバレンタイン、
こっそりロッカーに忍ばせたものの、返事はなく。
しかし、つらくなることはありませんでした。
毎年同じクラスだったのも手伝って、
振られたのなんてなんとも思わずに片思いを続行。

不思議と、別の子が彼を好きだと言っていたり、
彼が誰かと付き合い始めたと聞いたときも、
なんとも思わなかったんです。
「付き合いたい」と思ったことは
一度もありませんでした。
恋に恋してる、
そんなろくでもない感情なのかなと
思いかけていました。

この曲に出会ったのは中学3年の頃でしたが、
わたしの思いが覗かれてるのかと
思うほどぴったりで、衝撃でした。
好きな人とくっつけなくても幸せなんて、
両想いがゴールじゃないなんて。
こんな形でも恋なんだよ、
と自分が許された気がして、
もっと彼を好きになりました。

彼と同じ高校を目指したものの、わたしだけ撃沈。
迎えた卒業式。
2度目の告白は彼の友人を通して、
ラブレターを渡すことにしました。
「好き!」とだけ書いた、
ゴーカイでかわいげのない手紙。
迷ったものの、やっぱり返事がほしくて、
自分のメールアドレスを添えて。

お返事は、「ありがと!」の一言でした。

彼が今もどこかで頑張っていると聞くと、
顔と胸が熱くなり、今の恋人を差しおいて、
彼を見に行きたいような気持ちに少しだけなります。
決して「会いたい」ではないんです。
駆け引きナシ、よけいな思惑一切ナシの
あんな純粋な恋は、今後もうできる気がしません。

母校であるその中学校に、
現在 教育実習に行っています。
懐かしい校舎を走り回る生徒たちの
無垢な笑顔だけが救いの毎日。
そんな今、よけいに彼を
鮮明に思い出してしまったので、
書きたくなりました。

(ice)

はーー、両想いがゴールじゃない恋。
「付き合いたい」どころか
「会いたい」すらも違う、それでも恋。

この連載がはじまってから、
ほんとうに、恋にはいろんなかたちが
あるのだなと痛感させられます。
だからこそ、恋の歌も、
映画も、ドラマも、漫画も、物語も、
尽きないのでしょうね。

思い出す「わたし」が
母校の教育実習に来ているというのも、
投稿のラストシーンとして素敵ですね。
そして、最近の、
ぼくらよりは少し若い世代の方から
送られてくる恋の思い出には、
aikoさんの音楽が流れていることが
ほんとうに多い。

「好き!」に対する
「ありがと!」というお返事は、
これ、なかなか、こたえますよね。
ぼくにも経験がありますが、
「告白に対して感謝」というリターンは
表現のむずかしいダメージを与えてくれます。
「ごめんなさい!」と言われれば、
空振り三振でアウトになるような
はっきりとした落胆で終われるのですが、
「ありがとう」というお返事は‥‥
ファールフライでアウト、みたいな?
(よく知らない野球でたとえてますが)
やわらかーなダメージがあります。

でも(ice)さんの場合は
そういうことでもないのかもしれない。
なにしろ「色よい返事」のための
告白ではないのですから。
はーー。
ほんとにいろんな恋があります。

「ありがと!」
いいよねえ。
こたえるけど、いい。
「ありがとう」
「ありがとー」
「ありがとうね〜」
きっといろいろ考えたんでしょうね。
いちばんきっぱり、まっすぐな返礼。
笑い泣きしてあきらめられそうだ。
うん。(‥‥ちょっと去来。)

aikoさんの曲ってほとんど知らなくて。
歌詞を読んでみたら、
手紙か日記スタイルの
(メールやブログじゃない感じがするのは、
 世代感覚なのかな?)
ていねいなものがたり。
しみました。

ほんと、彼のその「ありがと!」は
気持ちいいですね。
だってさ、「ごめんなさい!」って言うほど
告白される人は悪いことはしてないと思う。
だから、「ありがと!」はいちばんいい。
ほんとうに、ありがと、と思ってたんだと思う。

恋が成就した相手とは、そのあと
いろんなごちゃごちゃがあって
別れたり、すごい友情になったりしますが、
もしかしたら、自分を最後まで元気づけてくれるのは
好きになってくれた人たちなんじゃないかなぁ、
なんて思ったりもするのです。

このところ、相手の幸せを思うことや
ただ好きでいること、という投稿が多い気がするけど
気のせいかなぁ。

春休み期間中は恋歌の毎日連載をする予定です。
ちかぢかまた、お会いしましょう。

2014-03-19-WED

最新のページへ
感想をおくる ツイートする ほぼ日ホームへ
(C) HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN