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 『乾杯』
 長渕剛

 
1988年(昭和63年)

初恋は、
相手の幸せで
自分も幸せになれる、
綺麗な気持ちを
教えてくれた。
(ふじさん)

遥か長い道のりを 歩き始めた
君に 幸せあれ!


小学3年生の時、はじめて恋をしました。

同じクラスのその人は勉強もスポーツもできて、
学級委員で、おまけに誰にでも親切で。
完璧な人っているんだなあ、くらいにしか
思っていなかったんだけど。

勉強もスポーツもあまり得意じゃなかった。
転入したばっかりだったこともあり、
クラスメイトとわいわいするよりも
一人で絵を描いたり図書室で本を読んだりする方が
好きだった私。
おまけに女の子らしくもなく、学校の後は
弟と近所の男の子たちとミニ四駆郎のまねをして
ミニ四駆の改造にいそしむ日々。

ある日図画工作の授業中に、
版画の刷り方が上手くできたため先生の手伝いをして
他の子が刷るのを手伝っていたとき。
学級委員のその彼を手伝い終わった後、彼がふと 
「**は本当に、絵とかこういうの、上手いよなあ!
 尊敬する」
と、満面の笑顔で言ったのです。

私は一瞬で恋に落ちてしまった。

りぼんやなかよしを読んだことはあっても、
どちらかというと少年ジャンプを
発売日に走って買いに行く私は、
いきなり訪れたその感情にただただとまどうばかり。
それからというもの、あの笑顔が頭から離れないのに、
彼を目で追うのに、いざ話す機会があると、
顔が真っ赤になるわ、
上手くしゃべれずぶっきらぼうな態度をとるわで
大変でした。

そんな調子で告白なんてとんでもなかった。
私は遠くから彼を見れるだけで幸せだった。
すれ違っただけで1日がキラキラしたり、
廊下に張り出された遠足の写真の中で
彼が写っている写真をこっそりオーダーしたり。

やがて中学校に入り、彼は生徒会長に。
私は美術部で、誰よりも早く美術室に行って
陸上部の練習するグラウンドが見える
窓際のイーゼルをとって、油絵を描きながら
彼が走ったり友人と笑う姿を見ていた。

中学の卒業式のとき、別々の高校に行く私は
もうこれが彼を見る最後の日だと分かっていた。
『乾杯』は結婚式の歌だけれど、
私たちの中学校の卒業式の歌の一つに入っていて。
彼が卒業証書を受け取りに舞台に上がるとき、
この部分が頭の中をずっと流れていた。
もう会うことはないだろうけど、
どうか彼がいつまでもまっすぐ、幸せに
生きて行きますように。

20年近く経って、つい最近中学校時代の友人から、
同窓会の写真付きのメールが。
その中に彼はいた。同じ笑顔で、全然変わってなくて。
「みんな**にも会いたがってるから、
 今度**が帰郷したら同窓会しようね」
という友人の言葉にとっさに浮かんだ言葉は。

絶対無理!!!

なんと言うことでしょう。
これほど時が経っても
私はこれっぽっちも成長していなかった。
彼と会うことを想像しただけで、顔が赤くなって
上手く話せないでいる自分が目に浮かぶとは。
呆れると同時に、懐かしい初恋の
レモン味的な甘酸っぱさが
いまだに鮮明で嬉しくなりました。

数日前、彼が夢に出てきました。
夢の中では私たちは小学生で、友達で、
ミニ四駆の部品の話で盛り上がりながら
一緒に下校してた。

私にとって初恋は、見返りを全く求めず、
ただ相手が幸せなことで自分も幸せになれる、
綺麗な気持ちを教えてくれた。

目が醒めて隣で眠る夫をみて、
あれしてほしい、こうするべきだ、という
恋愛や夫婦のゴタゴタよりも、
一番大事なのはそういうことなんだよなあ、
と思いました。

(ふるさとの君)

『乾杯』は、1980年に発表された
同タイトルのアルバムに収録されましたが、
シングルカットはその8年後でした。
今回は、初リリースとなったアルバムではなく、
1988年にシングルとなった
ジャケット写真を掲載しました。
長渕剛さんの、まぎれもない名曲です。

3年生から中学卒業までの長い初恋ですね。
たしかに、その年代の恋は
「見る」「さがす」ということがおもな行動で
それ以外のことは、あまりないのかもしれません。
卒業式のとき、彼のうしろ姿を見て
「幸せあれ」と思う瞬間は、たいへん感動的で
ぽろぽろと泣いてしまいました。

すばらしい初恋のお話、送ってくださって
ありがとうございました。
ふるさとの君は、あんがい
いまでも彼のこころにいると思います。

この「恋歌くちずさみ委員会」という
コンテンツを立ち上げたとき、
大切なキーワードにしていたのが、
「初恋」ということばでした。
いまも、「初恋」はこのページのテーマです。

「初恋」の顛末がつづられたこの投稿、
とくに劇的な出来事が
起こるというわけでもないのですが、
すごく心に残ります。

初恋の人と、長い時間を経ても
照れてぜんぜんしゃべれないということが
とても感動的に思えました。

「初恋は、見返りを全く求めず、
 ただ相手が幸せなことで自分も幸せになれる、
 綺麗な気持ち」

ほんとに、そうですね。
すばらしい投稿を
どうもありがとうございました。

夢の中で下校しているふたりの様子が印象的です。
なんて幸せな時間でしょう。
それが夢だとわかっていてもうらやましい。
ミニ四駆の部品の話で盛り上がりながら
てくてく歩くその時間のような‥‥
そういうことのために、ぼくらは生きているんじゃないかと、
大げさなことまで思ってしまうくらいです。

「尊敬」「友だち」
このふたつのキーワードが
個人的にどんどん大きな存在になっている気がします。
年齢なのでしょうか。

ともあれ、そう、
甘ずっぱい初恋の投稿をありがとうございました。
やっぱり、いいものですね。
ずっと聞いていたいです。
「初恋ノロケ話」、大いに歓迎いたします。

小学男子は、いま思うとかなり
愛すべきアホウも馬鹿も多かったですけど、
「ちゃんと気付いてる」子も
いたんだなって思います。
なににって「女の子らしくない」って
じぶんで思っているような女の子にも、
ちゃんとその子だけの、
その子がその子であることの核になっている、
そんな部分があることをわかってる。
そういう子は誰にでもまっすぐ、
ものが言えたりするんですよねー。
(女の子につい妙な接し方をしちゃう
 一般男子とちがって!)
彼がかけてくれたことばは、
ここまで色あせずに、
(ふるさとの君)さんのこころを
あの頃のままでいさせてくれる。
すごいことだなー!!!
そしてなんだかうらやましい。
コノコノ!

ではみなさまよい週末を!

2014-03-15-SAT

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