『HANABI』
 Mr.Children

 
2008年(平成20年)

彼の全部が好きだ、って
こういうことなんだろうな、
と思いました。
 (もくもく)

めぐり逢えたことでこんなに
世界が美しく見えるなんて


3年と半年、大学時代のほとんどを
一緒に過ごしました。
サークルの先輩で、
初めは「尊敬」だった彼への気持ちが
恋に変わっていくのには、
あまり時間がかからなかったように思います。

まだ「先輩と後輩」だったころ、
大学1年の11月に一緒に花火を見に行きました。
寒かったので花火大会の運営の人が
毛布を配ってくれたのですが、
カップルだと思われて
ふたりで一枚しか毛布がもらえず、
おなじ毛布にくるまりながら一緒に花火を見たときは
とてもドキドキしました。
腕がたまに触れたりするたびに、
顔が赤くなっていたと思います。

同じコミュニティ内の恋愛だったので
友達にはよくからかわれて、
「彼のどういうところが好きなの?」と聞かれました。
そういうときは、あふれるくらいの人への優しさや、
誠実さや、
わかりやすい彼の「良さ」を答えていましたが、
料理ができないところとか、すね毛が薄いこととか、
酔っぱらうとすぐ寝ちゃうところとか、
なんだかよくわからないところにも
いとしさを感じて、
彼の全部が好きだ、ってこういうことなんだろうな、
と思いました。

下北沢で一緒に古本屋巡りをしていたとき、
となりを歩いていた彼が
急に道の反対側へと
直角に走り出したことがありました。
なんだろう、と思った瞬間、
女の人の叫び声が聞こえて、
坂道で赤ちゃんを載せたベビーカーが転がって、
危うく車に轢かれそうになっているのを
間一髪で彼が止めたことに気がつきました。
一歩間違えば自分が轢かれていたかもしれないのに。
心底ほっとしたように
お母さんと赤ちゃんに笑顔を向ける彼を見て、
「ああ、本当にこの人と出会えてよかった」
と思いました。

学生生活は終わり、彼は昔からの夢をかなえて
遠い町へと旅立ちました。
厳しい仕事を選んだ彼と、
まだ学生のままだった私の距離は、
どんなにもがいても離れていきました。
今、彼には新しい恋人がいるそうです。

たぶん、もう終わらせなくてはいけない
恋なのだと思います。
だけど、それにはまだ
もう少し時間がかかりそうです。
私は11月の花火を思い出しながら、
彼の好きだったミスチルのこの歌を
今も、くちずさんでいます。

(もくもく)

その人の全部が好きだという感覚は
きゅーんとするほど、よくわかります。
眉間のしわとか、はねた髪とか、転んだときの姿とか
目に焼きついてしまい、いとしくてたまらない、と
私もよく思ってました。
何をされても好きになってしまう感じ。

この恋は、おっしゃるとおり、
もう終わらせなきゃいけないけど、
時間がかかってもいいのじゃないかな、と思います。
ゆっくりゆっくり、前を見ていると、いつか
「そんな人もいたっけな〜?」と
彼のことがすっかり薄まってしまうほどに
大好きな人が、また、あらわれますよ!

まだふっきれていないのかもしれませんが、
それでも、すがすがしい投稿だと思いました。
「彼のぜんぶが好き」
そんなふうに言える人のお話は、
なんだかこっちにまで幸せが移動してくる感触です。

(もくもく)さんはまたきっと、
「ぜんぶ好きな彼」に出会える女性なんだと思います。
たとえ時間がかかったとしても。
そう感じた理由は‥‥なんでしょう‥‥
「尊敬からはじまる恋」をしそうだから、かな?
それって強いとぼくは思います。

それにしても、かっちょいい彼だなぁ。
助かった赤ちゃん、よかった!!

含む含まれるで言うと
尊敬 ∈ 恋愛感情、ですもんねえ。
(記号合ってる?)
尊敬できないけど好きになっちゃった、
という例もあるのかもしれないけど、
理想的な恋はそんなふうだと思うな。

「料理ができないところとか、
 すね毛が薄いこととか、
 酔っぱらうとすぐ寝ちゃう」。
ひとから見たら「なんで?」と思う
そんなところまでもがいとおしい。
長いつきあいになるとそんなことは
言ってもらえなくなるのだけれど、
そうだよな、そういうものだったよなー。
初心にかえらなくちゃ。

エピソード中好きなシチュエーションは
「下北沢で一緒に古本屋巡り」。
誠実そうなふたりが浮かんできます。
(もくもく)さん、時間がかかるかもしれないけれど、
大事な思い出はたいせつに仕舞って、
一歩ふみだせたらいいですね。
春ももう近いし!

あまりにその渦中にいるときって、
うまくことばにさえ、できないと思うんです。
高ぶってたり、混乱があったり、
楽観と悲観が入り交じったりするから。

で、なんでも話せる友だちに
少しずつ話すことによって、
ようやく落ちついていったり。
落ちついたあとは、
少しずつ笑い話にもなったり。

そういう意味では、
こうして投稿してくださっている時点で、
ずいぶん、「終わって」いるのかもしれません。
そして、「終わらせる」ことは、
「なかったことにする」こととは違いますものね。
むしろ、逆かもしれない。

ここへ、恋と恋歌を投稿するというのは
そういう意味もあるのかもしれませんね。
みなさまの投稿、お待ちしています。

2014-02-15-SAT

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