『I LOVE YOU』
 サンボマスター

 
2007年(平成19年)

そんなつもりは
なかったんだけどなぁ。
(つきのはな)

僕の事 愛しい人と 思っておくれよ


そんなつもりはなかったんだけどなぁ。

正直に言うと外見がタイプじゃなくて。
内面はすごく好きだったけど、
同じような将来の夢を見る、
何でも話せる同志っていう感じだった。
告白された時、付き合っていくうちに、
恋人として好きになれるかもな、なんて打算的な考えで。
大きな悲しみの後だったから、
正直、誰かに側に居て欲しかったし。
でも付き合って2年くらい経っても、
気持ちに差があるな、と感じていた。
でも諦めずにずっと側に居てくれた。

何もできなくなって、引きこもった私が、
彼の影響でバンドやスポーツ観戦が好きになって、
二人で眠気こらえてまで語るようになっちゃって。
サンボマスターのライブでは号泣しちゃうくらいで、
アルバム買ってこの歌を聴いた時は
こんな気持ちでずっと居てくれたのかも、
なんて胸をわしづかみされちゃって。
付き合って5年後には結婚して、彼の実家で家族と同居して、
遠く知らない土地で正社員として初めて仕事もして、
家事もよくやってる、
なんて褒めてもらえるようになっちゃって。
今、おなかに赤ちゃんがいて、退職したから、
仕事にかまけてやって来なかった新聞の熟読と
お裁縫とお料理を趣味にするようになっちゃって。

煙草もあまり好きじゃなかったのに、
隣で吸ってる姿が結構好きだとか、
メガネが似合う所も、
お肌がぷるぷるで恰幅のよい所も、
気付けば夫となった人のことが
すっかり愛しい人になっちゃって。

大きな悲しみは忘れられないし、
たまに会いたくて泣いてしまうけれど、
楽しそうなことを見つけてやってみたら、
結構笑って過ごせるもんだって思えるようになっちゃって。
そしたら、このおなかの子は、
もしかしたら生まれ変わりかも、なんて思っちゃったりして。

残されると寂しいから、
俺が先か、初めて二人で観た映画みたいに、
一緒に一生を終えられるといいね、
なんて言うから、しょうがないなぁ。
そりゃ8年前みたいに
寂し過ぎてどうしようもなくなると思うけど、
少し歩けるようになったら、君のことを思い出しながら、
君を私の涙にして生きるのも悪くないかもな、
って思うようになっちゃって。

そのくらい、まんまと恋に落ちちゃった。
この子が無事に生まれたら、溺愛するだろうから、
私、子供に嫉妬しちゃうかもなぁ。
煙草もすっかりやめて、
子育てを楽しみにしてて、
せつなさで溶けそうなのは私の方だ。

告白された時、そんなつもりはなかったんだけどなぁ。
(つきのはな)

ことばの運びが心地よく、
ぜんたいに流れる肯定感も魅力的な投稿でした。
最初と最後に置かれている、
「そんなつもりはなかったんだけどなぁ。」
という一行からは、
「でもなかなか幸せなんですよ」が伝わってきます。

(つきのはな)さんのなかにある「大きな悲しみ」は、
きっとずっと残り続けるものなのでしょう。
それをやさしくやわらげてくれる新しい人があらわれて、
その人にこころが傾いて、よかったなぁと思いました。

(つきのはな)さんのまわりににある「生活」は、
いつかその「大きな悲しみ」を
忘れさせてくれるかもしれませんね。
「完全に」は無理にしても、「かなり」。
子どもの誕生というのは、それほどのことだと思うのです。

もうこのまんま、そのまま、
山口隆さんに曲をつけてもらって
早口で唄ってほしい。
最後は絶叫で。
それを聴いて涙したいなあ。

「大きな悲しみ」は
忘れられないものですけれど、
それでもすこしずつすこしずつ
薄まっていってしまいますよね。
個人的な体験ですけれど、
あんなに泣いて暮らしたのに
現実には薄まっていってしまうことが
なんだかせつなかった。
覚えておきたかった。
いつでもぼろぼろ泣けるくらいに
思い出したかった。
こないだ「その人のおかあさん」と
電話で話してたら
「もう、生まれ変わっちゃってるんじゃない、
 あのこ!!」
なんておっしゃってたのを
ぼくも笑って聞けるようになってました。
それもまたいいかなって思います。

うわー、熱い。熱いよ、ヒューヒュー。
ホントにサンボマスターの歌詞みたいだ。
こんなふうな文章を読めるのは
耳が気持ちいです。

これもう、ハッキシいいましょう。
彼ががんばったんですね。
熱いくらいの思いが輪になって
「そういうルールで」
高まっていくんです。
(つきのはな)さん、
いい感じで負けましたね。
女は、負けるが大勝ちであります。

よっ!

よっっっ!

赤ちゃんといっしょに、ずーーーっと、
おしゃーーーわせに!!

いいですねぇ。
「そんなつもりはなかったんだけどなぁ。」

ていうか、理想通りの相手と
理想通りの恋に落ちるなんて、
ありえないもんね。
むしろ、
「そんなつもりはなかったんだけどなぁ。」
こそが、恋愛の深淵なる正体かも。

お話を勝手にひろげると、
やがてそのお子さんが大きくなって
ある日、ふと聞くんじゃないでしょうか。

「なんでママはパパを好きになったの?」

「うーん‥‥
 そんなつもりはなかったんだけどねぇ。」

「恋歌くちずさみ委員会」、
みなさんの投稿をお待ちしています。

連載をまとめた
『恋歌、くちずさみながら。』という
本も出ています。

酒井駒子さんの素敵なマグカップがもらえる
「冬のほぼ日ブックスフェア」
やってますので、この機会にぜひどうぞ。

2013-12-18-WED

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