『プリズム』
 YUKI

 
2002年(平成14年)

その涙は、
優しさへの
感謝の涙でした。 
  (カメコリニスタ)

私はこのまま 信じてゆけるわ
愛の強さゆえ 優しき獣ゆえ

小さい頃からの夢だった保育士になった当時20歳の私は
たった1年で仕事を辞めたいと考えるようになっていました。
その頃のことです。

人間関係のストレスから
職場が見える角を曲がると涙が止まらなくなる、
2回も胃潰瘍になり入院し、
2回目の胃潰瘍の時には精神的に参ってしまい、
精神を落ち着ける薬を処方されることになるほどでした。

大好きな子供たちがいるのに仕事が辛いことや
同僚の皆に迷惑を掛けているという罪悪感で、
夢だったはずの仕事から早く逃れたいとすら
思ってしまっていたんです。

そんな辛い時に支えてくれたのは
その時付き合っていた同い年の彼氏でした。

その彼氏とは15歳から付き合っていて、
私が保育士になりたいという夢を持っていることも
勿論知っていて応援してくれていましたし、
その為に私が短大で勉強してようやく夢が叶った時に
一番喜んでくれた人で、彼は当時、まだ大学生でした。

そんな風にずっと傍で応援してくれていた彼に
職場の環境が辛くて辞めたいだなんて言えず、
体調を崩しても本当のことは言えませんでした。

ある夜、彼から毎日の習慣だった電話がかかってきて、
その時は他愛もないことを話して
「これから飲み会に行ってくるね。」
と言われて電話を切りました。

翌朝、やはり出勤前には体調も気持ちも最悪で、
「行きたくない! でも行かなくちゃまた迷惑になる!」
といつも使っている駅の改札をくぐると、
階段の前にしゃがみこんでいる彼の姿がありました。

そこにいるはずがない彼の姿でした。
大学のそばで一人暮らしをしていた彼と私の家は
電車で2時間はかかる距離だったし、
昨夜は飲み会で遅かったはず。

全てがわけがわからず、
彼にどうしてここにいるのか尋ねると
「昨日の電話の声がなんかいつもと違って心配になった。
 飲み会終わりの始発で来て待ってたんだ。
 何時に出勤してもこれなら会えると思ったから。」
とちょっと眠そうな顔で
私が来るのをずっと駅で待っていてくれたんです。

その彼の優しさに
彼の前では我慢していたものが出てしまい、
今までのことを全て話しながら大泣きしました。

隠していても彼には私が悩んでいたことも
体調が優れないこともわかっていたようでした。

ちょっとお酒くさい彼と電車に乗って
一緒に音楽を聞きながら通勤しました。
それが私の好きなYUKIさんの「プリズム」でした。
「いじわるな人が とやかく言うけれど
 私は、どこかで まちがえたかしら?
 今はわからない 答えは空の上」
という歌詞がまさにその頃の私の気持ちで、
毎日このプリズムを聞いて勇気づけられていたのです。

電車の中で彼から
「頑張らなくていいよ。ダメなら帰っておいで。
 これからのこと一緒に考えようね。」
と背中を押されて電車を降りた私は
やっぱりあの角で涙が出ました。

でもその涙は「行きたくない」という涙ではなく、
「頑張らなくていいよ」
と言われた優しさへの感謝の涙でした。

結局、その半年後、私はその職場を辞めました。

とても辛いこともあったけれど、
私が元の元気な私に戻るまで彼は
私の両親と一緒にずっとずっと支えてくれました。

今まで、彼から沢山の思い出をもらったけれど
私の一番大切な思い出は、一番楽しい時のことではなく、
私の背中を押してくれたあの人生で一番辛い時のことです。

そしてそのことを思い出す時には、
頭の中に必ずプリズムが流れてきます。
あの頃とは違い、
「私はこのまま 信じてゆけるわ
 愛の強さゆえ 優しき獣ゆえ
 花咲く丘まで 口笛吹いてこう
 喜びを抱いて 見果てぬ空の上」
と私が彼を信じてこのまま一緒にいたいと思う気持ちと
重なる歌詞が鳴り響きます。
彼とは付き合って11年目の私の誕生日に結婚しました。
結婚式では私にとって大切な思い出の曲でもある
プリズムを流してもらい、
彼との結婚を沢山の人達に祝福してもらいました。

あの時、彼が私にしてくれたように
私も彼の背中を支えながら
ずっと歩いていこうと神様に誓いました。

(カメコリニスタ)

この投稿を前に、
どういうコメントをぼくは書けばいいのでしょう。

まずは、読ませてもらったことに感謝です。
胸がいっぱいです。

「優しい」ということの
強さと美しさについてあらためて考え、
「優しい」は、やーっぱり大切なんだと思いました。
単に、甘く柔らかく接するだけでなく‥‥
この投稿を読んで感じた「優しい」は、
信頼と尊敬に分解できるものだと思いました。
夢に向かって努力を重ねきた彼女のことを
誰よりもわかっている彼からの信頼。
「頑張らなくていいよ。」は、
彼女を強く尊敬する人のことばです。
「ダメなら帰っておいで。」
『きみのすばらしさは、ちゃんとぼくが知ってるんだから』
‥‥と、そんな、つづく言葉を想像したら、もう、
どんどん気持ちがあふれてきちゃって‥‥
ああー、おめでとうございます!

最後、「神様に誓いました。」って書かれていますね。
それはほんとうに心から、そうだったんだろうなぁ。
いいなぁ‥‥いい! ずっとずっとお幸せに!!

なんだか自分がふたりの同級生で、
結婚式に出席し、こころから祝福しながら泣いてる
ともだちみたいな気分で読みました。
だいじな思い出を書いて、投稿くださり、
ほんとうにありがとうございました。
ふたりがお互いのすばらしい伴侶となるのは、
もうずっと前から決まっていたことなのかもしれません。
いやしかしほんとうに彼、やさしいし、よくわかってる。
すばらしい男だと思いました。

YUKIさんの「プリズム」には
ちょっと悲しい部分もあるけど、
歌の持つ強いメッセージは、まさしく
(カメコリニスタ)さんの思い出と重なりますね。

男の人は
優しいのがいちばんやで〜。

何度も書いたコメントですが、
もういちど。
優しい人がいちばんです。

苦しいときに、なんでもないよ、
好きだよと言ってくれる人がいいです。

そして、我々は、
そうやって救ってもらったことを
忘れないようにしたいですね‥‥。
ご結婚おめでとうございます!

改札をくぐるとそこにいたということは、
朝の混み合う駅の構内の目立つ場所に
座り込んで寝ていたという彼氏。

上の3者が素敵なコメントを
残してくれたという安心感から、
まずは「ムチャしよるなぁ、彼氏」と
ひと言、突っ込ませていただいて。

「恋」って、かならずしも、
「人生」とべったり重なっているものでは
ないと思うんですけど、
大切な「恋」が続いていくと
やがて「人生」にくっついていくんですね。
その節目節目に、こういう、
「大切な日、大切な場面」があるのかもしれません。

なんだか、読んでいて、
ああ、このふたりが結婚してよかったなぁ
と思いました。

今日も、大切なお話をありがとうございました。
さぁ、「恋歌くちずさみ委員会」は、
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明日も更新しますよー。

 

2013-05-21-TUE

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