『言葉にできない』
 オフコース

1981年(昭和56年)

 このフレーズは、
 今でも彼に対する
 私のキモチそのものです
 (風花)

あなたに会えて本当によかった
うれしくて うれしくて
言葉にできない

恋歌。

胸にすぐに浮かぶ大事な人がいるのに、
恋歌が思い浮かばない。
ずーっとそう思っていたのに、
突然降ってわいたように(?)
「あれじゃん、あれ」っていう歌を
思い出してしまいました。
満を持して投稿。
だって誰かちゃんとした人に聞いてほしかったから。

あの時私は札幌の、とある学校の教師をしていました。
彼は教育実習生として来た22歳の男の子。
私は8歳年上。
すごく盛り上がる、
ある意味Hなシチュエーションですね。
お互いに良いと思っているのはすぐに分かりました。
実習期間の間に仲良くなって何度かご飯にも行きました。
元気でくったくのない、
私にとっては奇跡みたいな男の子。
でも当時二人ともお付き合いしている人がいたし、
連絡先は交換したけれど、
まだちょっとした知り合い程度でした。
そして彼は実習を終え東京の大学に戻って行きました。

私は当時付き合っていた彼とすったもんだが
ずーーーっと続いており、
その年の秋、気分転換に東京に行きました。
男の子は東京にいる間中、私のエスコート。
いやー楽しかったこと楽しかったこと。
そこから始まりました。
遠距離だったけど、時間をやりくりして
東京で、札幌で
それこそ奇跡みたいな時間を重ねました。
そのとき偶然コマーシャルかなんかで聞いた曲が
「言葉にできない」。
あの短いフレーズが一番楽しい時を過ごす
二人の胸に沁みたんですねー。
でもそこはコマーシャル。
サビしか聞いてないので、
あんな寂しい歌だとは‥‥後から全文知って愕然‥‥。

今私の夫は当時のすったもんだの彼です。
長い年月をかけて全てを清算して私のところに来ました。
あの男の子と一緒になることはなかったけれど、
今でも知っていてほしいと思うことがあります。

「俺の目の前にいる女性は、こんなに素敵な人なのに」

って言ってくれた言葉。
出口の見えない恋愛に打ちのめされて、
自信とか希望とかそんなものは
どこを探しても見つからなかった私を救ってくれた。

「言葉にできない」って、
私たちの関係をそのまま予言するような内容だったけど、
「あなたにあえて本当に良かった。
 嬉しくて嬉しくて言葉にできない」
っていうフレーズは、
今でも彼に対する私のキモチそのものです。
(風花)

(風花)さんのなかで、
彼は、永遠に「男の子」なんですね。
そのことが、なんだか、せつなくって。

そして、だからこそ彼の思い出が、
(風花)さんを救ってくれた一言とともに、
いまも宝物なんだろうなあと思いました。
その一言があったから、
“すったもんだの彼”と一緒になれたのかも。
そして、これは想像だけれど、
恋愛だけじゃなくて、人生のいろいろな局面で、
その言葉はきっと(風花)さんを
救ってきたのじゃないかなあ。

「言葉にできない」は
“嬉しくて 嬉しくて”
言葉にできない──と歌います。
そしてじっさいは、それは、愛が終わったあとの思い。
小田和正さんののびやかな高音で聴くと、
またいっそうせつない感じなんですよね。

この「恋歌くちずさみ委員会」で
語られる昔の恋の話は、
切なさや悲しさとともに振り返られるものが多く、
感謝や美しい思い出として
肯定的にとらえられているとしても、
やはり、二度と戻らない刹那なものとして
しんみりと取り扱われていることが多いと思います。

そんななか、今回の投稿で印象的だったのは
「いやー楽しかったこと楽しかったこと」という
なんともからっとした気持ちのいいフレーズ。

もちろん、当時の当人にとってみたら、
そんな簡単なことじゃなくて、
どろどろもしたであろう日のなかで
もがきながら、やっとのことで得た
つかの間の逢瀬だったのだと思うのですが、
どうあれ、いまそんなふうに言えるということ自体、
なんだかうらやましいなぁと感じました。
きっと、いまが健全に充実しているからこそ、
そんなふうにはっきりと言えるのでしょうね。

読みながら、どうなることかと思いましたが、
すったもんだのほうの彼に落ち着いて、エンドマーク。
ある恋の物語の観客として
勝手なことを言わせてもらうならば、
この「すったもんだのほうの彼」、
なんかけっこう好感が持てるのですが。
いや、ぜんぜん、詳しいことは
わかんないんですけどね。

満を持しての投稿、ありがとうございました。
とても光栄に思います。

そうですね、やっぱりぼくもそう思います。
「すったもんだの彼」、
つまり今の旦那様との関係が
十分にあかるく安定しているからこそ
(いろいろあるかもしれませんけれど)、
この思い出をカラッと語れるのでしょう。
(風花)さんの笑顔が
ずっと見えているような、そんな投稿でした。

8歳年下の彼は今、どうなんだろう?
しあわせでいてほしいですよね。
‥‥や、きっと大丈夫。そんな気がします。
(風花)さんのことをときどき思い出しながら
(強烈な体験だったと思いますよー)、
とくべつな誰かを大切にしているような気がします。

互いに「感謝」をしている感じが、
この投稿の魅力だと思いました。
ま、浮気‥‥ともいえますが、結婚前ということで。
ま、そこはひとつ。

私は前回のこのコーナーで
「会えてよかった」は
言われたい言葉ナンバー・ワンだ、
なんてことを言ってしまったんですけれども、
あれから数日経ってふと気づいたんですよ。

「会えてよかった」という言葉は
別れのときに出てくるんだな、と。
恋のはじまりは、そんなんじゃない。
むしろ「会わなきゃよかった」とすら
思うことでしょう。
(キョンキョンの「あなたに会えてよかった」
 別れの歌ですもんね)

だからいま、彼のことを振り返って
「あなたにあえて本当に良かった。
 嬉しくて嬉しくて言葉にできない」
と思うのは、そのとおりだ、すばらしい! と思います。

正面から褒めてくれたり
心配してくれたりする彼は
思い出の中ででも、大切にしないといけませんね。

でも、長い年月をかけて「清算」してやってきた
旦那さまも気になります。
ほほう。ほほう。清算かぁ。
そっちの物語は、また、
別の恋歌に乗るんでしょうね。

ではまた。
次は土曜日に。

 

2013-02-06-WED

最新のページへ
感想をおくる ツイートする ほぼ日ホームへ
(C) HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN