『奇跡』
 くるり

 
2011年(平成23年)


『普通の幸せ』を
手に入れるために
ほんとうにがんばりました。
 (男子自由形)

神様ほんの少しだけ
絵に書いたような幸せを

くるりを聞くようになったのは、
社会人になってからできた彼女の影響でした。

何度かデートを重ねても、なかなか決定的な
“ひとこと”を言わないわたしに、
彼女はイヤホンを差し出しました。

しばらく彼女のおすすめの曲をふたりで聞いていました、
片方ずつのイヤホンで。
コードの長さ分の距離に彼女がいることに
心臓がばくばくしたのを覚えています。

舞い上がってしまい、
どんな曲があったかは覚えてませんが、
その中にくるりの曲もありました。

いくつかの曲に励まされたんでしょう。
わたしはイヤホンを外すと想いの丈を彼女に伝えました。

彼女は「やっと言ったね」というような表情で
OKしてくれました。

2年が過ぎ、結婚の約束も交わした矢先、
彼女が病気になりました。

普段めったに泣き言を言わない彼女は
治療にも全力投球でした。
『普通の幸せ』を手に入れるために
ほんとうにがんばりました。

そんな彼女が先日亡くなりました。

彼女を支えるかたわら、この歌を聞いて
「神様、ほんの少しだけ幸せを分けてください」
と願ったものです。

どんなにつらくても治療をやめると言わなかった彼女は
『ほんの少しの幸せ』を目標に
がんばったんだと思います。

今は、幸せな時をくれた彼女に感謝し
送り出す準備に追われています。
『掛け違いのボタン』でケンカし、
困ったことも良い思い出です。
(男子自由形)

彼女が亡くなって、まだ、まもないときに、
このメールを書いてくださったのですね。
御冥福をお祈りするとともに、
「ありがとうございました」と
言いたいきもちでメールを読みました。

片方ずつのイヤホン。
やっと言えた思いの丈。
結婚の約束。
病気の発覚。
全力投球の治療。
けれども。

先日も書きましたが、
病ってあんまりです。
「どうしてなんですか」って
神様に訊きたくなります。
そしてもちろん答えはどこからも
返ってくることはありません。

ことし親友を亡くして思ったのですが、
「どうしていなくなっちゃったんだよ」
という気持ちとともに、
「これからも一緒だよなあ」
という気持ちが、
ちいさな花が咲くみたいに生まれました。

くりかえしますが、
ほんとうにメールをくださり
ありがとうございました。
(男子自由形)さん、しっかりねー!

勝手な思い込みなのですが、
ここへおたよりをくださるみなさんに対して
どうにも近い距離感、親密さを感じる自分がいます。
たいせつな思い出をこんなに心を込めて
聞かせてくれるからなのでしょう。
どうしても近しい人に思えてなりません。
ですから(男子自由形)さんの、
こうした投稿は‥‥とてもつらい。

「彼女を送り出す準備に追われている」
ということは‥‥
この投稿を書く、ほんとにほんのすこし前に‥‥。
(男子自由形)さんだって
まだまだ気持ちの整理ができていない時期だと思うんです。
なのに、こんなに文面が明るい。
「良い思い出です」
で締めくくるメールを書いてくれている‥‥。
そのことも、切なくて仕方がありません。
切なくて切なくて仕方がありません。
‥‥すみません、悲しむばかりのコメントで。

普通の幸せへの有り難うを忘れずにいたい、
そう思いました。
(男子自由形)さん、ありがとうございました。
「イヤホンのコードの長さの距離に彼女がいる」
この表現の初々しさとリアル、すばらしいです!

この「恋歌くちずさみ委員会」の
コメントを書くときって、
わりと軽い気持ちでフォームを開くんです。
(フォームを開いて原稿を書くシステムに
 なっているのです)

でも、そこで出会う数行の投稿に
その方の何かがぎゅっと詰められています。
時間や、空気や、とんでもない思い。

すばらしい彼女。
会ったことないけど、
ありがとうございます。
送り出している彼氏がいてくれて、
なんにも知らない自分が言うのもどうかと思うけど、
私は彼女が幸せだと思います。
死ぬときは、大好きな人に見守られたい。

思いが言葉を通り越して
ボタンを掛け違ってしまう。
そんなにも、好きだったなんて。
ああ、冬の青空が目にしみます。

たまたま、このメールをいただいて、
すぐに読んだんです。
いろんなことが胸に迫って、
そして、翌日、自分のiPhoneの中に
くるりの『奇跡』が入っていたので、
通勤しながら、リピートして聴きました。

この「恋歌くちずさみ委員会」では、
恋の思い出と、思い出の恋歌は、
イメージや時期として重なっているだけで、
恋歌の歌詞そのものが、
その出来事とぴったり重なっているかどうかは
どっちでもいいことなんですけど、
いや、それにしたって、『奇跡』の歌詞は
いただいた内容に重なりすぎました。

結果、地下鉄の車内で
こっそりと涙をぬぐうことに。

『奇跡』を聴くたび、ぼくも思い出します。
この思い出のことを。

たいせつな思いを、ありがとうございました。

2012-12-26-WED

最新のページへ
感想をおくる ツイートする ほぼ日ホームへ
(C) HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN